以下の文章は、日本タンゴ・アカデミー機関誌「タンゲアンド・エン・ハポン」第4号(1999年7月に投稿、掲載されたものです。本来同機関誌はアカデミーのメンバーに限定された配布物ですが、このたび転載の許可をいただきましたので、ここに掲載させていただきます。この記事の無断転載に関しては、固くお断りします。
紙で出版され、インターネットにアクセスしたことがない方にも読んでいただくことを前提にしていますので、今ここにアクセスしてくださっている、という状況とは矛盾する記述もありますが、ご理解のほどよろしくお願い致します。
なお、日本タンゴ・アカデミーに関する詳細は、石川浩司氏の「タンゴの部屋」をご覧下さい。
以上2点、平にお詫び申し上げます。
能書きが長くなりました。ご一読の上ご意見等賜れば幸いです。
吉村俊司(東京都)
前号のTangueando en Japonでは斎藤充正氏が「インターネットとパソコン通信」と題し、インターネット、パソコン通信に関する概要と、パソコン通信上でのタンゴに関する話題について解説されていたが、引き続きインターネット上でのタンゴに関する話題について、ウェブページ(ホームページ)(注1)を中心に紹介してみたい。
一口にタンゴのウェブページと言っても内容はさまざまであるが、今回は大きく
という項目に分類し、それぞれの項目で筆者が注目に値すると感じたものについて、そのタイトル、URL(注2)、使用言語(記載なきものは日本語)、簡単なコメント、と言う形で紹介する。既にインターネットを情報収集の場として利用されている方にはウェブページ散策の一つのガイドとして、また今のところインターネットに縁のない方には多少なりともネット上の世界を身近に感じていただく材料として、ご一読いただければ幸いである。
まずは、タンゴという音楽、ダンスについて総合的に論じているウェブページを紹介する。
石川浩司氏による「タンゴの部屋」(http://www02.so-net.ne.jp/~humberto/)は、月刊の雑誌のように毎月一度内容が更新され、タンゴに関するニュース、CDの紹介などが掲載されている。本アカデミーのホームページもここに収められており、過去の記事が参照できるバックナンバーのコーナー、貴重な資料を収めた資料室、意見交換の場としての掲示板(注3)も併設されている。
鎌田剛氏による「Quartier Latin」(http://www2s.biglobe.ne.jp/~cama/)は、タイトルどおりイタリア、フランスなどラテン文化圏に関するいろいろな話題がを集めたウェブページであるが、その中に「タンゴ・タンゴ」というページがある。タンゴの起源、古典とピアソラのそれぞれについての考察、ディスクレビューなど、非常に読み応えがある。
「アルゼンチンタンゴ愛好会 CTAのホームページ」(http://www.d1.dion.ne.jp/~cta/index.html)は1999年1月にスタートしたばかりのページで、会の活動案内、定評ある会員向けCDのリストなどが掲載されている。
「ラティーナ」(http://www.latina.co.jp/)はおなじみの音楽雑誌のホームページ。タンゴに限定はされないが、さまざまな音楽関連のニュースやコンサート情報などが掲載されている。
次に、本国アルゼンチンに目を向けてみよう。
「Tangos en la Web」(http://www.geocities.com/Eureka/Concourse/4229/index.htm)(スペイン語)はChristian Nicolas Palermo氏によるタンゴ総合情報ページ。まだ完成していない部分も多いが、タンゴの歴史、アーティスト情報、歌詞について、など興味をそそられる内容が多い。
「Academia Nacional del Tango」(http://www.wam.com.ar/tourism/cultura/ant/ant.htm)(スペイン語、英語)は本家アカデミアのホームページ。活動内容や刊行物が紹介されている。
タンゴそのもののウェブページではないが、日刊紙「La Nacion」(http://www.lanacion.com.ar/)、「Clarin」(http://www.clarin.com.ar/)(いずれもスペイン語)などではしばしばタンゴに関するニュースが報道される。なお、泉谷隆男氏はこの二紙のウェブページに載ったタンゴ関連の記事について、そのタイトルと記事に直接飛べるURLを、NIFTY Serveの「世界音楽フォーラム」<FWM>のタンゴの部屋(前号での斎藤氏の記事参照)、および上述の石川浩司氏の「タンゴの部屋」内にある掲示板に紹介してくださっている。タンゴファンにとって最も興味のある記事がすぐに参照でき、非常にありがたい。
ヨーロッパのタンゴのページも思いのほか充実している。幾つか紹介してみよう。
