自分の聴覚に多大な影響を与えたレコード (6) 渡辺香津美 / Mobo
前回からだいぶ間が開きましたが、Facebook で回ってきたバトン「自分の『聴覚』に多大な影響を与えたレコード」の補足その6、渡辺香津美の “Mobo” です。
渡辺香津美 / Mobo (1983. DOMO AW-20006~7)
これ、公式な形でオンラインで聴ける音源が見つからないんですよね。どうするか迷いましたが1曲目の「上海」だけ YouTube から貼っておきます。
一応アルバム丸ごと上げたものもあるのですが、ちゃんと聴きたい方は CD を買っていただくのが一番良さそうです。
これも前回同様2018年のバトンでやはり言及していたので、そちらを転載します。
高校生の頃から好きだったギタリスト・渡辺香津美の1983年リリースのアルバムです。LP2枚組のボリュームで、リズムセクションにはレゲエ界の重鎮スライ・ダンバー(ds)&ロビー・シェークスピア(b)にオマー・ハキム(ds)、マーカス・ミラー(b)を加えたツインドラム、ツインベースという超重量級構成(曲によって編成に入れ替わりあり)。その強力な土台の上にオーバーダブを重ねられた香津美のギターは、鋭角的な響きやリズムの切れがある一方で、どれがメロディでどれがバッキングなのかよくわからない不思議な感じの演奏。それまでの彼が弾いていたようなかっこいいソロを期待していた耳には、いささか戸惑いを覚える内容でした。
Facebook への投稿より
が、自在に絡み合う複数のギター、それに曲によって参加するマイケル・ブレッカーのサックスが織り成す空間に、いつしかどっぷりとはまりこんでしまったら最後、もう抜けられない。4日目のキング・クリムゾンともども、私の中のかっこ良さという価値観の転換をもたらしたアルバムと言えるでしょう。
従来のフュージョンの枠組みで聴いてかっこいいと思えたのが「Voyage」「Half Blood」「遠州つばめ返し」の3曲。これはメンバーがケイ・アカギ、マーカス・ミラー、オマー・ハキムという陣容で、実はレコードを買ったばかりの頃はこの3曲ばかり聴いていました。
その後、ラストの「All Beets Are Coming」の壮絶セッションにハマり、1曲目の「上海」のぐしゃっとしたコードの響きにハマり…と少しずつ魅力に目覚め始め、いつしか私にとって無くてはならないアルバムになったのでした。
2018年の文章でも書きましたが、何重にも重ねられた香津美のギターはどれがソロでどれがバッキングなのか時によくわからなくなったりします。ギターシンセでギターじゃない音を混ぜ込んだり、フレットレスギターの響きがどことなく和の雰囲気を感じさせたり、キング・クリムゾンさながらのポリリズムが現れたりもします。まさに「聴覚」に刺激を与える聴取体験、それがこのアルバムでした。
卓球好き、音楽好きです。飲み食い好きが高じて料理もします。2024年ソニーグループ(株)を退職し、同年より(株)fcuro勤務のAIエンジニアです。アルゼンチンタンゴ等の音楽について雑誌に文章を書いたりすることもあります。
なお、当然ながら本サイトでの私の発言は私個人の見解であります。所属組織の方針や見解とは関係ありません (一応お約束)。
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