Viaje de Tango 第12回 このバンドネオン・バリアシオンが凄い!
2022年3月13日に放送された「Marcy & Magi の Tango en Tokio」の中のコーナー「吉村俊司の Viaje de Tango」第12回 バンドネオン・バリアシオンの特集の事前メモ公開です。
目次
バリアシオンとは?
最初に簡単に「バリアシオンとは何か」について説明しました。
- バリアシオン=バリエーション、変奏
- 主題のリズム、拍子、和声などを変えたり、旋律にさまざまな装飾を付けるなどして変形すること – Wikipedia – 変奏曲 より
- ちなみに有名なモーツァルトの「きらきら星変奏曲」は、変奏によって曲全体を作り上げたもの (下に参考映像あり)
- タンゴではしばしばバンドネオンによるバリアシオンが曲の終盤に付加されるようになった
- 1920年代には出現
- 速弾きの華麗さが曲を盛り上げる
- 作曲者が付加するケース
- パリのカナロ (アレハンドロ・スカルピーノ、フアン・カルダレーラ)
- レクエルド (オスバルド・プグリエーセ)
- レスポンソ (アニバル・トロイロ)
- ミロンガ・コン・バリアシオネス (フランシスコ・カナロ)
- 編曲者、バンドネオン奏者が付加するケース
- 定番化するものもあれば楽団固有のものもある
- ラ・クンパルシータ
- エル・チョクロ
- バンドネオンの嘆き
- その他多数
バリアシオンがかっこいい曲3選
以下の曲目を紹介しました。
Amurado アムラード (見捨てられて) / セステート・マジョール
- ペドロ・ラウレンス、ペドロ・マフィア作曲、ホセ・デ・グランディス作詞
- ラウレンス、マフィアは共にフリオ・デ・カロのオルケスタ (六重奏団) で活躍したバンドネオン奏者
- 2人はそれぞれ自分の作曲した部分にバリアシオンを作ったが、現在聴かれるのはラウレンスによるもの
- セステート・マジョールのこの録音は1975年のもの
- ホセ・リベルテーラとルイス・スタソの2人のバンドネオン奏者が率いるグループ
- いきなりバリアシオンから入るアレンジ、迫力の演奏
- 音源はレコード
Tierra querida ティエラ・ケリーダ (愛しい土地) / ホセ・バッソ楽団
- フリオ・デ・カロ作曲、ルイス・ディアス作詞
- ホセ・バッソはアニバル・トロイロ楽団で活躍したあと独立して自身の楽団を持ったピアニスト
- 1970年と85年に来日し、70年の大阪万博ではアルゼンチン館でも演奏
- この録音は1960年代のもの
- バンドネオンだけでなく冒頭と中盤の豪華なバイオリンソロ、途中のマエストロによるピアノもそれぞれ聴きもの
- 第一バンドネオン奏者はフアン・カルロス・ベラ、バリアシオンは後から付けられたもので、繊細なフレージングが魅力的
Nueve puntos ヌエベ・プントス (9点) / フルビオ・サラマンカ楽団
- フランシスコ・カナロ作曲
- 題名の意味を聞かれたカナロは「10点満点で9点位の出来だから」と答えたそうだが、実は当時の市街電車のスピードメーターの最高速が「9」だったことから最高の出来を表すつもりで付けたらしい
- サラマンカはフアン・ダリエンソ楽団の黄金期を支えたピアニスト
- 1957年に独立して自身の楽団を結成
- ヌエベ・プントスはサラマンカ得意のレパートリーで、この録音は1957年のもの
- 斬新なリズム、豊かな弦の響き、中盤のマエストロによる華麗なピアノも聴きもの
- 第一バンドネオン奏者はエドゥアルド・コルティ、バリアシオンは後から付けられたもの
なお、この日はこれら以外に、マーシーさんが日本のバンドネオン奏者に好きなバンドネオン・バリアシオンを聞いたアンケートの結果も紹介されました。なんと全員バラバラで被りなし、興味深い選曲ばかりでした。
音源
上で述べた代表的な変奏曲「きらきら星変奏曲」です。
いつものように放送で使用した音源を Spotify のプレイリストにまとめました。ただ、セステート・マジョールの「アムラード」は Spotify では配信されていないようですので、かわりに作曲者の一人ペドロ・ラウレンスの楽団の演奏を入れてあります。また4曲目以降に「バリアシオンとは?」の項で挙げたバンドネオン・バリアシオンが有名な曲を追加してあります。
いつものお知らせ
最後にいつものお知らせです。コマラジには番組サポーターという制度があって、一部の番組については月額550円で応援することができます。「Tango en Tokio」もそのシステムの対象で、サポーターになると過去に放送されたアーカイブが聴き放題なんです (特典は番組によって異なります)。今から登録しても、過去に私が出た回も聴けます。というわけで、これを機会にこの番組を応援してみようかな、という気分になった方がいらっしゃいましたら、ぜひ募集ページ 集まれー!コマラジ番組サポーター をのぞいてみてください。
そこまではまだ決心がつかない、という方は、ぜひ次回放送を聴いてみてください。番組自体は毎週日曜正午からやってますので、思い立ったらぜひ直近の日曜に。聴き方についてはマーシーさんのブログの「ラジオの聴き方」をご参照ください。
次回は4月17日の予定です。よろしくお願いします!
卓球好き、音楽好きです。飲み食い好きが高じて料理もします。2024年ソニーグループ(株)を退職し、同年より(株)fcuro勤務のAIエンジニアです。アルゼンチンタンゴ等の音楽について雑誌に文章を書いたりすることもあります。
なお、当然ながら本サイトでの私の発言は私個人の見解であります。所属組織の方針や見解とは関係ありません (一応お約束)。
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