小松亮太/碧空〜昭和タンゴ・プレイバック

小松亮太の最新アルバムは、いわゆるコンチネンタルタンゴを含むスタンダード・タンゴのオンパレード。彼のこれまでの活動は、どちらかといえば有名曲にはあまり重きを置かないスタンスだったので意外な気もするが、今回はデビュー10周年という一つの区切りを迎え、これまで封印してきた名曲に真っ向挑んだ作品になっている。
名曲を手がける以上は、アレンジも演奏も最高のものを狙った、とのことだが、確かに素晴らしいできばえである。中でも「淡き光に」「ジェラシー」「ノスタルヒアス」は、演奏内容に加えて、ピアソラが1959年に米国で録音するために書いた編曲、という話題性からも注目されるだろう。
個人的には、そのピアソラがフランチーニ=ポンティエル楽団のために編曲した「ブルー・タンゴ」が非常に気に入っている。楽天的なアメリカ音楽が1940〜50年代の良き時代のタンゴの香りを身にまとい、何とも魅力的な演奏なのだ。
日本の誇るタンゴ・ヴァイオリニスト、志賀清をソリストに迎えたタイトル曲「碧空」では、一聴してわかるその音の個性、時代性に本当に驚かされる。
アコーディオンの佐藤芳明をフィーチャーした「ラスト・タンゴ・イン・パリ」も、ドラマチックな展開がすごい。
このほか、大城クラウディアが参加した「エル・チョクロ」、エドゥアルド・ロビーラの編曲による「バンドネオンの嘆き」、小松亮太の父、小松勝の珠玉の編曲「奥様お手をどうぞ」など、聴き所満載。「昭和タンゴ」というタイトルといい、レトロな雰囲気のジャケットデザインといい、「懐メロ」的イメージを狙っているようにも見えるが、実際にはこれらの曲を知らない人にとっても十分新鮮な感動が得られる内容といえるだろう。もちろん、知っている人には知っているが故の楽しみと驚きがあるはず。
ちなみにラティーナ誌10月号に掲載されたインタビューでは、本人が各楽曲について熱く語っているので、ぜひこちらもご一読を。

碧空~昭和タンゴ・プレイバック(小松亮太/大城クラウディア)

[Posted on 2009-09-30]

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