【2011年振り返り】小松亮太 / 俺のピアソラ
俺のピアソラ(小松亮太)
これは見事というほかない。
オリジナル・アレンジの「ブエノスアイレスの夏」「リベルタンゴ」(ピアソラが作った当時のインパクトを再現するとしたらこれぐらいやる必要あるでしょう)「アディオス・ノニーノ」(バンドネオン・ソロ!) やオルケスタ・ティピカのスタイルによる「輝くばかり」、ホセ・リベルテーラの編曲による「ピアソラ・メドレー」もすごいけど、やっぱりピアソラ五重奏団に忠実な「革命家」「コラール」「五重奏のためのコンチェルト」「ヴィブラフォニシモ」の完成度の高さは素晴らしい。これらは絶対的なリファレンスとしてピアソラ本人の演奏があるわけで、多少の「良い演奏」ではライブはともかく録音としての存在意義は問われることになる。今回の録音は、ピアソラを超えたなどと言うつもりこそないが、本人の録音を聴いてなお小松のバージョンも聴いてみたくなるような、そんな力のある演奏だと思う。ゲストのSINSKEがフィーチャーされた「ヴィブラフォニシモ」が白眉。
一方、キンテート・レアルのスタイルによる「エル・アランケ」、そしてアニバル・トロイロの「わが街へのノクターン」も、ピアソラという人を形作ったタンゴの世界を感じさせる楽曲として重要。特に後者における阿保郁夫の語りの味わいは筆舌に尽くしがたい。
下の映像は、その「わが街へのノクターン」のアニバル・トロイロ本人による演奏。曲が発表されたのが1968年であり、おそらくは同年か翌年ごろにテレビで放映されたものであろう。
誰やら あるとき言った
私が わが街を捨てたと
いつのことだね?…
いったい いつのことだ?
いつだって私は帰り着こうとしているのに…
(「わが街へのノクターン」より 訳:阿保郁夫)
奇跡のような映像。そして、CDに収められた阿保の語りもまた奇跡のようにこの語りに迫っている。
卓球好き、音楽好きです。飲み食い好きが高じて料理もします。2024年ソニーグループ(株)を退職し、同年より(株)fcuro勤務のAIエンジニアです。アルゼンチンタンゴ等の音楽について雑誌に文章を書いたりすることもあります。
なお、当然ながら本サイトでの私の発言は私個人の見解であります。所属組織の方針や見解とは関係ありません (一応お約束)。
商品へのリンクには以下のアフィリエイトが設定されている場合があります。
Amazon.co.jpアソシエイト
楽天アフィリエイト