ジャズ、ロック関連では、アラン・ホールズワースは私の最も好きなギタリストの一人である。 ともするとその驚異的な速さのフレーズを極めて滑らかに演奏する奏法ばかりが注目されがちだが、 彼によって書かれた特異なコード進行と印象的なメロディーを持つ楽曲も非常にユニークなものである。
さて、そんな彼の作品をピアノ・ソロで演奏してしまう、という非常に興味深い試みが行われた。 演奏者はゲイリー・ハズバンド。 実は彼はドラマーとして非常に重要なキャリアを持っており、 他ならぬホールズワースのグループでもドラマーとして活躍していたのだ。
このアルバムでの彼の演奏は、 必ずしもホールズワースの元の演奏スタイルに捕われていない。 曲によって、 コードとメロディーを響かせることを重視した演奏や、 ほんの30秒ほどのシンプルなスケッチのような短いトラックもある。 そうかと思うと、壮絶なインプロヴィゼーションが繰り広げられるものもあれば、 曲のほとんどが内部奏法 (鍵盤を叩くのではなく、 ボディ内部の弦などを弾いたり叩いたりこすったりして音を出す奏法) で、ピアノを打楽器として演奏している曲もある。 必要な音を得るために、パッセージを後から重ね録りしたものもある。
全体に、ジャズやロックよりは現代音楽の世界に近いのかもしれない。 とにかく、ホールズワースの楽曲自体の魅力もさることながら、 ゲイリー・ハズバンド自身の持つオリジナリティが随所に発揮された素晴らしい演奏である。 ホールズワースの楽曲を知らなくても、 独立したピアノ・ミュージックとして楽しめる。 おすすめ!
タイトル | THE THINGS I SEE - INTERPRETATIONS OF THE MUSIC OF ALLAN HOLDSWORTH |
アーティスト | GARY HUSBAND - ゲイリー・ハズバンド |
メディア | CD |
録音 | 2000/10 |
リリース | 2001 |
レーベル | Art of Life |
配給 | Art of Life Records (USA) |
番号 | AL1002-2 |
購入時期 | 2001/8 |
備考 | 一般の店舗では売られておらず、Art of Life Recordsのサイトから直接通販で購入。 |
No. | 曲名 | 曲名 (邦) | 作者 |
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1 | The Sixteen Men Of Tain | ザ・シックスティーン・メン・オブ・テイン | Allan Holdsworth, arr: Gary Husband |
2 | Shadows Of | シャドウズ・オブ | Allan Holdsworth, arr: Gary Husband |
3 | Temporary Fault | テンポラリー・フォールト | Allan Holdsworth, arr: Gary Husband |
4 | Out From Under | アウト・フローム・アンダー | Allan Holdsworth, arr: Gary Husband |
5 | Mr. Berwell | ミスター・バーウェル | Allan Holdsworth, arr: Gary Husband |
6 | The Things You See | ザ・シングス・ユー・シー | Allan Holdsworth, arr: Gary Husband |
7 | Wish | ウィッシュ | Allan Holdsworth, arr: Gary Husband |
8 | Devil Take The Hindmost | デビル・テイク・ザ・ハインドモスト | Allan Holdsworth, arr: Gary Husband |
9 | Kinder | カインダー | Allan Holdsworth, arr: Gary Husband |
10 | Looking Glass | ルッキング・グラス | Allan Holdsworth, arr: Gary Husband |