鬼怒無月キンテート (2025/02/08 東京・雑司が谷エル・チョクロ)
鬼怒無月は「自分は元々ロックの人間で、タンゴについては知らないことばかり」と言う。しかし、というかそれゆえというか、彼は本当に真摯にタンゴと向き合っている。自身の率いるタンゴ・キンテート (五重奏団) も活動開始から既に10年以上 (私が最初に観たのは2013年12月だった)。そのキンテートによるこの日のライブも、メンバー各人の歌心、全員が創り出すリズムのうねりと重さがぐいぐい迫ってくるものだった。
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演奏された曲目はピアノの熊田洋の作品とアストル・ピアソラの作品を中心に、近藤久美子、西嶋徹の作品も1曲ずつ、そしてスタンダードのタンゴ。前回聴いたときと同様今回も熊田ワールド全開で嬉し楽し。ピアソラ作品に関しては、映画『サンチャゴに雨が降る』のサウンドトラックからの「ラ・メゾン・ド・モニーク」やアメリータ・バルタールが歌った「金星の女たちの歌」など、あまり知られていないがとても美しい曲を取り上げているのが素晴らしい (本ページ一番下の「おまけ」も参照されたい)。
今年はライブの回数を増やすそうで、4月10日には再度エル・チョクロに登場予定。さらに5月には西日本中心のツアーも予定されているとのこと。普段聴けない方もぜひこの機会に。
鬼怒無月キンテート
日時:2025年2月8日(土) 15:00~
場所:東京・雑司が谷エル・チョクロ
出演者:
曲目:(M=作曲、L=作詞)
【第一部】
- Agua verde アグアベルデ (M: 熊田洋)
- El arranque エル・アランケ (M: Julio De Caro, L: Mario César Gomila)
- Betochaplica ベトチャプリカ (M: 熊田洋)
- Glicina en cielo グリシーナ・エン・シエロ (M: 熊田洋)
- La callesita ラ・カジェシータ (M: 熊田洋)
- Cuesta abajo 下り坂 (M: Carlos Gardel, L: Alfredo Le Pera)
- La maison de Monique ラ・メゾン・ド・モニーク (M: Astor Piazzolla)
- Invierno porteño ブエノスアイレスの冬 (M: Astor Piazzolla)
【第二部】
- ニョン (M: 近藤久美子)
- Realimentación リアリメンタシオン (M: 西嶋徹)
- ¿Como? コモ? (M: 熊田洋)
- Amurado アムラード (M: Pedro Laurenz, Pedro Maffia, L: José De Grandis) *
- Duo de amor デュオ・デ・アモール (M: Astor Piazzolla)
- Revolucionario 革命家 (M: Astor Piazzolla)
- Canción de las venusinas 金星の女たちの歌 (M: Astor Piazzolla, L: Horacio Ferrer)
- Rojo y negro 赤と黒 (M: 熊田洋)
【アンコール】
- Canaro en París パリのカナロ (M: Juan Caldarella, Alejandro Scarpino, L: José Scarpino)
おまけ
「ラ・メゾン・ド・モニーク」は、実は元々は「Olhos de resaca (二日酔いの眼)」というタイトルの歌の曲 (作詞はブラジルのジェラルド・カルネイロ)。改題・インスト化してサントラに使われたということらしい。
「金星の女たち」のアメリータ・バルタールによる録音は1971年リリースだが、1970年にピアソラのバンドネオンとフェレールの朗読で先に録音されている (今回のライブの時に北村聡が言及)。もっとも、あくまで歌のために書かれた詞を作詞者自ら朗読した、という位置づけだろう。いずれにしろ地味だがとても味わい深いのでぜひお聴きいただきたい。
卓球好き、音楽好きです。飲み食い好きが高じて料理もします。2024年ソニーグループ(株)を退職し、同年より(株)fcuro勤務のAIエンジニアです。アルゼンチンタンゴ等の音楽について雑誌に文章を書いたりすることもあります。
なお、当然ながら本サイトでの私の発言は私個人の見解であります。所属組織の方針や見解とは関係ありません (一応お約束)。
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