タンゴ・エレクトロニカについて(その2)

その1からだいぶ間が開いてしまったが、タンゴ・エレクトロニカに関する考察その2。
比較的クラシックに近い楽器編成で演奏されることの多いタンゴと、ドラム、リズムボックス、シンセサイザーなどで演奏されるテクノロジーを駆使したエレクトロニカのような音楽とが、なぜ結びついたのだろうか。
いろいろ調べた中で、タンゲットーというバンドのインタビュー記事(Tango Pulse / Tango Interviews / Tanghetto by Jackie Ling Wong)に有力なヒントがあった。

Q: I noticed in your first album that you have several pieces with social themes. Do you feel that you express your political feelings through your music?
Max: It depends on what song and sometimes it depends on the situation, There was a crisis in Argentina that inspired that sense of “no future” feeling. When there is an economic crisis of such magnitude it’s like everyone there had visions of their future, of what they wanted to be and in one day it all disappeared.
Tanghetto was created at that time when people was trying to escape that situation. The music is instrumental so we tried to express these ideas and to expand the musical language with written words and images.
Q: What was your motivation at that time?
Max: There was a need to explore our roots. After globalization, you don’t know what is yours and what is foreign. When everything collapsed it was the right time to rediscover our roots.

1990年代末よりアルゼンチンでは急速に経済が悪化し、2001年末には民衆の暴動、政権交代、対外債務利払停止(デフォルト)といった状況に陥っている(詳しくは例えば田中宇の国際ニュース解説「アルゼンチンの悲劇」 同「アルゼンチンの悲劇(2)」などをご参照いただきたい)。
タンゲットーが結成されたのはまさにその真っ最中の2001年。将来が見通せないほどの経済不安の中で、それまでのグローバリゼーションの波の中で見失っていた自分たちのルーツを再確認する必要性を感じたことから、タンゴを題材とした音楽を演奏するようになったとのことである。
とはいえ、アルゼンチンでも現代の若者はロックやポップスを聴いて育ってきたのが普通である、そんな彼らが自分たちなりにタンゴを表現した形の一つが現在タンゴ・エレクトロニカと呼ばれている形となったのであろう。
タンゲットー以外のグループについては、必ずしも同じ動機で活動を開始したとは限らない。しかし、2001〜2003年に活動を開始したグループは非常に多く、国の情勢が何らかの影響を与えたことは十分に想像できる。
ちなみに、タンゴ・エレクトロニカ以外にも、オルケスタ・エスクエラ・デ・タンゴ(タンゴ学校楽団)、オルケスタ・ティピカ・フェルナンデス・フィエロなど、トラディショナルなスタイルでのタンゴに取り組む若者の楽団が出現したのも同時期のことである。
[Posted on 2008-11-24]

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