エレベーターの開ボタンと閉ボタン
先日仙台で宿泊したホテルでのこと。
下りのエレベーターで5歳位の女の子とそのお父さん、お母さんという家族連れと乗り合わせました。途中階で他の人が降りたあとお父さんが「閉」ボタンを押してドアを閉めたのを見て、女の子は「今度はまーちゃん(仮名)がやる!まーちゃんがやる!」と言い出しました。お母さんは「じゃあ1階に着いたらこっちを押してね」と「開」ボタンを指さします (開も閉も実際には文字ではなくアイコン表示でしたが、文章の都合上「開」「閉」と表記します)。乗ってる我々は、まーちゃんに「ありがとう」と言いながら先に降りるのがこの場のとるべき行動だ、と確認し、状況を頭の中でシミュレーション。程なく1階に近付き、エレベーターが静止する前から真剣な面持ちで「開」ボタンを連打し始めるまーちゃんと「まだだよー」と笑いながら諌める両親、それを微笑ましく見守る我々。が、ドアが開いた途端、我々が足を出すより先に、まーちゃんはボタンから手を離して真っ先に降りてしまいました。あれれー?と呆気に取られる我々と、同じく呆気に取られつつも済まなそうに我々に会釈して降りるご両親。こちらは単に、気まぐれだなあ、面白いなあ、とその時は思ったのでした。
でもそのあと歩きながら、あれほど張り切っていたのにどういうことだろう、とぼんやり考えてみて、はたと気付きました。
まーちゃんのお父さんが押した「閉」ボタンは、ボタンを押すことによってドアが閉じる、という機能を持ちます。そこからまーちゃんが「開」ボタンに期待した機能は、ボタンを押すことによってドアが開くということだったのではないかと。ドアが開いたら自分の任務は完了、ゆえにさっさと降りてしまった、ということだったのではないかと思うのです。
でも実際には「開」ボタンの機能はドアを開けることではなく、開いたドアを開いたままにすることなんですよね。イメージ的には反対の機能でありそうなエレベーターの「開」ボタンと「閉」ボタンは、実際の機能は反対ではない訳です。非対称な機能割り当て、と言っても良いのかもしれません。それを我々が混乱することなく把握しているのは経験のなせる技ということなのでしょう。
まーちゃんの心情が本当にこの通りだったかは知るよしもありませんが、自分のなかでは結構納得感のある結論でした。
ちなみにそういう例、他にもありますかね?反対の意味を持つ言葉が反対ではない機能に割り当てられている、対になる語が割り当てられた二つの機能が非対称である、というようなこと。結構ありそうな気がしたのですが、うまく見つけられません。はて…
卓球好き、音楽好きです。飲み食い好きが高じて料理もします。2024年ソニーグループ(株)を退職し、同年より(株)fcuro勤務のAIエンジニアです。アルゼンチンタンゴ等の音楽について雑誌に文章を書いたりすることもあります。
なお、当然ながら本サイトでの私の発言は私個人の見解であります。所属組織の方針や見解とは関係ありません (一応お約束)。
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