2013年振り返り 本、映画編
ライブ、CD編と同様、ほとんどの文章はFacebookに書き込んだ記事やコメントに一部加筆修正したものです。
目次
本
オタクの息子に悩んでます 朝日新聞「悩みのるつぼ」より
→ オタクの息子に悩んでます 朝日新聞「悩みのるつぼ」より (岡田斗司夫・FREEex・著)
人種とスポーツ – 黒人は本当に「速く」「強い」のか
→人種とスポーツ – 黒人は本当に「速く」「強い」のか (川島浩平・著)
すべては「先送り」でうまくいく – 意思決定とタイミングの科学
→すべては「先送り」でうまくいく – 意思決定とタイミングの科学(フランク・パートノイ・著、上原裕美子・訳)
オタクの息子に悩んでます 朝日新聞「悩みのるつぼ」より (幻冬舎新書)(岡田 斗司夫 FREEex)
アルゼンチン音楽手帖 (栗本斉)
21世紀に入ってからのナチュラルでボーダーレスなアルゼンチン音楽のCDが、およそ250枚というボリュームで紹介されている。音楽ファンの間でも少しずつ注目を集めているアルゼンチン音楽だが、これまではまとまったガイドとなるような情報がかったので、このような本を待ち望んでいた方も多いだろう。
全体は水、風、空、光、大地という五つの章に分けられ、各CD紹介はジャンルのかわりにこれらのイメージに沿って並べられている。全て氏が自らの耳を頼りにセレクトしたものだけに、一枚一枚の魅力が直に伝わり、どれを読んでもすぐに手に取って聴いてみたくなるものばかり。
(ラティーナ2013年9月号向けに執筆した書評より抜粋)
アルゼンチン音楽手帖: Organic Music of Argentina(栗本 斉)
「自分の子どもが殺されても同じことが言えるのか」と叫ぶ人に訊きたい―――正義という共同幻想がもたらす本当の危機 (森達也)
タイトルは死刑廃止論に対する罵倒への問いかけ。何を訊きたいかはぜひご一読を。
森氏本人が凄まじい罵倒、炎上にさらされながらも、世の中の集団化に抗って、おかしいと思うこと、理解できないことへの問いを繰り返す。その一端を垣間見ながら、共に考える。そんな時間が得られる一冊。
内容はダイヤモンドオンラインの「リアル共同幻想論」に加筆してまとめたもの。扱っているのは死刑問題だけじゃないです。
「自分の子どもが殺されても同じことが言えるのか」と叫ぶ人に訊きたい―――正義という共同幻想がもたらす本当の危機(森 達也)
マラソン中毒者 北極、南極、砂漠マラソン世界一のビジネスマン (小野裕史)
ヘンタイ揃いと評判の我が母校卒業生の中でもとびきりのヘンタイ、小野ちゃんのマラソン挑戦の記録。帯にもある通り、35年間運動ゼロだった男が3年半で極地や砂漠でのレースを完走するようになるという、もう何が何だか、なのである。
一歩間違えば頭のおかしいハイパーポジティブ野郎の自慢話になりそうな題材だけど、残念ながらそんなことはない。ハイパーポジティブであると同時に周りを楽しませることが大好きで、仲間とのきづなを大切にするナイスガイ。そんな彼の想いが詰まっているのだ。最後は思いがけずちょっと涙が出そうになった。
北極、南極、アタカマ砂漠の美しい写真も必見。
マラソン中毒者 北極、南極、砂漠マラソン世界一のビジネスマン(小野 裕史)
A3 (森達也)
オウム真理教の麻原彰晃が死刑判決を受けたことは、誰でも知っているだろう。でもその判決を受けた際に麻原がどんな状態だったか、そこに至るまでの裁判で何が明らかにされたのか、あるいはされなかったのか、我々のほとんどはそれらを知らないまま、その判決に何となく納得し、支持している。
本書によれば、判決の時点で麻原は「壊れて」おり、それまでの裁判もまともな審理ができていない。オウムによる戦後最悪の組織犯罪はなぜ引き起こされたのか、その首謀者は何を考えていたのか、まるでわからないままなのだ。極悪犯罪人への報復として死刑を与える、その形式的手続きとしてのみ裁判が機能し、真実を明らかにして事件の再発を防ぐという大事な役割は放棄されてしまっている。
本書において森達也は、麻原の死刑判決に端を発し、麻原、オウム、そしてオウムの引き起こした数々の事件について、丹念に取材を重ねながら考察していく。漠然と「法治国家」であると思っていた我々の国がどんなことをしてきたのかを垣間見て、私は震撼する。我々自身がもっと考えなくては、と思う。
A3 上 (集英社文庫)(森 達也)
A3 下 (集英社文庫)(森 達也)
曙光の街 (今野敏)
