千恵の輪プロジェクト〜寄港 A Port of Call vol.3 (2008年3月30日 於いずるば)

ここ数日の好天から一転の雨と寒さの中、東急多摩線の沼部駅近く、あの福山雅治の歌でも有名な桜坂にあるスペース「いずるば」に行ってきた。目的はもちろん「千恵の輪プロジェクト」のライブ。
「寄港 A Port of Call vol.3」

  • 2008年3月30日 19:00〜
  • ジャン・サスポータス(ダンス)
  • オリヴィエ・マヌーリ(バンドネオン)
  • 齋藤徹(コントラバス)
  • 岩下徹(ダンス)

予想に違わず、というより予想をはるかに超えてすばらしいライブだった。演奏の二人は、タンゴの本質を捉えながらしばしばそこから逸脱したり、という自由度がすごい。ダンスは、ジャン・サスポータスの静に対して岩下徹の動、という対比と、時々見られるユーモラスな動きが面白い。
演奏曲目中、度肝を抜かれたのが「鮫」。コントラバスのソロだけであの難曲を弾き切ってしまった!
とりあえず時間がないので断片的ながらまずはこれだけ。後日改めて詳細をアップする予定。
[Posted on 2008-03-31]


というわけで追記(2008-04-06)。なんだかまとまった形では書けそうにないので、断片をつづっておく。
まずは情報。この日の公演の内容については、千恵の輪ブログ「いずるば」終了にセットリストも含めて詳しく書かれている。
一つ重要なポイント。上の感想では演奏とダンスをわけて書いているが、実際のところ今回のライブでは両者は不可分なものであった。
最も顕著だったのが、第二部の冒頭で演奏された「アルフォンシーナと海」。本来内省的なアルゼンチン・サンバの名曲ながら、いつの間にか逃げ惑う岩下徹をオリヴィエのアコルディーナ(ボタン式の鍵盤ハーモニカのような楽器)と徹さんのコントラバスが挟み撃ちにして追い詰める、というような激しくもおかしい展開になってしまった。曲が終わった瞬間、徹さんが「こんなはずじゃなかったんだけど」とか何とか言っていていたのが印象的。一方、1部で演奏された「ムエルテ(死)」(映画<リュミエール>の音楽より)では、ジャンと岩下が並んで椅子に座ってほとんど身動き一つせずじっとしていることで、死に対する差し迫った感情が強く感じられた。
徹さんの出す音は、単に低音の迫力とか重厚な響きとか言ってしまうとちょっと違う気がする。普通に弾いているときでも、楽器のボディ全体がぐゎんと鳴っている感じとか、たくさんの倍音が含まれていることによる生々しさとかが、すごい。その生々しい音で刻まれるタンゴのグルーヴがまたすごい。それに加えて普通じゃない弾き方、つまりいろいろなところをこすったりたたいたり弦をかき鳴らしたり、という弾き方で、コントラバスが出しうるあらゆる音が引っぱり出されているところが、やっぱりすごい。
オリヴィエのバンドネオンは、その音色の美しさ、フレージングの的確さがすばらしい。一方で、もしかすると勘違いかもしれないのだが、時々あえてノイズを含んだ音を鳴らして徹さんに対抗していたように思われる。バンドネオンでそんな弾き方をする人を他に知らない。ボタンを半押しにすることで出していた音なのではないかと想像している。
終演後、徹さんに挨拶した折の話では、演奏は毎回変わっているとのこと。となると、ツアー終盤でどうなっているのかには非常に興味がある。もう一回何とか行けないだろうか…。

千恵の輪プロジェクト〜寄港 A Port of Call vol.3 (2008年3月30日 於いずるば)” に対して3件のコメントがあります。

  1. よしむら より:

    フィードが更新されていなかったので保存しなおしました。

  2. きくりん より:

    先日はメールでどうもでした。おひさしぶりーのコメントです。こちらでの公演は日程的にも場所的にも非常に厳しいので、よしむらさんのブログを読みながらずーーーっと悩んでいたのですが、この記事読んでついにチケット予約してしまいました。「Paris1955」は持ってないので、「レアトラックス」と「シンフォニア・デ・タンゴ」を復習中です〜。こちらでのプログラムはどんなかわかりませんけど、鮫は、ぜひぜひ聴きたいなあ!!。

  3. よしむら より:

    きくりんさん、どうもです!広島でのライブはどうでしたか?感想聞かせてくださいね(自分も早く書き足さなければ…)。ちなみに思ったほどパリ時代の曲は演奏されないみたいで、その点だけはちょっと肩透かし、でした。そういえば、せっかくの東京オフ日は一日雨で大変でしたね。

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