電気用品安全法
ここ数日で一気に話題になっているので、ご存知の方も多いだろう。私は 2/17 (金) の朝日新聞夕刊 (東京版) に掲載されたコラムで、この法律の存在を知った。
MDプレーヤーの名に音質重視をうたった製品がほとんどないあたりから、
どーも変だとは思っておったのである。この国では、電気で増幅された音
楽、音響には美醜という概念はない (つまり文化ではない) と規定されて
いたらしい。来る4月1日から電気用品安全法により、01年以前に生産され
た電子楽器、テープレコーダー、レコードプレーヤー、その他音響機器の
売買が実質的に禁止となる。つまり、フェンダーローズやオールドニーブ
といった、今も制作現場で必要とされ、現役バリバリの中古品が流通しな
くなるのだ。2006/2/17 朝日新聞 東京版夕刊5面
ツウのひと声・ポップス「電気用品安全法 止めて」 (窪田晴男 (ギタリ
スト)) より引用
最初、パロディーか何かかと思ってしまったが、どうやら本当にそうらしい。上記コラムは電気を使う楽器や音響機器に関する問題として、音の文化的側面からこの法律を批判しているのだが、実際のところ対象は音響機器に限らず、コンセントからの電線が直接つながっているような電気機器のほとんどが対象となるようだ。で、今後は2001年以降に製造された PSE マークのシールを貼ってある機器以外の売買はできない、ということらしい (経産省の電気用品安全法のページ参照)。
家電メーカー勤務の私としては、電源まわりの安全性確保の重要性はそれなりに理解できるので、厳しい基準を設けること自体は止むを得ないと思っている。でもフェンダーローズやマーシャルのアンプやムーグやテルミンが流通できなくなる世の中は嫌だなあ、というのも正直な感想。はて、どうしたものか…
と思っていたのだが、どうもちょっと違うらしい。IT Media の記事「名機」が販売禁止に 4月に迫る「電気用品安全法」(1/2)、同 (2/2)によれば、
電気用品安全法は、そもそも何のために制定されたのだろうか。同法第
1条によると、立法目的は「電気用品による危険及び障害の発生を防止す
る」こと――つまり、電化製品の安全性を確保すること、だ。ただ、同法施行以前に製造された電化製品も、安全性にそれほど違いは
ないようだ。経産省の担当者は、「電気安全法は、1962年に制定された
『電気用品取締法』を改正した法律だが、両法の安全基準はそれほど変わっ
ていない」と話す。
とのこと。へ?基準を厳しくしたわけじゃないの?となると話は違う。何でほとんど基準が変わっていないのに急にこんな話になっちゃったのか…同記事によれば
旧法と新法の大きな違いは、電化製品の製造・販売に国の認可が必要か
どうか。旧法は、製造・販売に国のチェックが入ったが、新法はメーカー
が自社でチェックしてPSEマークを添付できるようにし、民間の自由度を
高めた。つまり、PSEマークがない製品でも、旧法に適合していれば、安全性は
国によって担保されていることになる。それでも旧法時代の製品の販売を
禁止するのは、「市場にいろいろなマークの製品が混在するのは好ましく
ない」(経産省)ためだという。
おお、なんとそんな理由だったのか!マークの混在を避けたいという理由だけ (かどうかは知らんが) で昔の逸品を葬り去ろうとしているのか!!これは許せん!!!
既に坂本龍一氏、高中正義氏らの賛同のもと、JSPA (日本シンセサイザー・プログラマー協会)による電気用品安全法(PSE法)に対する署名が始まっているので、とりあえず「許せん」の気持ちを署名としてぶつけてみた。同じく「許せん」と思った方、よろしければぜひ。
この件、続くかも。
卓球好き、音楽好きです。飲み食い好きが高じて料理もします。2024年ソニーグループ(株)を退職し、同年より(株)fcuro勤務のAIエンジニアです。アルゼンチンタンゴ等の音楽について雑誌に文章を書いたりすることもあります。
なお、当然ながら本サイトでの私の発言は私個人の見解であります。所属組織の方針や見解とは関係ありません (一応お約束)。
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