日系ロシア人で元KGBのヒットマンが日本のヤクザの組長を狙うハードボイルド。血生臭い暴力描写は極めて具体的で、読んでいて痛い。一方で、巻き込まれた人物それぞれが極限状態に身を置く中で人間らしさを取り戻していくところは、ある種の清々しさを覚える。
ちょっと主人公がスーパーマン過ぎる気もするが、プロ中のプロとしての意識を描くことで一定のリアリティーを担保している。そして、プロであることが物語の一つの軸にもなっている。
ラストは若干予定調和だが、これもまたよし。
曙光の街 (文春文庫)(今野 敏)
『ジューシー』ってなんですか? (山崎ナオコーラ)
以後電子書籍で読んだものについてはそのリンクを追記。
山崎ナオコーラの名前を知ったのは彼女のデビュー作「人のセックスを笑うな」が出た頃(2006年だったらしい)。このペンネームにこのタイトル、なめてるだろ、って思った(だから読まなかった)。次に彼女と出会ったのは新聞の連載コラム。ここであっさり印象は覆る。真面目で不器用、でも前向き。好きなタイプ。
「『ジューシー』ってなんですか」では職場での日常が語られる。小さな事件はあっても大きな波乱はない。交わされるとりとめのない会話、その背後で抱える悩みや傷や哀しみや喜び。言葉を交わすっていいな、って思う。職場の苦手な人ともちょっと会話してみたくなる。
一緒に収録されている「ああ、懐かしの肌色クレヨン」は山田さんに恋をする鈴木さん(このネーミング、やっぱりなめてるだろw)のお話。おそらく身近にいれば不思議ちゃんとか天然とか言われそうな彼女もまた抱えているものがあるのだが、それ以上にまっすぐで一生懸命で強い。彼女を応援しながら心がほんのり温かくなる。
なお、単行本初版時は「ここに消えない会話がある」というタイトルだった。
「『ジューシー』ってなんですか?」(山崎ナオコーラ) 集英社 | 文学・小説 > 小説 > や行(著者) | Reader? Store – ソニーの電子書籍ストア
「『ジューシー』ってなんですか?」 (集英社文庫)(山崎 ナオコーラ)
虐殺器官 (伊藤計劃)
舞台は世界各地でテロが勃発する近未来。9.11以降の世界情勢を背景に、高度に張り巡らされたID認証とロギング、ナノテクノロジー、ユビキタスコンピューティング、人工筋肉を駆使した様々な機器等、我々の暮らす現在から十分想定可能な地続きの世界を、テロ抑止のための暗殺を任務とする米軍特殊部隊員を通じて我々も追体験する。
読み進めながら題名を無意識に虐殺「機関」と誤読していたことに気付く。正しくは消化器官とか呼吸器官とか、体の中でひとまとまりの機能を担う単位としての「器官」。では虐殺を担う器官というものがあるのか…?
虐殺や暗殺の現場におけるリアルな描写と、死んだ母親の想い出とともに現れる死者の世界の幻想、そして非戦闘時における会話や思索では哲学、社会学、芸術、そして意外なキーとなる言語学までが縦横に絡み合う。それらすべてがラストで恐るべき結末へと収斂する展開は圧倒的。戦慄すべし。
虐殺器官(伊藤計劃) 早川書房 | 文学・小説 > 小説 > あ行(著者) | Reader? Store – ソニーの電子書籍ストア
虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)(伊藤 計劃)
勝手にふるえてろ (綿矢りさ)
自意識過剰で人見知りですごく恋愛に憧れているのに行動が伴わない。男女の差はあれかつての自分も多少似た部分があったので(こら、そこ笑うところじゃない…いや、むしろ笑ってくれ)、ものすごく饒舌でありながら現実の世界には何の影響も及ぼしていない心の中の声に共感を覚える。最終的には彼女の方がずっと大切なことに気付くんだけどね。
もうひとつの短編「仲良くしようか」は、全編全くの一人語り。背景も全く説明されず、話題も奔放に行き来する。「愛のためなら死ねると思っていたけど、愛し続けるより死ぬ方が簡単だった。だから死なない。」とか、いくつも刺さる言葉はあるんだけど全体としてはつかみどころがない。何かつかもうとすること自体違うんだろうな。溢れる言葉をそのまま受け止めるのみ。
勝手にふるえてろ(綿矢りさ) 文藝春秋 | 文学・小説 > 小説 > わ行(著者) | Reader? Store – ソニーの電子書籍ストア
勝手にふるえてろ (文春文庫)(綿矢 りさ)
隠蔽捜査 (今野敏)
面白い!ガチガチのエリート意識の塊の警察庁総務課長が主人公。ただし、恐らくは本当の意味でのエリート意識ってこういうのを言うんだろうな。シリーズ化されてるみたいなので早速次も読んでみたい。
