Viaje de Tango 第5回 サッカーにまつわるタンゴ音楽
2021年8月15日に放送された「Marcy & Magi の Tango en Tokio」の中のコーナー「吉村俊司の Viaje de Tango」第5回 サッカーにまつわるタンゴ音楽、事前メモの公開です。
この日はこれまでのアーティストの紹介からちょっと寄り道で、サッカーを扱ったタンゴを特集しました。放送ではなぜ急にサッカーなのかについて言ってなかったですよね。実は背景として、7月のアルフレド・ゴビの特集の際に “Remembranzas” とサッカーに関係ある “La número 5” のどちらをかけるか迷った、ということがありました。結局 Marcy さんと相談して “Remembranzas” を取ったわけですが、代わりに別途サッカー特集をやるのも面白いかもしれないですね、今年のコパ・アメリカでのアルゼンチンの優勝やオリンピックの開催などでサッカーが話題になることも多いし、という話になり、8月に実現の運びとなったのでした。
というわけで、以下事前メモです。
目次
楽曲ごとのメモ
Argentina campeón / Orquesta símbolo Osmar Maderna
- 1955年に南米選手権でアルゼンチンが優勝したことを記念して作られた曲 (作曲クレジットはオスマル・マデルナ象徴楽団)
- 題名は「アルゼンチン、チャンピオン」
- 歌っているのはオラシオ・カサレス
- 「アルゼンチンのチームはアメリカ大陸のチャンピオン 11の意志とひとつの心 体格 (身長) と品格を備えたスポーツの紳士 誇りと共に身に纏う青と白のジャージ」
- オスマル・マデルナ象徴楽団は、1951年にマデルナが亡くなった後アキレス・ロジェ―ロの指揮のもとマデルナの名前を冠して活動した楽団
- 参考
Gol argentino / Edmundo Rivero
- 1963年のアルゼンチン映画 “Pelota de Cuero” (革のボール) の中の一曲で、題名は「アルゼンチンのゴール」
- 映画はボカ・ジュニアーズで長年プレイしてきたサッカー選手に焦点をあてたもの
- モデルは20世紀初頭に活躍したウルグアイのアブドン・ポルテ
- 作詞・作曲 エクトル・マルコ
- この曲はボカ・ジュニアーズではなくアルゼンチンチームをひたすら讃える歌詞。「突然の中盤からのパス、ウィングが切り込み、観客は既に総立ち、パス、ドリブル、そしてゴール!アルゼンチンのゴール!」「世界はあなた方を讃える。チャンピオンの中のチャンピオンだと。」
- 歌っているエドムンド・リベロはサルガン、トロイロ、ピアソラ等とも共演してきた偉大な歌手
- タンゴ歌手には珍しい低音の魅力
- ギター伴奏によるスタイルでも多くの録音
- この曲はロベルト・グレーラが伴奏
- 参考
La número 5 / Alfredo Gobbi y su orquesta típica, Jorge Maciel
- 1951年録音
- 作曲 オレステス・クファロ、作詞 レイナルド・ジソ
- 終盤の実況音声はフィオラバンティ (ウルグアイ生まれでアルゼンチンで活躍したスポーツキャスター)
- 歌詞大意:土曜日の午後、とあるチームのキャプテンに一通の手紙。「明日行われる試合をスタジアムで応援したいのですが、私はもう2年ほども病院にいて願いが果たせません。もしできることなら、試合で使われた ”5番” をもらえませんか。それはきっと私にとって最高の薬になると思います。」屈強なセンターハーフはその手紙を読んで涙を流した。
— 日曜日の試合の実況、ゴール! —
そして月曜日、病室には11人の選手が集い、小さな少年が泣きながら ”5番” を胸に押し当て抱きしめていた。 - 西村秀人さんに教えていただいた情報:題名と歌詞の中の “la número 5” (5番) はボールのサイズを表すらしい。冠詞が el ではなく la なのはボール la pelota から。標準サイズである5号球に該当する模様。
- つまり、歌詞の中に現れる ”5番” は「試合で使われたボール」と思われる