手描きイラスト風のページデザインが非常に楽しい「Plaza del Tango」(http://www.tangoplaza.com/)(英語、ドイツ語)はドイツ、シュツットガルトからのページ。情報交換のための掲示板や、読者が書き込み可能なCDレビューのページがある(読者からの書き込みは主にドイツ語)。
同じくドイツ、フランクフルトからは、「Cybertango - Frankfurt's Tango page」(http://www.cyber-tango.com/)(ドイツ語、英語)というページも発信されている。多数のタンゴ関連ウェブページへのリンク(注4)がなされている。
「Christian's Tango and Bandoneon Info」(http://www.inorg.chem.ethz.ch/group/cm/)(英語)はスイス、チューリッヒのChristian Mensing氏によるタンゴとバンドネオンの情報ページである。このページ、情報量の多さは尋常ならざるものがあり、特にバンドネオンに関してはここで何でもわかると言っても過言ではない(彼自身バンドネオン奏者でもある)。4人のバンドネオン奏者に関してはバイオグラフィーなどが掲載されているが、その4人と言うのがアレハンドロ・バルレッタ、ロドルフォ・ダルイシオ、レネ・マリーノ・リベーロ、エドゥアルド・ロビーラ。ダルイシオという人の名前は筆者にとって初耳であるが、他の3人からは彼の好みの傾向が伺える。それにしても何ともマニアックな人選ではある。
「El Tango - Madrid」(http://www.artplus.es/tango/)(スペイン語)はスペイン、マドリードのJose Alberto Marinas氏が発行するオンライン・タンゴ・マガジン。ニュースのほか、タンゴの歴史、人物、本やCD(Amazon.comと提携)、写真や絵のギャラリーなどが掲載されており、スペイン語がわからなくても眺めているだけで楽しめる。
米国、カナダにもいくつかタンゴのページがあるが、どちらかと言うと地域のダンス教室、ミロンガなどのイベント情報が多い。その中で注目に値するページをいくつか挙げてみよう。
Larry Carrol氏による「Argentine Tango in Southern California」(http://home.att.net/ ~larrydla/index.html)(英語)は、タイトル通り南カリフォルニアにおけるタンゴシーンの情報が掲載されているページ。加えて6章にわたるダンスのオンライン教則本が掲載されており、そのボリューム、内容の濃さは圧巻である。
カナダ、モントリオールの「The Top 100 Tango Recordings」(http://www.tango.montreal.qc.ca/homea.shtml)(英語、フランス語、スペイン語)にはアルバムランキング、アーティストランキング、各アーティストに関する詳細情報などが掲載されている。いささか雑然とした感はあるが情報量は多い。
このほか、サンフランシスコの「PLANET TANGO Home Page」(http://www.hooked.net/~tangoman/index.html)(英語)、トロントの「TORONTO TANGO」(http://www.interlog.com/~elshaw/ttindex.html)(英語)が、地域情報中心ながら充実した内容を誇る。
特定のアーティストに関する情報、話題だけを集めたページとしては、現時点ではアストル・ピアソラに関するものが圧倒的に多い。以下に代表的なものを挙げてみよう。
まず、ピアソラの公式ホームページと呼べるものとして「Piazzolla.com」(http://www.piazzolla.com/)(スペイン語)がある。これはFundacion Astor Piazzolla (アストル・ピアソラ財団)によるもので、ピアソラの詳細なバイオグラフィー、ディスコグラフィー、書籍紹介、さらに財団の活動(スアレス・パス率いる五重奏団を含む)に関する情報が提供されている。
一方、米国在住のJohn Buckman/Cesar Luongo両氏が数年前から主宰している「Piazzolla.org」(http://www.piazzolla.org/)(英語、スペイン語)は、主宰者の熱意と多くのピアソラファンからの情報提供により、今やインターネット上最も充実したピアソラのウェブページとなっている。楽曲、CDの詳細なデータベース、楽譜情報等が掲載されている。また、ピアソラファンのためのメーリングリスト(注5)で日々情報交換がなされており、ウェブページ上でも投稿記事の購読、加入の申し込みが可能である。
日本においても、倉本高弘氏の「アストル・ピアソラ・ホームページ」(http://www.urban.ne.jp/home/tkuramot/ap/astorhm.htm)は早くからピアソラを取り上げている。最近は楽曲のデータベース化が進行中で、今後がますます楽しみである。
