まさに空前絶後、ハーモニカでタンゴを吹くウーゴ・ディアスのCDを紹介します。音楽を愛するすべての人に聴いて欲しい!
ビクター・エンタテインメント, VICP-60902〜3
Disc 1 | Disc 2 |
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1972年、1973年、1974年 ブエノスアイレス録音
最近(1999年12月)ビクターエンタテインメントから5つのタンゴ・アルバムが再発されました。なかでも目玉はこのウーゴ・ディアスのハーモニカによるタンゴです。
タンゴをハーモニカで、というと、何となくしみじみと郷愁を誘うような演奏が思い浮かぶのではないかと思います。 しかしながら、ここで聴かれる演奏はまさに空前絶後の凄まじさ。 激しい息づかい、唸り声と共に渾身の演奏が展開され、まさに目の前に身をよじりつつハーモニカを吹く彼の姿が見えるようです。
もちろん、単にパワーだけではない説得力が彼の音には満ちています。タンゴの声であるバンドネオンと同じリード楽器であり、しかも直接に息を吹き吸いして発音する、というところがその源かもしれません。 特に歌曲の演奏において、その説得力は一層強さを増します。
一方、通常タンゴの一つの華であるバンドネオンによる変奏も、彼はハーモニカで吹きこなしてしまいます。Disc 1の8、12、Disc 2の12など、素晴らしい!
なお、彼のメインの活動の場はフォルクローレでした。タンゴはLP4枚分が録音されており、今回のCDはそのうちの3枚分全曲を2枚のCDに収めたものです。 永らく再発されていなかったこの録音をついに耳にする事ができる喜びは、何物にも代えがたいものがあります。
1927年生まれの彼は1977年、50歳の若さで惜しくもこの世を去りました。このあまりにもユニークな音楽家の残した録音が一人でも多くの人の耳に届く事を祈っています。
雑誌「ラティーナ」1998年11月号:古今らてん異聞[第20回] 「ハーモニカの鬼才〜ウーゴ・ディアスとその後継者たち」文・西村秀人