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小松亮太3days 1日目(2001.12.15)


よしむらのページ音楽的実演鑑賞の記録:小松亮太3days 1日目(2001.12.15)


データ

曲目

第1部 ピアソラとロビーラの挑戦

第2部 熊田洋の個展 vol. 2

アンコール

所感

バンドネオン奏者の小松亮 太がやりたい放題の企画満載で草月ホールを3日間占拠(?)した「小松亮太3days」。初日第1部「ピアソラとロビーラの挑戦」は、東京ピアソラランドの仕掛人Chica、黒田亜 樹をはじめとするメンバーによる演奏であった。

最初の2曲はピアソラの比較的よく知られた曲で、まずは無難な滑り出し。しかし次の「ピアノ・ソナタ第1番」と「3つの小品」は、ピアソラがクラシック作曲家を指向していたころのいわば習作のような作品で、演奏されること自体が珍しい。前者の終盤の「いかにも」な盛り上げかたなど思わず苦笑してしまうようなところもあった。続く「ル・グラン・タンゴ」は本来チェロのための曲をヴァイオリンで演奏。タンゴの奏法に精通したChicaならではの表現が随所に聴かれ、なかなか濃い演奏。「タンゴ組曲」はギター二重奏曲を弦楽四重奏に編曲したもので、この日のピアソラ作品の中では最良の出来だったのではないかと思う。「不安」では小松門下生筆頭の若手バンドネオン奏者北村聡が登場。この日の演奏はどうも音がちゃんと出ていなかったように思われるのだが…。

孤高のバンドネオン奏者ロビーラによる作品がこの後続く。「対位法で」は題名通りひたすら対位法的展開で曲が進んで行く曲。明快なリズムとともに独特の美しさを持っている。「ピアノとオルケスタのために」は私は今回初めて聴いたが、やはりロビーラらしい美しさがある。一方「ソニコ(音速で)」はロビーラのクールでアヴァンギャルドな一面が出た曲。スピード感と厚みが何ともカッコ良い。一方でやはり北村が何となく不調なように感じられたのは気のせい?

第2部は、2000年の12月にも企画されて好評だった「熊田洋の個展」のvol.2。前半はエル・タンゴ・ビーボによる演奏でタンゴにおける熊田ワールドを存分に満喫。古典タンゴの味を失うことなく現代的に響かせる熊田のアレンジはどれも素晴らしい。特にスピード感あふれる展開と多彩なアイディアが魅力の「エル・チョクロ」、狂気をはらんだ「ロクーラ・タンゲーラ」が良かった。

続いて熊田によるタンゴ作品「何たる失礼!」。1980年代に京谷弘司トリオ(ピアノは小松真知子、ベースは小松勝)のアルバムに収録されていた曲で(アルバムでの邦題は「何たる不敬!」)、今回は熊田+東谷+小松のトリオによる演奏。久々に聴き直して改めて曲の面白さに感服した。

その後の3曲は熊田の現代音楽作品で、この日最も強烈なコーナー。ノイズを含んだ音色によるヴァイオリンの二重奏「響きと怒り」、バンドネオンをタンゴから切り離した存在として扱った「魔法の箱」、タンゴのアンサンブルにクラリネット、バスクラリネットを加えた劇的展開の「七重奏曲」、といずれもかなりのインパクトのある面白い音楽であった…が、ええい、正直に書いてしまうと、よくわかりませんでしたー。実際のところ、聴いた音を一度言葉に置き替えるような感じでしか私は受け止められなかった。これは完全に聴き手としての資質の問題で、私には論評不可能ということであろう。

アンコールはタンゴ。「泣き虫」はエル・タンゴ・ビーボでよく演奏されるトリオ・バージョンの元となった六重奏版、「パリのカナロ」は昔タンギスツを初めて聴いた時(確か1997年)にアレンジの妙に非常に感心した覚えがあり、それ以来大好きな演奏である。

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