Viaje de Tango 第9回 ロマンチックタンゴスペシャル

2021年12月19日に放送された「Marcy & Magi の Tango en Tokio」の中のコーナー「吉村俊司の Viaje de Tango」第9回 ロマンスタンゴスペシャルの事前メモ公開です。

サブタイトルに「曲の雰囲気がクリスマスっぽい」とある通り、一応クリスマスを意識して選曲したものなので、なんとかクリスマスに間に合わせました。一方で、あくまで「雰囲気が」クリスマスに合いそうなロマンチックなものを選んだ訳ですが、放送に向けて詞の内容を確認したら悲しいものばかり😅。でも本当にきれいな曲が揃っているのでぜひ音源の方も聴いてみてください。

楽曲と解説

メモの中の歌詞の大意は、Todotango.com で調べた歌詞を DeepL 翻訳 で英語及び日本語に翻訳して内容を把握し、まとめたものです。また「グリセータ」とタンゴ・ロマンサというジャンルについてはこちらのページが大変参考になりました。

Griseta: French Novels, Imagined and Otherwise ← 長らくリンクが誤っていました。修正しました。(2024/11/25)

Griseta グリセータ / レイナルド・ニチェーレと現代タンゴ集団

  • エンリケ・デルフィーノ作曲、ホセ・ゴンサレス・カスティージョ作詞
  • 1924年に作られた「タンゴ・ロマンサ」
    • タンゴ・ロマンサはしばしば「タンゴの無言歌」と訳されるが、実際には詞も重要な要素で、恋愛小説やイタリアのアリアを題材としている
    • 美しくロマンティックなメロディと文学的な詞が特徴
    • 「グリセータ」は “tango romanza” というスタイル名を付けて出版された最初の曲 (実際にはこの曲より前から同様のスタイルの曲がフアン・カルロス・コビアンやデルフィーノによって作られていた)
  • デルフィーノは卓越したピアニストで作曲家
  • 小説 (オペラ『ラ・ボエーム』の元となったアンリ・ミュルジェール「ボヘミアン生活の情景」等) の主人公に憧れ、ロマンスを夢見てブエノスアイレスにやってきたフランスのお針子の女性が、夢破れて寂しく死んでいく…
  • 演奏するニチェーレはエドゥアルド・ロビーラの回でも言及したバイオリニストで、多くの楽団に参加する傍らロビーラとは長く活動を共にした
  • この音源は1965年の録音で、ロビーラの演奏活動と同様『現代タンゴ集団』を名乗っているが、編成は標準的な四重奏
  • 編曲はロビーラだがバンドネオンはアティリオ・コラール

Divina ディビーナ (女神) / ラウル・ラビエ

  • ホアキン・モラ作曲、フアン・デ・ラ・カージェ作詞
  • 1933年の作品
  • モラはアルゼンチンには珍しいアフリカ系(黒人)ミュージシャン
  • 当初ピアニストとして音楽活動を始めたが、バンドネオンに魅せられてバンドネオン奏者に転向、しかし楽器を盗まれてピアニストに戻る
  • タンゴ・ロマンサの代表的な作曲家のひとり
  • 失恋の悲しみに暮れる女性を見守り、「もうひとつの愛が貴方の痛みを癒やそうとしている、笑顔を取り戻して」と語りかける
  • 歌曲としては難曲の部類と思うが、ラウル・ラビエは見事に歌いこなしている
  • 1973年録音、伴奏はバンドネオン奏者ワルテル・リオスのトリオ

Loca bohemia ロカ・ボエミア (狂乱のボヘミアン人生) / フリオ・デ・カロ楽団

  • フランシスコ・デ・カロ作曲、ダンテ・リンジェーラ作詞
  • 1928年初演
  • フランシスコはピアニストでフリオの兄。タンゴ・ロマンサの代表的な作曲家のひとり。
  • 夢見るボヘミアンの歌い手。愛すること、それが人生。しかし女性が金持ちの元へと去り、歌うことの意味を失う。…狂ったボヘミアン、今や心はうめくことをやめ、痛みも去った。もうひとつの幻想が狂おしい情熱と共に感動の花を咲かせるなら、彼女が去ったことはどれほどのことなのか。忘却よ来たれ。夢を見、笑い、自分を欺き、裏切り、やり直す。それが人生。
  • 1928年録音。演奏はフリオ・デ・カロ楽団で、ピアノはフランシスコ自身。

En las sombras 影の中で / アストル・ピアソラ

  • ホアキン・モラ作曲、マヌエル・メアーニョス作詞
  • 1934年の作品
  • 愛などなくても幸せだった私のところに貴方は突然やって来て、そしてちょうど1年後の今日、貴方は何も言わずに去っていってしまった。貴方の愛は私を照らす一条の陽の光だった。今私は再び、貴方の愛の明るさを受け止めていたという想い出と共に、影の中に取り残されている。
  • この録音は1967年にリリースされたアルバム『タンゴの歴史 第2集 ロマンティック時代』に収められたもの
  • 『ブエノスアイレスのマリア』作曲の直前の大スランプ期に企画モノとして作られたアルバムだが、個人的にはこの曲を録音してくれたという一点でピアソラのスランプに感謝したいほど

音源

いつものように Spotify のプレイリストにまとめました。

1~4の放送でかけた曲に加えて4曲追加してあります。5 Nunca tuvo novio (恋人もなく) はアグスティン・バルディ作曲、エンリケ・カディカモ作詞の1929年の作品で、ウーゴ・バラリスの1973年の演奏。これは題名からしてクリスマス向きじゃないですね。でも曲も演奏もとても美しいのです。6 Flores negras (黒い花) はフランシスコ・デ・カロ作曲、マリオ・セサル・ゴミラ作詞の1927年の作品で、オスバルド・タランティーノのピアノソロによる1991年のライブ録音。ちょっとごつごつした感じもありつつ、何とも言えない味のあるピアノです。7 Margarita Gauthier (椿姫) はホアキン・モラ作曲、フリオ・ホルヘ・ネルソン作詞の1935年の作品。オスマル・マデルナ楽団とペドロ・ダティラの歌による1947年の録音です。華麗なピアノが素敵です。そして、一曲ぐらいはクリスマスにちなんだ曲を、ということで8 Navidad (クリスマス)。オスバルド・プグリエーセ楽団の演奏でホルヘ・マシエルが歌っています。

という訳で、内容を気にせず聴ける方はぜひクリスマスの BGM に、そうでない方は物思いに耽る夜の時間などのお供に、ぜひお楽しみください。

お知らせなど

そしていつものお知らせです。コマラジには番組サポーターという制度があって、一部の番組については月額550円で応援することができます。「Tango en Tokio」もそのシステムの対象で、サポーターになると過去に放送されたアーカイブが聴き放題なんです (特典は番組によって異なります)。今から登録しても、過去に私が出た回も聴けます。というわけで、これを機会にこの番組を応援してみようかな、という気分になった方がいらっしゃいましたら、ぜひ募集ページ 集まれー!コマラジ番組サポーター をのぞいてみてください。

そこまではまだ決心がつかない、という方は、ぜひ次回放送を聴いてみてください。番組自体は毎週日曜正午からやってますので、思い立ったらぜひ直近の日曜に。聴き方についてはマーシーさんのブログの「ラジオの聴き方」をご参照ください。

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