米沢典剛氏の「yonezawa.com」(http://www.yonezawa.com/)では、出版された事実のあるピアソラの楽譜がすべてデータベース化されており、楽譜を探している人には必見のページと言える。また、氏は最近バンドネオンを入手しており、その関連情報も掲載されている(その意味では「ピアソラのページ」に分類するのは失礼かもしれないが)。
工藤庸介氏の 「Astor Piazzolla」(http://develp.envi.osakafu-u.ac.jp/staff/kudo/ap/index.html)では、豊富な音楽的知識をバックボーンとして、色々な切り口からのピアソラの音楽へのアプローチがなされている。
ピアソラ以外のアーティストでは、歌手ティタ・メレーロのページ「Tita de Buenos Aires」(http://www.geocities.com/Wellesley/Atrium/6975/)(スペイン語)が素晴らしい。ブエノスアイレスのLic. Liliana氏 / E. Tijman氏によるもので、フィルモグラフィー、ディスコグラフィーなどがかなり詳細に掲載されている。ファンとしての愛情が伝わってくるページである。
「Juan de DIOS FILIBERTO」(http://www.ssdnet.com.ar/filiberto/index.html)(英語、スペイン語)は大作曲家フィリベルトの生涯、作品リストが掲載されている。 この他にもページが作られておかしくないような大アーティストは多数いると思うのだが、残念ながら今回は見つけることが出来なかった。
一方、現役のアーティストが自身のプロフィールやコンサート情報、アルバム情報などを発信するためにウェブページを活用している事例も多い。 コントラバス奏者の東谷健司氏が運営する「EL TANGO VIVO」(http://village.infoweb.ne.jp/~tango/)は、ピアノの熊田洋氏と東谷氏によるデュオ、エル・タンゴ・ビーボのホームページである。コンサート情報などの他、ファンが書き込める掲示板が設置されており、大いに盛り上がりを見せている。二人が加わっている小松亮太&ザ・タンギスツの情報も掲載されている。
学生オルケスタの名門タンゴ・ワセダの「Orquesta de Tango Waseda」(http://www.tango-waseda.com/)では、過去のすべての演奏会における演奏曲目がリストアップされており、資料として非常に貴重である。
このほか、「京谷弘司のホームページ」(http://www.moonfactory.co.jp/tango/)、「小松真知子とタンゴクリスタル」(http://www.diana.dti.ne.jp/~cristal/)、チェリスト植草ひろみ氏の「Hiromi's Page」(http://www.U1.sokei.co.jp/Hiromi/)、門奈紀生氏率いるオルケスタ・アストロリコの「ASTRORICO: tango ensemble」(http://mirror.nucba.ac.jp/~escualo/astrorico/)などは、ファンならずともこまめにチェックしておきたいページと言える。
海外の注目すべき新進アーティストのページもいくつか紹介しておこう。ドイツ、ベルリンの「Tango Real Quartett」(http://www.tangoreal.de/) (英語、ドイツ語)、アルゼンチンのArgentangoとTango XXXという2つのグループのページが収められている「Tango en Argentina」(http://www.cpsarg.com/bsas/alesza/tango/tango.htm) (スペイン語、英語)、スウェーデンの「The New Tango Orquesta」(http://www4.tripnet.se/~storby/) (英語、スウェーデン語)、カナダの「Norteno」(http://www.norteno.qc.ca/) (英語、フランス語)といったところは一見の価値がある。
なお、オーディオデータの圧縮技術(注6)の進歩によって、ウェブページ上で演奏のサンプルが聴けるものがあり、未知のアーティストについてはそのスタイルの一端を知る上で大いに役立つ。上記のページのいくつかではオーディオ・サンプルが提供されているので、興味のある方はアクセスしてみていただきたい。
近年、インターネットを利用した通信販売(注7)が広く普及しつつあり、タンゴに関してもいくつかのウェブページを経由してCDを購入することができる。
山野楽器(http://www.yamano-music.co.jp/)などの大手CD販売店では、データベースとの連携により、国内盤CDの検索、購入申し込みが可能になっている。また、既出の「ラティーナ」ホームページでも輸入盤の検索、通信販売申し込みが可能である。
