ストップ・メイキング・センス 4Kレストア (2024/02/12 東京・池袋 グランドシネマサンシャイン池袋)
何と言ってもこのティーザーが最高!
私の最も好きな音楽映画のひとつ、『ストップ・メイキング・センス』の4Kレストア版が公開中!ということで、行ってきました。どうせ観るならなるべく良い画質、良い音響ということでIMAX上映されているグランドシネマサンシャイン池袋を選択、祝日振替の2月12日(月)11:45からの上映。
この映画、公開当時の1985年に吉祥寺のバウスシアターで観たのが最初です。トーキング・ヘッズのことは名前を知っているぐらいで予備知識ほぼゼロでしたが、かなりの衝撃を受けました。だいぶ経って2016年にはジョナサン・デミ監督の最新作公開記念上映を観に行き、今回が劇場鑑賞3回目となります。
殺風景な舞台に持ち込んだラジカセから流れる(という設定の?) リズムボックスの音とともにデヴィッド・バーンがギター弾き語りで歌う ”Psycho Killer” は何度観てもクール。ベースのティナ・ウェイマスが加わって歌われる ”Heaven” はこの歳になって聴くと歌詞がしみじみ染みてきます。曲ごとにクリス・フランツ、ジェリー・ハリソンと順にメンバーが加わり、その過程で舞台もどんどん組み立てられて行く、という演出は何度観てもわくわくしますし、最終的に全員が揃って演奏される ”Burning Down the House” の爆発力を目の当たりにした時には鳥肌は立つわ涙は滲むわ、もう大変。あとは踊りたい、叫びたいという気持ちを抑えつつひたすらライブに没入しました。
過去の上映での画像そのものをきっちり記憶しているわけではないので比較はできませんが、黒を基調にしつつ光を有効に使ったステージがノイズ感皆無で観られるのは4Kレストアの効果かと思います。音は、本編上映前の予告やIMAXの宣伝で大音響+サラウンドを散々聞かされたせいか、本編が始まった瞬間は一気に定位が前寄りになって「あれ?」と思いました。が、拍手に包まれるような感覚こそなかったものの、楽器の定位はクリアでバランスも良く、前にいるバンドの演奏を聴くという意味では非常に良かったと思います。
デヴィッドのパフォーマンスについては、『アメリカン・ユートピア』を観たときに下記のように書きました。
『ストップ・メイキング・センス』でのバーンって、何となく生身の人間感が薄いというか、アンドロイドみたいだと感じるんですよね。いや、ものすごい運動量でステージを走り回るフィジカルな印象も確かに強烈です。でも「サイコ・キラー」で歩き回りながらリズムの乱れにつんのめりそうになる動きとか、「ワンス・イン・ア・ライフタイム」の電撃を受けたようなアクションとか、重力の制約を離れたような浮遊感のある動き、あの有名なビッグスーツを着た姿、等々…。そして、言葉で客席に語りかけることもほとんどなく、あくまでクールに、観客とのコミュニケーションは楽曲を通じて行う、というスタイル。もちろんそれがかっこよかった訳ですが。
デイヴィッド・バーン アメリカン・ユートピア
『アメリカン・ユートピア』で観た彼の印象が多少影響して、今回は生身感が少し増した気はしますが、大筋の印象は今回も変わりません。
デヴィッド以外では、まずはティナ・ウェイマス。ベース女子の元祖のひとり。キュートです。と同時に彼女のベースがバンドのグルーヴにとても重要な役割を果たしていることが改めてよくわかりました。どこが?と言われると言葉ではうまく説明できないのですが、少なくとも彼女のベースの音なしにはトーキング・ヘッズの音は想像しにくい。それはシンセベースを両手の人差し指だけで弾いている曲であっても同じです。フレーズとタイム感、でしょうか(わかったようなことを言ってみました)。派手な速弾きとかスラップとかとは全く無縁ですが、あるべきところにあるべき音がある感じ。ブリブリなステップを踏む姿からは想像しにくい安定感。そんなこんなでデヴィッドのビッグスーツへのお着替えタイムを埋める《トムトムクラブ》のパートでは、決して上手いとは言えないボーカルを含め彼女の魅力全開です。ダンナのクリス・フランツの煽りがちょっとうるさいのはご愛嬌。
サポートを含む他のメンバーではギターのアレックス・ウィアーが大好き。とにかく彼が登場するとステージが一気に明るくなります。ファンクギターの鑑のようなキレキレのカッティングも派手なアクションもかっこ良すぎ。デヴィッドの体力の限界に挑戦するような動きに軽く付き合えちゃう感じもすごいです。
バンド全体の一体感、グルーヴ感と、知性、美術的センスが一体になったステージ。そのステージに極力フォーカスして余計なアングルや余計なエピソードを一切差し挟まなかったジョナサン・デミ監督の映像の見事さ。やはり音楽映画の最高傑作であることに間違いない、という認識を再確認した今回の劇場鑑賞でした。
最後に、興味深かった記事のリンクを貼っておきます。
この手の映画はいつ終わるかわからないので、気になった方はぜひ早めに観に行ってください。パッケージソフトや配信でも観られますが、いずれも4Kレストアの前に出たものですし、何より劇場の大きなスクリーンと大音響で観るのは全然違う体験です。
…え!スタンディング?声出しOK?
そわそわそわ…
卓球好き、音楽好きです。飲み食い好きが高じて料理もします。2024年ソニーグループ(株)を退職し、同年より(株)fcuro勤務のAIエンジニアです。アルゼンチンタンゴ等の音楽について雑誌に文章を書いたりすることもあります。
なお、当然ながら本サイトでの私の発言は私個人の見解であります。所属組織の方針や見解とは関係ありません (一応お約束)。
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