鬼怒無月キンテート (2024/07/24 東京・新宿PIT INN)

鬼怒無月さんの毎年恒例&還暦記念 新宿PIT INN 3days、2日目の鬼怒無月+Coba DUOに続いて3日目はアルゼンチンタンゴの鬼怒無月キンテート!

この日はキンテート (五重奏団) ですのでステージ上も前日よりはだいぶ混み合ってます。

鬼怒さんのタンゴへの愛に溢れるライブでした。ご本人は「タンゴに関しては素人」と言っていますが、小松亮太さんのグループに参加するようになったのが1990年代の後半ですので、実際には既に25年以上タンゴに関わり続けていることになります。一方で「素人」を自任する人が日本のタンゴの第一線で活躍するミュージシャンを集めたバンドを率いていることが、何らかの新しい反応を引き出している面もあるかと思います。「タンゴはプログレです。僕が好きな音楽だからそうなんです。」という断定も清々しい。

演奏された曲は、アンコール含め17曲中5曲がピアノの熊田洋さんの作品、5曲がアストル・ピアソラの作品、5曲がタンゴのスタンダード、そしてバイオリンの近藤久美子さんとコントラバスの西嶋徹さんの曲が1曲ずつ。このうち少なくともタンゴのスタンダードについては熊田さんの編曲なので、合わせて10曲以上が熊田さんワールドの楽曲ということになります。そのどれもがタンゴの味をしっかりと持っていて、なおかつ熊田さんならではのユーモアや狂気も潜んでいて、日本に熊田さんがいてタンゴに関わってくれて本当によかった、と思うことしきりです。

1990年代の終わりから2000年ごろにかけて、小松亮太&ザ・タンギスツ、エル・タンゴ・ビーボ (熊田さんとコントラバスの東谷健司さんのデュオ)、キンテート・オセイロ (近藤久美子さんが率いた幻の?五重奏団) などのライブで聴いた楽曲も多く、個人的には懐かしい気持ちと時を経て聴くことによる新鮮な気持ちでいっぱいでした。近藤さんの「ニョン」(鹿児島弁で「アホ」を意味する語をタイトルに据えた曲) を久しぶりに聴けたのは嬉しかった!

第二部で演奏されたカルロス・ガルデルの「下り坂」では演奏前に鬼怒さんが歌詞を朗読。還暦を迎えた鬼怒さんの心境にも響くものがあるそうで、その後の演奏はとりわけ心に染み入るものがありました。そういえば他の楽曲でも、以前ならもっとここでがーっと行ったのではないか、という箇所で敢えてテンポも音圧も抑え気味の表現をしているように感じる部分があり、でもそれが音楽の説得力をより増していたようにも思います。決して老成したとか枯れたとかではなく、むしろ濃密さを伴う円熟味、でしょうか。

この先もますます楽しみになるライブでした。

鬼怒無月キンテート (鬼怒無月 新宿PIT INN飛び石3days 3日目)

日時:2024年7月24日 19:30~

場所:東京・新宿PIT INN

出演者:

曲目:(M=作曲、L=作詞)

【第一部】

  1. Agua verde アグアベルデ (M: 熊田洋)
  2. Amurado アムラード (M: Pedro Laurenz, Pedro Maffia, L: José De Grandis)
  3. El arranque エル・アランケ (M: Julio De Caro, L: Mario César Gomila)
  4. Loca de amor ロカ・デ・アモール (M: Pablo Vázquez, L: Ricardo Podestá)
  5. La callesita ラ・カジェシータ (M: 熊田洋)
  6. Glicina en cielo グリシーナ・エン・シエロ (M: 熊田洋)
  7. Jeanne y Paul ジャンヌとポール (M: Astor Piazzolla)
  8. Retrato de Alfredo Gobbi アルフレッド・ゴビの肖像 (M: Astor Piazzolla)

【第二部】

  1. ニョン (M: 近藤久美子)
  2. Realimentación リアリメンタシオン (M: 西嶋徹)
  3. ¿Como? コモ? (M: 熊田洋)
  4. Cuesta abajo 下り坂 (M: Carlos Gardel, L: Alfredo Le Pera)
  5. Duo de amor デュオ・デ・アモール (M: Astor Piazzolla)
  6. Revolucionario 革命家 (M: Astor Piazzolla)
  7. Canción de las venusinas 金星の女たちの歌 (M: Astor Piazzolla, L: Horacio Ferrer)
  8. Rojo y negro 赤と黒 (M: 熊田洋)

【アンコール】

  1. Canaro en París パリのカナロ (M: Juan Caldarella, Alejandro Scarpino, L: José Scarpino)

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