“電撃のリズム”再来 ラ・フアン・ダリエンソ (2023年2月1日夜の部 東京・上野 東京文化会館)
2020年のキンテート・グランデ公演以来コロナ禍で中断していた民音タンゴシリーズが帰ってきました。今年は2015年以来シリーズ2回目の登場、ラ・フアン・ダリエンソ!私は2月1日の東京公演夜の部に行ってきました。
運悪く仕事の都合で遅刻しての到着となり、ホールに入った時はちょうどフェルナンド・ロダスが「追憶」を歌うところ。いきなりの圧巻の歌唱と圧巻の演奏、これはやられました。
席についてからは、ただひたすら直球ど真ん中のダリエンソスタイルに身を任せます。メカニカルなフレーズを繰り出すバンドネオン、泣きのバイオリン、バチバチいうコントラバス、華麗なピアノ。これらが一体となって迫りくる強烈なビートは、テンポは速めながら決して軽くはない、というかむしろひとつひとつがガツンと重いのです。これはじっと座って聴いているのが難しいですね。踊る方ならきっとなおさらだったことでしょう。
演奏者が演奏中に掛け声をかけたり、曲が終わってから改めてサビを歌ったりするのも適度にラフな感じで良い雰囲気でした。さらにバイオリンセクションの3人はどの曲でも踊るように弾いていて、「台風」ではバンドネオンからバイオリンへつながるウェーブもあったりして、観て楽しい演奏でもありました。
そして何と言ってもフェルナンド・ロダスの歌!繊細で美しいピアニシモからノーマイクでもホール全体に響き渡るフォルテシモまでを自在に行き来しつつ、タンゴの涙も笑いもその歌声に込めた素晴らしい歌唱でした。
ダンスについては例によって漠然とした把握ですが、アクロバティックな演出を随所に散りばめつつもベーシックな動きを大切にしていたように思いました。
民音タンゴシリーズがこのような充実した内容で3年ぶりに再開できたことを、タンゴファンとして大いに喜びたいと思います。まだツアーは続きますので、残りの日程でも多くのタンゴファンを楽しませてくれることでしょう。
日時:2023年2月1日18:30〜
場所:東京・上野 東京文化会館
出演者:
- ラ・フアン・ダリエンソ
- ファクンド・ラサリ (bn, dir)
- リカルド・バダラッコ (bn)
- オスカル・ジェマ (bn)
- パブロ・ヒンスブルグ (vn)
- フアン・パブロ・クラベナ (vn)
- エミリオ・パガーノ (vn)
- アンドレス・サンダルシエロ (cb)
- パブロ・バジェ (pf)
- フェルナンド・ロダス (vo)
- ダンサー
- カルラ&ガスパル
- サブリーナ&エベル
- ルシアーナ&フェデリコ
演奏曲目:以下配布されたプログラムより (アンコールを除く)。実際には一部曲順の変更あり。
【第一部】
- これが王様だ Este es el rey (Manuel Caballero)
- パシエンシア (忍耐) Paciencia (Juan D’Arienzo, Francisco Gorrindo)
- 83のミロンガ Milonga del 83 (José Domingo Pécora, Pedro Romano)
- 追憶 (レメンブランサス) Remembranzas (Mario Melfi, Mario Battistella)
- フェリシア Felicia (Enrique Saborido)
- 7月9日 (ヌエベ・デ・フリオ) Nueve de julio (José Luis Pádula)
- 心の底から (デスデ・エル・アルマ) Desde el alma (Rosita Melo)
- もう一度会いたい (キエロ・ベルテ・ウナ・ベス・マス) Quiero verte una vez más (Mario Canaro, José María Contursi)
- 最後の盃 (ラ・ウルティマ・コパ) La última copa (Francisco Canaro, Juan Andrés Caruso)
- デレーチョ・ビエホ Derecho viejo (Edurardo Arolas)
- アイ・バ・エル・ドゥルセ Ahí va el dulce (Juan Canaro)
- エル・インテルナード (インターン医学生) El internado (Francisco Canaro)
- 笑えピエロ (リエ・パジャーソ) Ríe payaso (Virgilio Carmona, Emilio Falero)
- ホテル・ビクトリア Hotel Victoria (Feliciano Latasa)
【第二部】
- ドン・アルフレド Don Alfredo (Carlos Lazzari, Alfredo Montoya)
- セキーア (干ばつ) Sequía (Facundo Lázzari)
- シシリア―ノ Siciliano (Facundo Lázzari)
- なんと偉大な (マス・グランデ・ケ・ヌンカ) Más grande que nunca (Carlos Lazzari, Enrique Alessio)
- エル・マタンゴ (古靴) El matango (Carlos Posadas)
- クンビア・ミロンゲーラ Cumbia milonguera (Nicolás Tognola)
- 決して二度とない (ハマス・ニ・ヌンカ) Jámas ni nunca (Facundo Lázzari)
- お願いだから行って (アンダテ・ポル・ディオス) Andate por dios (Eladio Blanco, Raúl Hormaza)
- ロカ Loca (Manuel Jovés)
- 台風 (エル・ウラカン) El huracán (Edgardo Donato)
- ガジョ・シエゴ Gallo ciego (Agustín Bardi)
- パリのカナロ Canaro en París (Alejandro Scarpino, Juan Caldarella)
- ミルロ (クロウタドリ) Mirlo (Facundo Lázzari)
- カンソネータ Canzoneta (Erma Suárez, Enrique Lary)
- ドン・パシフィコ Don Pacifico (Arturo De Bassi)
- インスピラシオン Inspiración (Peregrino Paulos hijo)
【アンコール】
- ラ・プニャラーダ La puñalada (Pintín Castellanos, Celedonio Flores) ~メンバー紹介
- ラ・クンパルシータ La cumparsita (Gerardo H. Matos Rodríguez, Pascual Contursi, Enrique Maroni)
ちなみに前回の来日時 (2015年) の感想は Facebook に書きましたが友人のみへの公開でしたので、ここに貼り付けておきます。
素晴らしかったですよ~(^^)
もうダリエンソ・サウンドそのもの!フェリシアとかロカとかデレーチョ・ビエホとかもう…
歌手のフェルナンド・ロダスも声量といい表現力といい申し分ない。レメンブランサにカンソネータ、王道の歌い上げ系、感動しました。
で、絶対今日はピアソラのピの字もモダンのモの字もないはず、と思ってたら意外にもプグリエーセ・スタイルでネグラーチャ、パタ・アンチャ、スム!これがまたガツンと来る演奏でびっくり。やるなあファクンド君。
まあね、バイオリン・セクションのアラがモダンなアレンジではちょっと目立っちゃったかな、とか、アンコール1曲目はちょっとなんだかな、とか(せめて曲がいいならまだ…ねえ)、文句もない訳じゃないけど、それは些細なこと。ダリエンソの様式美をこれでもかと聴かせてくれた今回のコンサートはここ数年の民音タンゴでも屈指の内容だったと思います。
2015年2月27日の Facebook への投稿 (友人のみに公開)
今回は新しい曲であっても一貫してダリエンソスタイルからは離れることがありませんでした。ショーとしての完成度、コンセプトの明確さという点でやはり今回の方が良かったと思います。
卓球好き、音楽好きです。飲み食い好きが高じて料理もします。2024年ソニーグループ(株)を退職し、同年より(株)fcuro勤務のAIエンジニアです。アルゼンチンタンゴ等の音楽について雑誌に文章を書いたりすることもあります。
なお、当然ながら本サイトでの私の発言は私個人の見解であります。所属組織の方針や見解とは関係ありません (一応お約束)。
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