Viaje de Tango vol.17 ネストル・マルコーニ (黄金時代を経験した現代の巨匠シリーズ)
すみません、だいぶ遅くなってしまいました。2022年7月17日に放送された「Marcy & Magi の Tango en Tokio」の中のコーナー「吉村俊司の Viaje de Tango」の事前メモ公開です。この日は新シリーズ「黄金時代を経験した現代の巨匠」の2回目で、ネストル・マルコーニの特集でした。
目次
ネストル・マルコーニ Néstor Marconi 略歴
- 1942年6月15日、サンタフェ州ロサリオ近郊のアルバレス生まれ
- 幼い頃よりピアノを学び、バンドネオンは当初まったくの独学
- ラウレンス、トロイロ、ピアソラに夢中になりながら、16歳(?)の時にロサリオでプロデビュー
- 20歳のときにロサリオに来たホセ・バッソ楽団に臨時で参加したのが転機となり、ブエノスアイレスに家族とともに移り住む
- 以後バッソ楽団、自身のグループ、フアン・カルロス・コーペス舞踏団との中米ツアー、といった演奏活動を行う
- 1969 年もしくは 70 年、エンリケ・フランチーニの六重奏団に参加してバンドネオンと編曲を担当
- 同楽団での同僚だったピアニストのオラシオ・バレンテとバングアトリオを結成し、カーニョ・カトルセへの出演などで 70 年代後半まで活動、アルバムを 2 枚録音
- 1973年には日本ツアーのために結成されたフランチーニ=ポンティエル楽団のメンバーにバレンテ(ピアノではなくバンドネオンを担当)とともに抜擢され、日本の土を踏んでいる
- 他にもホセ・コランジェロ四重奏団の 4 枚のアルバム他多くの楽団に参加
- 1976 年には自身の名を冠した最初のアルバムを制作
- 以後、ピアニストのオスバルド・タランティーノや歌手のロベルト・ゴジェネチェらと共演し、1988 年、91 年には八重奏団を率いて来日
- ヨーヨー・マ・プレイズ・ピアソラの録音、ヌエボ・キンテート・レアル等多くのグループに参加
- 近年は自身のトリオを中心にソロからオーケストラまで幅広く活躍、後進の指導にもあたる
- 今年6月には80歳とプロ活動60周年 (バッソ楽団参加を起点としている模様) を祝うコンサートがブエノスアイレスで行われた
楽曲
Chiqué チケ / バングアトリオ
- リカルド・ルイス・ブリニョーロ作の古典タンゴ
- バングアトリオはマルコーニがピアノのバレンテ、コントラバスのエクトル・コンソーレと結成したグループ
- バングアトリオ Vanguatrio = vanguardia (前衛、フランス語のアヴァンギャルドに相当) + trio
- 「前衛」と言う割にレパートリーのほとんどは古いタンゴ
- 1973年にリリースした彼等のファーストアルバムより (ベースはこの録音ではホセ・アコスタ)
- 技巧の限りを尽くした演奏、原曲を解体、再構築した編曲
Divina ディビーナ (女神) / ネストル・マルコーニ
- ホアキン・モラ作曲、フアン・デ・ラ・カージェ作詞、1933年に作られたタンゴ・ロマンサ
- 1976年にリリースされたマルコーニ初のソロ名義のアルバムより
- この曲のメンバーはネストル・マルコーニ(bn)、キケ・ラノー(vc)、ギジェルモ・ロペス(g)、エクトル・コンソーレ(cb) の変則的な四重奏
- やはり原曲をかなりいじっているが、バングアトリオよりは落ち着いた雰囲気で室内楽的なアプローチ
- 個人的にはエドゥアルド・ロビーラの音楽に通じるような側面も感じる
Lo que vendra ロ・ケ・ベンドラ (来るべきもの) / ネストル・マルコーニ
- アストル・ピアソラ作曲
- 2008年リリースのバンドネオンソロのアルバムより
- 若い頃のスピード狂的な演奏は影を潜めているものの、やはり驚異的な技巧
- 重み、深みが加わった巨匠と呼ぶにふさわしい演奏
Tiempo cumplido ティエンポ・クンプリード (時が満ちて) / ネストル・マルコーニ
- ネストル・マルコーニ作曲
- マルコーニの代表作
- 1988年の同名のテレビドラマのテーマ曲
- 2001年のアルバムより
- 息子のレオナルド・マルコーニ (pf)、オスカル・ジウンタ (cb) のトリオに弦セクションが加わった編成での演奏
- マルコーニの音楽性が反映された堂々たる現代タンゴ
音源
この日かけた1曲目と2曲目は残念ながらサブスクにはありませんが、1曲目を含むアルバムは CD 化されていますので、手元に置きたい方はぜひ。
3、4曲目はこちらです。
2曲だけでは寂しいので2曲追加してあります。3は2と同じアルバムに収められている曲ですが、編曲がバングアトリオの時のものをそのまま使っています。4は1990年のアルバムに収録されたもので、マルコーニとオスバルド・タランティーノ (pf)、アンヘル・リドルフィ (cb) のトリオによるものです。
という訳で
何となく次の放送回が近付いてから公開するように自分のなかでは決めていたのですが、8月はお休みしてしまったせいで公開が遅れてしまいました。すみません。
さて、お知らせです。月額550円で「Marcy & Magi の Tango en Tokio」の過去アーカイブが聴き放題となる番組サポーターシステムがあります。新システムへの移行に伴い1か月のみのお試しも可能になりましたので、ぜひご検討ください。詳しくは下記をご参照ください。
次回はこれを書いている今日、2022年9月18日にホセ・コランジェロを特集します。ぜひ今回も可能な方はリアルタイムで、聞き逃した方はサポーターになってアーカイブでお聴きください。
卓球好き、音楽好きです。飲み食い好きが高じて料理もします。2024年ソニーグループ(株)を退職し、同年より(株)fcuro勤務のAIエンジニアです。アルゼンチンタンゴ等の音楽について雑誌に文章を書いたりすることもあります。
なお、当然ながら本サイトでの私の発言は私個人の見解であります。所属組織の方針や見解とは関係ありません (一応お約束)。
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