Viaje de Tango vol.13, 14 タンゴミュージシャンによるフォルクローレ
「Marcy & Magi の Tango en Tokio」の中のコーナー「吉村俊司の Viaje de Tango」の事前メモ公開です。2022年4月は変則的に17日と24日の2週にわたって「タンゴミュージシャンによるフォルクローレ」を取り上げました。
目次
フォルクローレとは?
フォルクローレ(folclore)は、日本では、ラテンアメリカ諸国の民族音楽や、民族音楽に基礎をおいた大衆音楽を指す。言葉本来の意味は、民俗学、民俗的な伝承一般を指す。英語のfolkloreがスペイン語化したもの。民俗学一般を指す言葉としては、綴りは同じだが英語読みの「フォークロア」が使われる。
Wikipedia – フォルクローレ
- アルゼンチンのフォルクローレは歌曲が多く、踊りと深く結び付いている。
- 平原地帯のガウチョ、パジャドール (吟遊詩人) の音楽とリズムがベースとなっているものが多い。ギター、ボンボのほかバイオリン、アコーディオン、バンドネオン等が使われる。
- 6/8拍子系:サンバ、チャカレーラ、マランボ*
- 2拍子系:ミロンガ (ミロンガ・カンペーラ、ミロンガ・パンペアーナ)
- 北東部リトラル地方には、ヨーロッパのポルカ、マズルカとインディオの音楽が混ざりあってできたチャマメという音楽もある。
- タンゴミュージシャンが演奏する場合、タンゴの世界に引き込んで演奏するケースとフォルクローレのリズムを尊重して演奏するケースがある。
* 放送ではマランボを2拍子系と言ってしまいましたが、6/8拍子系でした。
前編楽曲
4月17日の前編は「フォルクローレのタンゴ化」と題して上述の「タンゴの世界に引き込んで演奏」した例を特集。リファレンスとして本来のフォルクローレの音源を先にかけてからタンゴ楽団によるものをかけました。
- Los ejes de mi carreta 牛車に揺られて / アタウアルパ・ユパンキ
- アルゼンチンのフォルクローレの最重要人物の一人、アタウアルパ・ユパンキが書いたミロンガ
- 車軸に油をささないからろくでなしだと言われる このきしむ音が好きなのに
- 同 / アニバル・トロイロ楽団、歌エドムンド・リベロ
- 1947年録音
- 同じミロンガでもこちらは完全にタンゴ系のミロンガ、都会のミロンガ (ミロンガ・シウダダーナ) の形に持ち込んでしまっている
- Luna Tucumana トゥクマンの月 / メルセデス・ソーサ
- これもユパンキの作品で、形式はサンバ
- この曲が流れるとアルゼンチンの人々はみんな立ち上がって大合唱が起きるような、国民的な歌
- 私が月に歌うのは ただ照っているからではない 月が私の長い道のりを知っているから歌うのだ
- ユパンキが亡命のような形で パリに移る直前に書かれた曲
- メルセデス・ソーサは国民的な大歌手
- ピアノにはやはりフォルクローレの重要人物のひとりであるアリエル・ラミレスが参加
- 同 / ロベルト・カロー楽団、歌ロドルフォ・ガレー、エクトル・デ・ロサス
- 1957年録音
- 6/8拍子のサンバを完全にタンゴ化
- ロベルト・カローはミゲル・カローの弟で、歌手として活動した後楽団の指揮者となった
- エクトル・デ・ロサスは1960年代にはピアソラと共演、『ブエノスアイレスのマリア』にも参加した歌手
後編楽曲
4月24日の後編ではフォルクローレのリズムを尊重した音源をかけました。
- Zamba de la extranjera (異邦人のサンバ) / レオポルド・フェデリコ
- 作:レオポルド・フェデリコ、フリオ・フォンタナ
- レオポルド・フェデリコはタンゴ史上最高のバンドネオン奏者のひとり
- この曲は1978年リリースのアルバム “Homenaje al amigo” に収められたもの
- 同アルバムにはもう一曲 “Cuando tu pienzo en zamba” というサンバもあり、どちらも2010年のオルケスタ・エル・アランケとフェデリコの共演アルバムに収録されている
- Los sesenta granaderos (60人の擲弾兵 -てきだんへい) / アルベルト・ポデスタ、ラス・ボルドーナス
- 作詞イラリオ・クアドロス、作曲フェリクス・ペレス・カルドーソ
- アルゼンチンをはじめとして南米諸国の独立に多大な功績を残したサン・マルティン将軍がチリに向けて2度目のアンデス超えを行った際の、体調を崩した将軍を献身的に支えた60人の騎乗擲弾兵のことを歌った曲
- ロス・チャルチャレーロスの歌が有名
- 形式はクエカで、男女がハンカチを振りながら円を描くようなステップで踊る音楽
- 大歌手アルベルト・ポデスタがラス・ボルドーナスの伴奏で歌う
- 2012年録音
- Añorando (アニョランド) / セステート・ミロンゲーロ
- 作:ミゲル・シモン、フアン・シモン、フアン・ホセ・シモン
- ミロンガでも大人気のセステート・ミロンゲーロの2013年のアルバムに収められたチャカレーラ
- 作曲者のシモン兄弟は5人兄弟のフォルクローレグループ
- 歌詞は遠い地から故郷のサラビナ (サンティアゴ・デル・エステロ州) に早く帰りたいという想いを歌ったもの
- ミゲルはバンドネオン奏者
- Gracias a la vida (人生よありがとう) / ロベルト・ゴジェネチエ
- 作:ビオレータ・パラ
- 作曲者はチリのシンガーソングライターで、歌によって社会変革を目指す運動「ヌエバ・カンシオン」の先駆者
- この曲は1966年に発表され、翌年彼女は自殺
- 1970年に成立したアジェンデ政権下でヒット、その後ピノチェト軍事政権下でも歌い継がれる
- アルゼンチンでもメルセデス・ソーサ他が歌っている
- ゴジェネチエのこのバージョンは1985年にリリースされたアルバム “Como la cigarra” に収録されたもの
- 伴奏のカルロス・フランセッティはアルゼンチン生まれで現在は米国にてジャズ等で活躍するミュージシャン
なお、2曲目の “Los 60 granderos” のリズム「クエカ」については「一人で踊るクエカ」という記事を書きましたので、よろしければ併せてお読みください。
音源
いつものように Spotify のプレイリストにまとめました。なお、後編の1曲目 (プレイリスト5曲目) の放送でかけた音源はサブスクに上がっていないので、同じ曲をオルケスタ・エル・アランケがレオポルド・フェデリコをゲストに迎えて録音したアルバムのバージョンを入れてあります。また後編4曲目もサブスクにはなくプレイリストには入れられませんでしたが、YouTube にありましたので貼っておきます。
いつものお知らせ
いつもお知らせしている番組サポーターの件ですが、現在システムを移行中とのことで、新システムが稼働し始めたら改めて追記します。
次回は…既に今日 (2022年5月15日) 終わっちゃいました😅 その次は都合により第4週の6月26日の予定です。よろしくお願いします!
卓球好き、音楽好きです。飲み食い好きが高じて料理もします。2024年ソニーグループ(株)を退職し、同年より(株)fcuro勤務のAIエンジニアです。アルゼンチンタンゴ等の音楽について雑誌に文章を書いたりすることもあります。
なお、当然ながら本サイトでの私の発言は私個人の見解であります。所属組織の方針や見解とは関係ありません (一応お約束)。
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