アルゼンチンのCD販売店では、「Zival's」(http://www.zivals.com/) (英語、スペイン語)が比較的見やすいウェブページを持っていたが、現在内容を大幅入れ替え中の模様。7月オープン予定とのことなので、この号が刊行される頃にはすでにアクセスできるようになっているであろう。
「Club de Tango」(http://www.clubdetango.com.ar/) (スペイン語)も多数のCDを在庫しているが、輸入盤のページをのぞくと何と日本のCTA盤がずらりとリストアップされており、はからずも日本におけるコレクターのレベルの高さを再認識することになる。
一方、「Tango Mania」(http://www.tangomania.com.ar/) (英語、スペイン語)は、CD以外に楽譜、ダンス教則ビデオ、タンゴ映画のビデオなどもリストアップされている。これらの中には日本で入手難であるものも多い。
先に、オーディオデータの圧縮技術による演奏のサンプルについて少々触れたが、この技術を更に応用し、インターネットを用いて「放送」を行う試みが数年前から行われている。
「Argentina Show」(http://www.argentinashow.com/)(スペイン語)は、米国ハリウッドで制作され、メキシコのAMラジオ局XEPRSから放送されているタンゴ番組のホームページ。最新の番組をはじめとして数チャンネルの番組が、RealAudio(注8)のデータとして常時聴取可能となっている(番組はスペイン語)。
「TANGO ...and Beyond 」(http://www.radio.cbc.ca/programs/tangoandbeyond/index.html)(英語)はカナダの公共放送、カナダ放送協会から放送されているタンゴ番組のホームページである。過去の放送のうち、「Maria de Buenos Aires」の一部、「This is the Tango」の全放送分(3パート、各パート54分)がRealAudioのデータとして提供されており、特に後者では解説付きで存分にタンゴを楽しむことが出来る。
アルゼンチンの放送局でも、インターネット上に番組を配信しているものはいくつかあるが、いつでもタンゴが流れている、というようなものは見つからなかった。ブエノスアイレスの「RadioTango Argentina」(http://webs.satlink.com/usuarios/f/fm2000/index.html)(スペイン語)も放送をそのままインターネットに流すことは行っていない。ただ、何曲かのタンゴのオーディオ・サンプルが試聴可能であるほか、ルンファルド辞典、アーティストへのオマージュ、チャット(注9)やメーリング・リストによるコミュニケーション等が充実している。
これまで紹介してきたウェブページを閲覧する際には、もちろん単に各ページを訪れて内容を読むだけでも楽しいのだが、読んだ感想、意見などをページ作者に送ったりすれば、ますます楽しみが広がる。電子メールを出すのも良いし、先に述べたような掲示板が設置されていればそこに気軽に書き込むのも良い。一方通行の情報伝達から互いの情報を交換する関係に発展すると、楽しみは飛躍的に広がる。
さらに、我こそはと思う方はご自分でウェブページを制作されてはいかがであろうか。例えば「特定のアーティストに関する情報、話題を集めたウェブページ」の項で述べたように、現時点ではピアソラ以外のアーティストに関して深く掘り下げたページはあまり多くない。アカデミー会員の方々の持っておられる情報はおそらく世界的にもかなりの水準にあるはずであり、ぜひともその情報を、若い世代をはじめとした多くのタンゴファンに共有させて欲しいものである。専用のソフトウエアの助けを借りれば技術的にはそれほど難しいことではないので、ぜひとも挑戦していただきたい。
実は筆者自身、ピアソラに関する情報を中心とした「よしむらのページ」(http://www01.u-page.so-net.ne.jp/ya2/yoshi-sh/)というウェブページを開設している。本稿で紹介してきたページに比べるとまだまだお恥ずかしい限りのページではあるが、何かのついでにお立ち寄りいただければ幸いである。
本稿においては、内容の正確さには細心の注意を払ったつもりであるが、特に海外のページに関しては筆者の語学力の限界もあり(スペイン語は曲名などから覚えた単語が少々ある程度で非常に心もとない)思わぬ誤りを犯しているかもしれない。また、情報は1999年6月上旬の時点でのものであり、会報が刊行されるまでの間には紹介したウェブページが本稿の記載内容と食い違ってしまう可能性もある。これらについてはご理解、ご容赦のほどをお願いするとともに、お気づきの点を電子メール(mail@yoshimura-s.jp)などでご教示いただければ幸いである。