タンゴの架け橋、日亜交流ライブ① (2023年8月4日 東京・雑司が谷 エル・チョクロ)
8月4月日は雑司が谷のエル・チョクロへ。アルゼンチンから来日したピアノとバンドネオンのデュオ、アサト=パイスをゲストに迎えてのライブでした。
前半はバイオリンの近藤久美子さんとギターの福井浩気さんのデュオ。後半登場するアサト=パイスの演奏がかなり現代的なので、こちらは古め、渋めを意識したとのことで、名バイオリニストのエルビーノ・バルダーロとギター奏者2人によるTrío Víctorのレパートリーからスタート。この日の目玉はウルグアイのクラシック系バイオリン奏者カルロス・フリオ・エイスメンディが4曲だけ残したタンゴの録音から3曲を再現したものでした。エイスメンディはベーチョというニックネームで、同じウルグアイのフォルクローレ歌手アルフレド・シタローサから「ベーチョのバイオリン」という曲を捧げられた人物。シンプルなメロディの歌曲を味わい深く美しく歌う演奏でした。
後半はバンドネオンのアジェレン・パイスさんとピアノのクリスティアン・アサトさんのデュオ。7月に来日して以來、日本各地でミロンガやライブに出演してきた2人の満を持してのエル・チョクロへの登場です。既にSpotifyで2人のアルバムは何度も繰り返し聴いており、また7月16日にはコマラジの「Marcy & MagiのTango en Tokio」でインタビューして仲良くなった私ですが、全開モードでの生演奏を聴くのは初めて。個人的に非常に親しみのある1970年代のモダンタンゴに彼等もインスパイアされる部分が大きいそうで、2人とは思えない音の厚み、緩急自在な展開、高度にテクニカルなフレーズを駆け抜ける爽快感など、私にとってはど真ん中ストライクな演奏でした。加えて演奏中のかけ声や曲間のトーク (西村秀人さんの通訳付き)、「タキート・ミリタール」で客席に手拍子参加を求めるところなど、客席の盛り上げ方もさすが。楽しさと高度な音楽性が共存していました。
ラストは日亜アーティストの共演。まずはパイス=福井のデュオで「ラ・トランペーラ」。続いてアサト=パイス=近藤のトリオで「インスピラシオン」、そしてアルゼンチンのクラシック作曲家でピアソラの作曲の先生でもあったアルベルト・ヒナステラの『エスタンシア』から「マランボ」。ラストにヒナステラが来たのは意外でしたが、タンゴに拘らず良い音楽を楽しむ気持ちが伝わる熱い演奏でした。
なお、今回のライブはPaPiTa MuSiCa (西村秀人さん、谷本雅世さん) の企画でした。アサト=パイスのサポート、近藤=福井デュオへの曲の提案など、この日のライブの楽しさのかなりの部分はお二人のおかげだったと思います。感謝!
ちなみに当日はまたもや写真を全く撮っていませんでした (他の人のシャッターは押してあげたのに、しかもその人に「自分では撮り損なっちゃうんですよね、ぜひお忘れなく」と言われたのに…)。かわりに購入したアサト=パイスのCDのジャケット表と2人のサインをもらった内側を上げておきます。
「安里」の文字が見えますが、アサトさんは実は沖縄ルーツの日系4世なのです。
タンゴの架け橋、日亜交流ライブ① 近藤久美子&福井浩気、アジェレン・パイス&クリスティアン・アサト
日時:2023年8月4日
場所:東京・雑司が谷 エル・チョクロ
出演者:
- 近藤久美子 (vn) & 福井浩気 (g)
- アジェレン・パイス (bn) & クリスティアン・アサト (pf)
曲目:抜けや誤りがあるかもしれません (特に冒頭2曲は曲名失念)。お気づきの点がありましたらコメント等でお知らせ頂ければ幸いです。
【第一部】近藤=福井
- (Trío Víctorのレパートリー2曲)
- Alfonsina y el mar アルフォンシーナと海 (アリエル・ラミレス、フェリクス・ルナ)
- Griseta グリセータ (エンリケ・デルフィーノ、ホセ・ゴンサレス・カスティージョ)
- Organito de la tarde たそがれのオルガニート (カトゥロ・カスティージョ、ホセ・ゴンサレス・カスティージョ)
- Cuartito azul 青い小部屋 (マリアーノ・モーレス、マリオ・バティステーラ)
- El violín de Becho ベーチョのバイオリン (アルフレド・シタローサ)
- Bordel 1900 from La historia del tango タンゴの歴史より ボルデル1900 (アストル・ピアソラ)
【第二部】アサト=パイス
- Quejas de bandoneón バンドネオンの嘆き (フアン・デ・ディオス・フィリベルト)
- Taquito militar タキート・ミリタール (マリアーノ・モーレス)
- Ilusión de mí vida 我が人生の夢 (フェリシアーノ・ブルネリ、ノロ・ロペス)
- Toda mí vida 我が人生の全て (アニバル・トロイロ、ホセ・マリア・コントゥルシ)
- Yo soy el tango ジョ・ソイ・エル・タンゴ (ドミンゴ・フェデリコ、オメロ・エスポシト)
- Oblivion オブリビオン (アストル・ピアソラ)
- La cumparsita ラ・クンパルシータ (ヘラルド・エルナン・マトス・ロドリゲス)
- Adiós Nonino アディオス・ノニーノ (アストル・ピアソラ)
【アンコール】
パイス=福井
- La trampera ラ・トランペーラ (アニバル・トロイロ)
アサト=パイス=近藤
- Inspiración インスピラシオン (ペレグリーノ・パウロス、ルイス・ルビンステイン)
- Danza final (Malambo) from Estancia (Quatro Danzas del Ballet) バレエ組曲『エスタンシア』より終幕の踊り(マランボ) (アルベルト・ヒナステラ)
アサト=パイスの2人はYouTuberとしてもとても魅力的なコンテンツを多数公開しています。例えばこちらはタンゴ、ミロンガ、ワルツ (バルス) の3つのリズムについてのお話。テンポの良いスペイン語の喋りが楽しく、音楽も最高です。字幕をオンにすれば自動翻訳によるものながら日本語字幕も付けられますので、ぜひ一度観てみてください!
卓球好き、音楽好きです。飲み食い好きが高じて料理もします。2024年ソニーグループ(株)を退職し、同年より(株)fcuro勤務のAIエンジニアです。アルゼンチンタンゴ等の音楽について雑誌に文章を書いたりすることもあります。
なお、当然ながら本サイトでの私の発言は私個人の見解であります。所属組織の方針や見解とは関係ありません (一応お約束)。
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