ダニエル・ピピ・ピアソラ!
ラティーナ2013年4月号にレビューを書いたピピ・ピアソラ・トリオの『アルカ・ルーサ』が非常に良い!
ご存じの方も多いと思うが、ダニエル・ピピ・ピアソラは現代タンゴの巨匠アストル・ピアソラの孫。公式サイトなどのバイオグラフィーには生年が明記されていないが、1992年にロスアンジェルスのミュージシャンズ・インスティテュートを卒業しているようなので、現在40代前半あたりだろうか。ドラマーとしてジャズを中心に多彩な活動をしている。
『アルカ・ルーサ』は『ロシアの方舟』という意味で、アレクサンドル・ソクーロフ監督による映画のタイトルから取ったもの(邦題は「エルミタージュ幻想」)。この映画は90分の作品をワンカットの長回しで撮ったことで話題になった。
ピピはこの映画にならい、アルバム全編をノンストップのワンテイクで録ったのだそうだ。編成はドラム、ギター、サックスという変則的なもの。典型的なジャズの形にはとらわれず、ミニマル的な展開や複雑なユニゾンフレーズ、ポリリズム、そしてインプロヴィゼーションから成る刺激に満ちた作品となっている。
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Arca Rusa(Pipi Piazzolla Trio)
さて、そんな刺激的な作品を世に送り出したピピは近年とみにいろいろなグループに参加しており、どれも非常に内容が濃い。ここではその中からいくつかご紹介してみようと思う。
目次
エスカランドゥルム Escarandrum
エスカランドゥルム はピピが率いる6人編成のジャズ・グループ。1999年に結成され、これまでに6枚のアルバムをリリースしている。最新作は2011年にリリースされた『ピアソラ・プレイズ・ピアソラ』で、タイトル通り、祖父アストル・ピアソラの作品を演奏している。ニコラス・ゲルシュベルクによるオリジナルに敬意を払ったアレンジが良く、なおかつジャズとしての完成度も高い。アルゼンチンで最も権威ある音楽賞の一つ、ガルデル賞にて「黄金のガルデル賞」を受賞している。
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Escalandrum-Piazzolla Plays Piazzolla(Astor Piazzolla)
下の映像はその中から「悪魔をやっつけろ」。
ソリン・オクテート Sorin Octeto
リーダーのニコラス・ソリンは1979年ブエノスアイレス生まれ。バークリー音楽院に学び、管弦楽、ビッグバンド、映画音楽などを手がけている。このグループはトランペット、サックス3本、ギター、ベース、ドラムス、ピアノの8人編成で、ジャズコンボのようでありながら音楽的にはむしろロック寄りのミクスチャー系。ニコラスはピアノ、ヴォーカル、作曲を担当し、ステージではiPadを楽器として演奏している。ピピはタイトなリズムを決める重要な役割を担っている。最新アルバムは『コスモポリタン』。
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Cosmopolitan(Sorin Octeto)
下の曲は上記アルバムには収録されていない “Over”。
フェルナンデス・クアトロ Fernandez 4
ピアニストのシリロ・フェルナンデスが率いるグループ。詳細はよくわからないが、ポップでありながらポリリズムやらジャズ的展開やらが入れ替わり登場し、個人的には大好きなタイプのバンドである。ヴォーカルは上記のソリン・オクテートのリーダー、ニコラス・ソリン。複雑なリズムをさらりとこなすピピのドラミングがかっこいい。先日たまたまYouTubeで見つけただけなので、アルバム等については不明。
ドミニク・ディ・ピアッツァ=ダニエル・ピピ・ピアソラ=ロマン・ミロシニチェンコ
これもたまたまYouTubeで発見したグループ。ロシア人ギタリスト、ロマン・ミロシニチェンコとイタリア人ベーシスト、ドミニク・ディ・ピアッツァとのトリオで、全員の凄まじい技巧が堪能できるプログレ・フュージョンである。
(おまけ)ダニエル・ピアソラ・オクテート
1996年にブエノスアイレスで行われたピアソラ・トリビュートライブ《アストルタンゴ》での「ビオレンタンゴ」。ピピの父(アストルの息子)ダニエル・ピアソラが率いるグループにチック・コリア、ゲイリー・バートン、ダニロ・ペレスを加えての演奏で、グループ自体もバンドネオンがフリオ・パネなど素晴らしいメンバーが揃っている。ここでピピはドラムを叩いている。
以上、駆け足でダニエル・ピピ・ピアソラの演奏を紹介してみた。この先もいろいろなおもしろい試みに登場してくれそうで、目の離せないドラマーである。
卓球好き、音楽好きです。飲み食い好きが高じて料理もします。2024年ソニーグループ(株)を退職し、同年より(株)fcuro勤務のAIエンジニアです。アルゼンチンタンゴ等の音楽について雑誌に文章を書いたりすることもあります。
なお、当然ながら本サイトでの私の発言は私個人の見解であります。所属組織の方針や見解とは関係ありません (一応お約束)。
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