Arcana Mundi – Vazquez x Yoshigaki project (2024/11/13 東京・新宿 PIT INN)
アルゼンチンのパーカッショニスト、サンティアゴ・バスケスSantiago Vazquezが来日!芳垣安洋さんとのプロジェクト “Arcana Mundi” として現在日本ツアー中です。
新宿PIT INNでのツアー初日ライブに行ってきました。
この日は豪華メンバーのスペシャルバンド。バスケスというと独自のハンドサインシステムが有名で、2018年に来日した際のPIT INNでのハンドサインによるセッションがものすごく面白かったので、勝手にこの日もそれでやるのかと思い込んでいたら、冒頭で芳垣さんが「今日はハンドサインはやりません」と宣言。えー…
しかし!始まってみればめちゃめちゃ面白い内容でした。 第一部はサンティアゴ・バスケス 、芳垣安洋 、岡部洋一 (per)、高良久美子 (vib, per) の4人を固定メンバーとして、勝井祐二 (vn)、類家心平 (tp)、ナスノミツル (b)、 大友良英 (g) が1人ずつ入れ替わりで参加。これが完全に四者四様で、それぞれ全く違う展開。
勝井祐二セッションはサンティアゴのムビラ (アフリカの親指ピアノ) からスタートし、大らかな響きから厚みと熱さをどんどん増していくような展開。この日の勝井さんは第二部も含めてあまりアグレッシブなソロはなく、空間に彩りを与えるような演奏だった印象。その抑えた感じがまたかっこいいんだけど。類家新平セッションは一転インダストリアルでフリーな世界に突入。途中からタイトなビートへと変貌し、エレクトリック・マイルスを彷彿とさせるような響きに。最後は高速ツービートで締めて、個人的にはこの日一番刺激的だったセット。ナスノミツル・セッションはベース・シンセサイザーが創る音の壁が押し寄せ、そこからさまざまなリズムへと展開。ワイニョっぽいリズムが聞こえたのはこのセットだったかな?大友良英セッションはフィードバックを自在に操るノイジーなギターをフィーチャーしつつ、全体としては太めのビートで重心低く。こんな感じでどれもすさまじく、聴いていてニヤニヤしてしまったり口あんぐりになってしまったり。
第二部は全員参加。冒頭は全員が鳥の鳴き声のような音を出して、森の中のような雰囲気でスタート。これまたすさまじくも目眩く展開で、もはやどの曲がどうとかあまり覚えていないんだけど、とにかく聴いてて勝手に身体が動いてしまうようなリズムの嵐。ひたすら楽しい。第二部ラストは客席にお題を求めたら「世界平和」との声が上がり、芳垣さんは「俺たちに表現できるんだろうか」等とつぶやきながらも演奏。決して甘く平穏な平和ではなく多分に混沌も交えつつも、壮大な世界を描いて終了。
ステージからメンバーが去る中、岡部さんだけ自席に残り、アンコールを求める客を煽るアクション。芳垣さんが出てきて「今日はとても気持ちよく終われたのでアンコールはなしにしようってみんなで言ってたのに、なんか煽ってるヤツがいる」、それに対して岡部さんが「だって戻るの面倒じゃん」。芳垣さんの「岡部とは30年以上の付き合いだけど、長年一緒にやるとこんなに気が合わなくなるものなのか」の言葉で一同爆笑してから結局アンコールへ。コンパクトながら密度の濃い演奏で締めくくられました。
全体を通して、サンティアゴは多様な楽器を操り、時にボイスも交えて大活躍。彼自身が突出して目立つ訳ではないけど、彼の存在と動きがメンバーに波及してどんどん音楽が変貌していく様子は観ているこちらも惹きつけられます。リズム面では、4拍子系のリズムで8分音符3個単位のアクセントが出てきて表になったり裏になったりしているうちに6/8拍子に遷移したり、その逆で6/8拍子に8分音符2個単位のアクセントを乗っけてエイトビートに遷移したり、というシームレスな移り変わりにゾクゾク。アンコール前の芳垣さんの言葉通り、とても気持ちの良いライブでした。
Arcana Mundi – Vazquez x Yoshigaki project
日時:2024年11月13日 19:30~
場所:東京・新宿 PIT INN
出演者:
卓球好き、音楽好きです。飲み食い好きが高じて料理もします。2024年ソニーグループ(株)を退職し、同年より(株)fcuro勤務のAIエンジニアです。アルゼンチンタンゴ等の音楽について雑誌に文章を書いたりすることもあります。
なお、当然ながら本サイトでの私の発言は私個人の見解であります。所属組織の方針や見解とは関係ありません (一応お約束)。
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