Spotify で聴くエドゥアルド・ロビーラ (4) 番外編 レイナルド・ニチェーレのリーダー作でのロビーラ
このシリーズの最終回です。前回の最後に
次回はこのシリーズの最終回。ロビーラの盟友レイナルド・ニチェーレのリーダー作にロビーラが参加したものを紹介しようと思います。
Spotify で聴くエドゥアルド・ロビーラ (3)
と書いたとおり、レイナルド・ニチェーレのリーダー作の紹介が中心になります。
今回もまた『アンボス・ムンドス』第4号 (2000年、インパクト出版会) の「ロビーラ&ニチェーレ ポスト・ピアソラ2」(山本幸洋、斎藤充正、西村秀人、石川浩司、渡部晋也、鈴木一哉) を参考にしました。
目次
レイナルド・ニチェーレの初リーダー作 “Tango”
バイオリニストのレイナルド・ニチェーレ (1918~1998) は、アニバル・トロイロ楽団の結成当初からのメンバーであった他、多くのタンゴ楽団に参加した名手でした。真面目な気質はロビーラとウマが合ったようで、これまで紹介したロビーラの音源でもバイオリンが入っているものについてはほとんどの作品でニチェーレがトップを弾いています。
アルバム “Tango” はニチェーレの最初のリーダー作で、1965年頃の録音。Raynaldo Nichele y los solistas del tango (レイナルド・ニチェーレとタンゴのソリスト達) と名乗ったこのグループのメンバーは以下の通りです。
- vn レイナルド・ニチェーレ
- bn, arr エドゥアルド・ロビーラ
- pf アティリオ・スタンポーネ
- cb フェルナンド・ロマーノ
2008年に CD 化され、その音源が配信にも乗っています。
タンゴのスタンダードと呼べるような古典曲、有名曲が並んでおり、ロビーラの編曲の妙とニチェーレはじめ各人の名人芸が存分に楽しめる内容となっています。
ロビーラは編曲のみで参加した “Tango de etiqueta”
アルバム “Tango de etiqueta” は上の “Tangos” と近い時期に同じ楽器編成でリリースされたもの。『アンボス・ムンドス』の記事では1968年録音である可能性が高いとされていますが、2008年に CD 化された際のライナーには1965年リリースと書かれています。グループ名は Raynaldo Nichele y su agrupación de tango moderno (レイナルド・ニチェーレと現代タンゴ集団) と、ロビーラのグループと同じ名前が付いています。しかしながらメンバーは下記の通りで、ロビーラはバンドネオンを弾いておらず編曲のみの参加となっています。
- vn レイナルド・ニチェーレ
- bn アティリオ・コラール (2と10以外)、ロドルフォ・メデーロス (2, 10)
- pf ホセ・コランジェロ
- cb フェルナンド・ロマーノ
- arr エドゥアルド・ロビーラ
1はニチェーレの自作、5はロビーラ作。2~4は1940年代のトロイロ楽団のレパートリーだった曲で、これら以外は古典および有名曲となっています。”Tangos” よりも曲目的に個性の出た内容かと思います。古典曲についても超有名曲の10がかなり攻めた内容です。演奏に加わっていないとはいえ、ロビーラの存在感が強く感じられる内容ではないかと思います。
これら以外にもう一枚、ニチェーレのリーダー作としては “El violín de mí ciudad” (我が街のバイオリン) というアルバムが録音されています。次に言及するロビーラの “Que lo paren” と同じメンバー、すなわちニチェーレ、ロビーラ、ネストル・メンディ (cb)、オスカル・メンディ (pf) による演奏で、これまでの2枚と同様の路線の内容ですが、残念ながら録音後一旦お蔵入りしてしまい、ロビーラが亡くなった後の1982年にアルゼンチンでカセットテープでのみリリース、その後1997年に “Que lo paren” とのカップリングで CD 化されています。今のところ Spotify では聴くことができません。
ロビーラの遺作 “Que lo paren” より
ここまで何度か言及してきたロビーラの1975年録音のアルバム “Que lo paren” は、アルバムとしては Spotify に上がっていませんが、タイトル曲だけはコンピレーションの中の1曲として聴くことができます。
しばらくタンゴ界から離れていたロビーラの久しぶりのタンゴのアルバムで、その後も彼はライブ等の活動を行っていたようですが、結局次の録音の機会もないまま1980年に亡くなってしまいました。従ってこれがロビーラの遺作ということになります。
終わりに
以上、思ったより時間がかかってしまいましたが、Spotify で聴けるエドゥアルド・ロビーラの音源のまとめでした。Spotify 以外のサブスクリプション系音楽配信サービスでも聴ける可能性がありますので、Spotify を使っていない方もアルバムタイトル等を手がかりに探してみて頂ければと思います。
卓球好き、音楽好きです。飲み食い好きが高じて料理もします。2024年ソニーグループ(株)を退職し、同年より(株)fcuro勤務のAIエンジニアです。アルゼンチンタンゴ等の音楽について雑誌に文章を書いたりすることもあります。
なお、当然ながら本サイトでの私の発言は私個人の見解であります。所属組織の方針や見解とは関係ありません (一応お約束)。
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