隠蔽捜査(今野敏) 新潮社 | 文学・小説 > 小説 > か行(著者) | Reader? Store – ソニーの電子書籍ストア
隠蔽捜査 (新潮文庫)(今野 敏)
ヴァイブレータ 新装版 (赤坂真理)
赤坂真理もだいぶ前に読んだ新聞のコラムだかエッセイだかで気になってた人。これは確か映画にもなったよね。
自分の頭の中に響く言葉と、自分と外界を区別する体、そして傍らにいる男。それぞれの感覚を拾い上げ掬い取ることで、自分が今ここに在ることを確認する。そんな感じかな。全面的に自分語り。言葉に拘り、言葉が全てに優越する。よく映画化できたなあ(観てないからどうなったのかはわからないけど)。男が読んでも十分面白いし共感を覚える部分もあるけど、女の人が読むともっと直接的に感じられるはず。
ヴァイブレータ 新装版(赤坂真理) 講談社 | 文学・小説 > 小説 > あ行(著者) | Reader? Store – ソニーの電子書籍ストア
ヴァイブレータ 新装版 (講談社文庫)(赤坂 真理)
果断―隠蔽捜査2― (今野敏)
一作目で警察庁総務課長から大森署長に降格になった竜崎、ますます快調。原理原則を尊重して正しさを求めるがゆえに変人呼ばわりされる彼の言動には、爽快感を覚える。所轄に降りてきたことで事件もぐっと臨場感を増し、家族との関わりも味わいが出てきた。
果断―隠蔽捜査2―(今野敏) 新潮社 | 文学・小説 > 小説 > か行(著者) | Reader? Store – ソニーの電子書籍ストア
果断―隠蔽捜査〈2〉 (新潮文庫)(今野 敏)
インストール (綿矢りさ)
「インストール」は、発表された当時すごく話題になっていたのであらすじだけ知っていたつもりだったが、読んでみたら全然違う印象。個人的には想定外の結末だったけどすごくいい。「You can keep it.」は、いつも過剰に身を守っていた主人公が初めてピュアな気持ちになった時の、あまりの不器用さが痛々しくも愛おしい。
インストール(綿矢りさ) 河出書房新社 | 文学・小説 > 小説 > わ行(著者) | Reader? Store – ソニーの電子書籍ストア
インストール (河出文庫)(綿矢 りさ)
黄色いバスの奇跡 十勝バスの再生物語 (吉田理宏)
廃業寸前だった地方バス会社の奇跡の再生の物語。ビジネス書のコーナーにあったけど、ほんわか柔らかな挿し絵と暖かい語り口は大人の絵本みたいな味わいです。年明けにはこれを原作とするミュージカルも上演予定!
黄色いバスの奇跡 十勝バスの再生物語(吉田 理宏)
アトリエ・ダンカンプロデュース Musical「KACHIBUS」
清須会議 (三谷幸喜)
敵をいつの間にか巻き込む秀吉の巧みな策略も、単なる小手先、口先の技ではなく遠大なビジョンがあればこそ。各人のキャラクターもそれぞれに魅力的でした。賛否ある映画も観てみたくなりました。
清須会議(三谷幸喜) 幻冬舎 | 歴史・時代小説 > ま行(著者) | Reader? Store – ソニーの電子書籍ストア
清須会議 (幻冬舎文庫)(三谷 幸喜)
映画
ハーブ&ドロシー ふたりからの贈り物
シュガーマン 奇跡に愛された男
デトロイトでデビューしたシンガー・ソングライター、シクスト・ロドリゲス。米国ではほとんど売れず、いつの間にか忘れ去られた存在だった彼の歌が、なぜか南アフリカでは人々を勇気付ける存在となっていた…こんなことがあるのか、という実話を追ったドキュメンタリー。いや、ロドリゲスの歌がいいんだ、これが。
公式サイト
朝食、昼食、そして夕食
スペインの映画。ごはんはやっぱり誰と食べるかですね。必ずしも美味しくなるばかりではない場合も含めて、人と人との関係が食べること、生きることには大事なんだなあ、と思いました。音楽も良かった!エドゥの歌声、いいですねえ。
公式サイト
映画『朝食、昼食、そして夕食』パンフレット posted by (C)よしむら
卓球好き、音楽好きです。飲み食い好きが高じて料理もします。2024年ソニーグループ(株)を退職し、同年より(株)fcuro勤務のAIエンジニアです。アルゼンチンタンゴ等の音楽について雑誌に文章を書いたりすることもあります。
なお、当然ながら本サイトでの私の発言は私個人の見解であります。所属組織の方針や見解とは関係ありません (一応お約束)。
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