The Piano Era 2024 Day 2 (2024/11/24 東京・めぐろパーシモンホール)

前日のスペイン舞踏に続いてこの日もコンサート。2日間にわたって様々なピアノ・ミュージックに焦点を当てるザ・ピアノエラの2日目に行ってきました。

この日の出演者は、まずトルコからビュシュラ・カイクチャ。アップライトピアノとシンセサイザーのセッティングで、最初にシンセサイザーでベースとなる響きを作ってその上でピアノを奏でるというスタイルでした。曲自体はシンプルなフレーズが少しずつ形を変えながら繰り返されるという形を取るものがほとんど。彼女はピアニスト、作曲家であると同時に建築家でもあるそうで、確かに構造が明確にデザインされている印象を受けます。それでいて無機質さや単調さを感じないのは、モチーフとなるメロディに感じられるオリエンタルな感覚、そして内部奏法によるミュートやプリペアードピアノ (弦を覆う形で垂らされた布に何か仕込まれていたらしい) によるノイズなど、ピアノの音色とは異質なものが共存することの効果かと思います。暗めの舞台に演奏者が浮かび上がる照明も美しく、とても印象的な演奏でした。

次は日本の江崎文武。実は彼のことは全く知らなかったのですが、WONKやmillennium paradeに参加している人なのだそうですね。そういう普段の活動フィールドと、ヤマハのアップライトのトランスアコースティックピアノ、シンセサイザー、PC、電子ピアノ、という当日のセットアップから、かなり尖った音楽をやるのかと勝手に想像していました。しかし実際には思いのほかクラシカルで抒情的、耽美的な印象。コードもメロディも古典的なスタイルの範疇で、今時の人ならこの路線で書いてもどこかにわざと綻びや逸脱を入れそうなところ、そういう要素がほぼ聞こえません (実は私が気づいていなかっただけかもしれませんが)。これを今やるのは逆に大きな冒険のようにも思われました。もっとも、私には今一つ響くものがなかったというのが正直なところではあります。

ラスト、アルゼンチンのカルロス・アギーレは、グランドピアノが1台、その傍らにギター、というセットアップ。極上でした。彼の風貌そのままの優しさに満ちた音が後から後から溢れ出てくる演奏。アルゼンチンのフォルクローレをベースとしつつ、川の澄んだ水や湿った土の香り、豊かな緑の中を吹く風を思わせる音楽。ボーカルを取る曲も多く、柔らかで言葉を大切にした歌声が沁みわたります。インスト曲でも弾きながらハミングしているのがかすかに聞こえ、それもまた曲の一部になっていました。ギターに持ち替えて歌った “Pasarero” の美しさは涙が出そう。終盤の “Milonga gris” は中盤にちょっとアグレッシブな感触のパートも挿し挟みながら一気に弾き切る見事な演奏でした。アンコールでは大好きな “Los tres deseos de siempre” (永遠の三つの願い)。客席にコールアンドレスポンスの形でハミングによる参加を促し (アギーレさんは声域が高いのでちょっと難儀)、最後は同じ音の継続するハミングを通奏音としてワンフレーズを演奏して締めくくりました。ホール内のすべての方とともに彼の音楽の一部になれたことが印象深く、心に残るコンサートとなりました。

The Piano Era 2024 Day 2

日時:2024年11月24日(日) 16:30~

場所:東京・めぐろパーシモンホール 大ホール

出演者:

曲目はフォローしきれなかったので今回は省略です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です