- 参考
Marcación / Astor Piazzolla
- 1978年のワールドカップ・アルゼンチン大会を記念して作られたピアソラのアルバム “Mundial 78″ (Piazzolla 78) から
- タイトルは「マーク」の意味 (マンツーマンでマークする、等の)
- ピアソラがイタリアでジャズ・ロック的アプローチによる活動をしていた期間の最後のアルバム
- アルバム全曲のタイトルがサッカーにちなむが、実際の曲はサッカーと結びついた印象は薄い
Centrojá / Supervielle
- Bajofondo の DJ、キーボードプレーヤーであるルシアーノ・スーペルビエジェのソロ作
- タンゴの音源のサンプリングが効果的に使われたクールな楽曲 (チルアウト系) と熱狂的なサッカー中継アナウンスの対比がゾクゾクもの
- 実況音声は1981年の Copa de oro (ワールドカップ50周年を記念して行われた欧州と中南米の強豪国によるカップ戦、別名 Mundialito – ミニワールドカップ) でのビクトル・ウーゴ・モラレスによるもの。この大会でウルグアイはブラジルに対して歴史的な勝利を収めた。当時のウルグアイのセンターフォワード、ワルデマール・ビクトリーノが決勝ゴールを決めている。
- この音声については当ページの下の方に追加情報あり
- 参考:Rock N’ Gol: Top 10 Songs About Fútbol
音源
今回は最初の2曲が Spotify にはなかったので、ちょっと寂しいプレイリストです。
1曲目の Argentina campeón については、この曲を含むオスマル・マデルナ象徴楽団の CD が丸ごと1本の動画として YouTube に上がっていました。
2曲目の Gol argentino も YouTube で。
放送後
Marcy さんのツイートまとめはまだ上がっていないようです。アップされ次第リンクを貼ります (自力ではまとめる気力がなくて…Marcy さん頼みですみません)。こちらです。いつもまとめありがとうございます!
そしておまけ!なんと、スーペルビエジェの Centrojá でサンプリングされているビクトル・ウーゴ・モラレスの実況音声が YouTube にあったのです!コパ・デ・オロのウルグアイの得点シーンのダイジェストですね。何でもあるなあ。恐るべし YouTube。
これと比較すると、曲の中のでサンプリングされているのは決勝ゴールそのものではなく、複数の試合の音声を編集してつないだものであることがわかります。
いつものお知らせ
コマラジには番組サポーターという制度があって、一部の番組については月額550円で応援することができます。「Tango en Tokio」もそのシステムの対象で、サポーターになると過去に放送されたアーカイブが聴き放題なんです (特典は番組によって異なります)。今から登録しても、過去に私が出た回も聴けます。というわけで、これを機会にこの番組を応援してみようかな、という気分になった方がいらっしゃいましたら、ぜひ募集ページ 集まれー!コマラジ番組サポーター をのぞいてみてください。
そこまではまだ決心がつかない、という方は、ぜひ次回放送を聴いてみてください。番組自体は毎週日曜正午からやってますので、思い立ったらぜひ直近の日曜に。聴き方についてはマーシーさんのブログの「ラジオの聴き方」をご参照ください。
なお、私の次回出演は9月19日の予定です。よろしくお願いします!
卓球好き、音楽好きです。飲み食い好きが高じて料理もします。2024年ソニーグループ(株)を退職し、同年より(株)fcuro勤務のAIエンジニアです。アルゼンチンタンゴ等の音楽について雑誌に文章を書いたりすることもあります。
なお、当然ながら本サイトでの私の発言は私個人の見解であります。所属組織の方針や見解とは関係ありません (一応お約束)。
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Marcy さんによるツイートのまとめへのリンクを追加しました。