Spotify で聴くエドゥアルド・ロビーラ (2)

前回 に続いてエドゥアルド・ロビーラの配信音源の紹介です。やはり『アンボス・ムンドス』第4号 (2000年、インパクト出版会) の「ロビーラ&ニチェーレ ポスト・ピアソラ2」(山本幸洋、斎藤充正、西村秀人、石川浩司、渡部晋也、鈴木一哉) を参考にまとめています。

バレエのための組曲『タンゴ・ブエノスアイレス』

1962年、ロビーラは LP 2枚組のアルバム “Tango Buenos Aires” (Microfon, I-32/33) をリリースします。収録されているのはフェルナンド・ギベールの詩集『タンゴ』をベースにギベールとホセ・ダニエル・ビアカーバがストーリーを書き、ロビーラが作曲した同名のバレエ組曲。全11曲が収められています。

メンバーは第一バイオリンがウーゴ・バラリスである他は前作と同じで以下の通り。ニチェーレは何等かの理由で参加できず、そのピンチヒッターとしてバラリスが参加した可能性が高いようです。

  • bn エドゥアルド・ロビーラ
  • vn ウーゴ・バラリス、エルネスト・シトン、エクトル・G・オヘーダ
  • va マリオ・ラリ
  • vc エンリケ・ラノー
  • cb フェルナンド・ロマーノ
  • pf レオポルド・R・ソリア

『アンボス・ムンドス』の記事が出た2000年までは全く復刻されておらず、「ロビーラの全アルバムの中でも特にレアなもの」と書かれていましたが、同年の年末に CD として復刻されています (Fogon, CDFOG 507)。

バレエ組曲として一貫したコンセプトに基づいて構成され、非常に聴き応えのある作品となっています。CD のライナーにはバレエの各場面のストーリーも書かれているのですが、スペイン語なので読めていません。そのうちまた機械翻訳も駆使して読んでみなければ…。

7「音楽家たち」は、副題「我が街のバイオリン」をタイトルにして後年レイナルド・ニチェーレが録音しています (バンドネオンと編曲はロビーラ)。

室内楽的アプローチによる「現代タンゴ集団」の集大成的アルバム

1963年、彼の3作目となるアルバム “Tango vanguardia” (Microfon, I-48) がリリースされます。メンバーは前2作よりバイオリンが1人減った七重奏。ニチェーレが復活してピアノがオスバルド・マンシに交代しています。

  • bn エドゥアルド・ロビーラ
  • vn レイナルド・ニチェーレ、エルネスト・シトン
  • va マリオ・ラリ
  • vc エンリケ・ラノー
  • cb フェルナンド・ロマーノ
  • pf オスバルド・マンシ

これも『アンボス・ムンドス』の記事の時点では未復刻でしたが、2008年に CD 化されています (Sony BMG, 8869 740877 2)。

収録曲のうち1はオスバルド・マンシ、3はエンリケ・ラノーといずれもアンサンブルのメンバーの作品。また8はホセ・アントニオ・モレーノ、9はフリアン・プラサ、11はカルロス・ブオノの作品で、残る2、4、5、6、7、10がロビーラの作品です。

アルバムタイトルの意味はそのものズバリの「前衛タンゴ」。ただ、本当にこれが「前衛」かというと少々疑問が残るのも正直なところです。というのも、彼の作品の作曲技法的にはバッハやモーツァルトやベートーベン等18~19世紀の音楽をタンゴに持ち込んだものであり、音楽全般で見れば特段新しいものでもないと思うのです。7の「十二音階」は20世紀のシェーンベルクの技法で一応前衛と言えそうですが、これにしても技法そのものがタイトルに付いている位ですからまだこなれていない気がします。

そしてその上で、不思議な魅力をこのアルバムの音楽から感じるのもまた事実です。私にとっては別に前衛であるかはどうでも良く、単に時々猛烈に聴きたくなるのが彼の音楽であり、このアルバムなのです。

室内楽的な七~八重奏によるアルバムはこれが最後になり、以後しばらくトリオでの活動が続きます。

こんなところにもロビーラ

全225曲という膨大な曲数のコンピレーション “Tango – An Anthology” は、前回紹介した “Lo mejor de Argentina” とは異なりアーティストも曲も一応ポリシーをもって選ばれているように見えます。

ここにピアソラと並んでロビーラの曲も収録されているのですが、上記の “Tango vanguardia” からの2曲に加えて “Policromía” という聴きなれない曲が入っています。『アンボス・ムンドス』の記事によれば1964年のオムニバス盤 “Circulo amigos del buen tango” に収録されていた曲とのことです。曲のタイトルの意味は「多彩色」で、時々差し挟まれるピアノのオクターブのフレーズが印象的な佳曲であると思います。

曲数が多すぎて探すのが大変なので同曲だけのリンクも貼っておきます。

次回はいよいよトリオになってからのロビーラのアルバムを取り上げます。

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