ドラマチック・タンゴ「伝統と革新」/ビクトル・ラバジェン楽団 (2010年2月25日 18:30〜 東京・中野サンプラザホール)
既に多くの方が言及されているが、演奏、ダンス、歌のすべてが極めて高いレベルのパフォーマンスで、タンゴの醍醐味を存分に味わうことの出来たコンサートだった。
編曲・演奏は、強烈なリズムと繊細な表現の交錯するプグリエーセ楽団のスタイルを土台としつつ、ラバジェン自身の現代的な感覚を表現したもの。1曲目の「モレーナ」こそオーソドックスな編曲だったが、2曲目に演奏された非常に古いタンゴ「ラ・モローチャ」で早速ラバジェン・マジック全開…とにかくこんな「ラ・モローチャ」聴いたことない。以後、テンポは保ちつつ小節の中で自在に伸縮するリズムやダイナミックレンジの極めて広い表現に、心を乱され、翻弄されながら引き込まれてしまった。「ラ・モローチャ」同様の古いタンゴ「エル・アブロヒート」の独創的アレンジ、プグリエーセ楽団譲りの名演「マラ・フンタ」、ピアノのパブロ・エスチガリビアの演奏が光った「アディオス・ノニーノ」などが印象に残った。
帯同した歌手は、2009年のオルケスタ・アウロラ旗揚げ公演にゲスト出演して絶賛を浴びたエル・チノ・ラボルデ。今回も素晴らしい歌唱を披露してくれた。ギターのディエゴ・クイッコの伴奏による「古い銅の時計」は絶品。
毎度ながらダンスについてはよくわかっていないが、それでも感じられる素晴らしさがあった。アクロバティックな動きによるすごさ以前に、ステップのリズム感、体全体で表現する感情などが伝わってきた。
なお、リーダーのビクトル・ラバジェンは1960年代に巨匠オスバルド・プグリエーセの楽団に在籍した後、同楽団のメンバーが独立して結成したセステート・タンゴに参加、さらにコロール・タンゴの結成にも参加したバンドネオン奏者。新しいタンゴファンには小松亮太氏が2000年、2003年に共演したことで記憶に残っているかもしれない。
- ドラマチック・タンゴ「伝統と革新」/ビクトル・ラバジェン楽団
- 2010年2月25日 18:30〜 東京・中野サンプラザホール
- メンバー
- 楽団
- ビクトル・ラバジェン(バンドネオン、指揮、作・編曲)
- ホセ・アコスタ(コントラバス)
- アレハンドロ・ブルスチーニ(バンドネオン)
- ワシントン・ウィリマン(ヴァイオリン)
- パブロ・エスチガリビア(ピアノ)
- 歌手、ギター
- エル・チノ・ラボルデ(歌手)
- ディエゴ・クイッコ(ギター)
- ダンス
- サブリナ&ルベン
- ジセラ&ガスパル
- ベッサベ&ジョナサン
- 楽団
- 曲目
- 第一部
- モレーナ
- ラ・モローチャ
- バンドネオンの嘆き
- ベンタロン
- ブエノスアイレス=東京
- 春のロマンス
- 首の差で
- ビヒリア
- ガジョ・シエゴ
- ラ・タブラーダ
- エル・アブロヒート
- ミストンゲーロ
- 第二部
- 言葉もなく
- レクエルド
- 古い銅の時計
- 北から南へ
- バンドネオンの影に
- ダンサリン
- エンカント・ロホ
- マラ・フンタ
- イ・ペルマネセ
- アディオス・ノニーノ
- シータ
- アンコール
- パリのカナロ
- ラ・クンパルシータ
- 第一部
これは今回の来日メンバーと同じメンバーによる最新盤。
タンゴ、伝統と革新(ビクトル・ラバジェン)
[Posted on 2010-03-04]
卓球好き、音楽好きです。飲み食い好きが高じて料理もします。2024年ソニーグループ(株)を退職し、同年より(株)fcuro勤務のAIエンジニアです。アルゼンチンタンゴ等の音楽について雑誌に文章を書いたりすることもあります。
なお、当然ながら本サイトでの私の発言は私個人の見解であります。所属組織の方針や見解とは関係ありません (一応お約束)。
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