アルゼンチンタンゴ 伝説のマエストロたち

6月末の公開以来、ブログに書かなきゃと思い続けつつ日が経って、気がつけば東京での上映は終了。とはいえ、Better late than never. それにまだこれから公開される地域もあるので、今更ながらこの映画について少々。
まずは、公式サイトを見ていただきたい。
アルゼンチンタンゴ 伝説のマエストロたち
2003〜4年のアルバム録音に端を発する “Café de los maestros” は、タンゴの黄金時代を体現したマエストロたちに今一度光を当て、その魅力を広く世に知らしめるとともに記録にとどめる、というプロジェクト。アルバムは2005年に発売され、さらにコロン劇場でのコンサートが2006年に行われている。これらの録音やコンサートの様子、さらにはマエストロたちの日常も記録したのが、2008年に公開されたこの映画である。
一連のプロジェクトの仕掛け人であるグスタボ・サンタオラージャは、アルゼンチン・ロックのパイオニアにして世界的なミュージシャン、プロデューサー。映画『ブロークバック・マウンテン』『バベル』の音楽ではグラミー賞を受賞し、また最近ではタンゴ他のラプラタ河流域音楽と現代のエレクトロニックな音楽を融合させたバンド《バホフォンド》を率いていることでも知られる。実は《バホフォンド》が活動を開始したのが2002年ごろであり、おそらくは初めて自分の音楽としてタンゴに取り組む中で、黄金時代のマエストロたちの偉大さに改めて気づいたことが、このようなプロジェクトを立ち上げるきっかけの一つになったのではないかと私は思っている。
映画の前半はアルバムの録音、リハーサルなどの様子を追っている。ここでのマエストロたちの、昔を懐かしみ、互いをいたわる姿が何とも温かい。
一方で、彼らの歌、演奏が紛れもない最高レベルの芸術であり、なおかつ全員が一様にプロとしての誇りと自信に満ちている、ということも見逃してはいけない。たとえば歌手のビルヒニア・ルケが自分のキャッチフレーズを語るとき、「ブエノスアイレスの歌」をワンテイクで完璧に歌い上げ、「シ!(イエス!)」と見得を切るとき、あるいはバンドネオンのカルロス・ラサリが、今日考えうる最高のメンバーを揃えたオルケスタのメンバーをぐいぐいと引っ張り、「リズムに遅れるな」と指示を出すとき…。
後半は、コロン劇場でのコンサートの様子である。残念ながら映画の中に収めるために、どの曲も短くカットされてしまっているが、演奏のすばらしさと迫力は十分。ぜひとも劇場で堪能していただきたい。
ところどころにさしはさまれるブエノスアイレスの街並みや、ダンスの映像も魅力的。タンゴの世界にどっぷりとつかりきることのできる映画である。
なお、タンゴに詳しい人以外にとっては、登場人物の顔と名前が一致せず、そのつながりや経歴がわかりにくいかもしれない。上記サイトや劇場パンフレットで鑑賞前に予習しておくのも悪くないと思う(できればその辺を掘り下げたエントリーもここに書きたいと思っているが…できるかな?)。
また、個人的には、この映画の邦題にちょっと違和感がある。原題にある「カフェ」という言葉をもっと生かしてほしかったと思っている。
当ブログ内参考記事:

[Posted on 2010-09-25]

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