タルカス&展覧会の絵 / 黒田亜樹
先に懺悔しておきましょう。私は熱心な ELP ファンではありませんでした。ついでにピアノ版「展覧会の絵」を通して聴いたのも最近になってからのことです。従って以下は、オリジナルに対してさほど思い入れがなかった人の書いた文章としてお読みください。
…という逃げ口上はさておき、ピアニストの黒田亜樹さんの最新アルバムです。録音した、という話があってから約1年、ずいぶん待たされました。でも、ようやく聴いたこの CD、待った甲斐があった!と言える内容でした。
アルバム・タイトルは、プログレ好きには言わずと知れた ELP (エマーソン、レイク&パーマー) の名作「タルカス」と、これまた ELP がカバーしたムソルグスキーの「展覧会の絵」のカップリング。とはいえ、単純に ELP の延長上の音を期待すると裏切られます。
「タルカス」は、ピアノ+弦楽四重奏+ギター+パーカッションによる演奏で、本来の「タルカス」の楽曲の合間に、編曲のマウリツィオ・ピサーティによるオリジナル・パートが挿入されている、という構成。従って、タイトルも、ピサーティ自身の一連のプロジェクトの名が付加されて「ゾーン=タルカス」となっています。編曲、演奏は純クラシック的なアプローチに貫かれており、特に原曲のブルース的な成分やファンキーな要素はほとんど除去されていますが、この曲から抽出された緊迫感や狂気はより純粋な形で提示され、聴く者を圧倒します。強力無比なピアノのタッチに加え、不穏な空気をかきたてるようなガット・ギターや、グロッケン(かな?とにかく鉄琴系の楽器) の音が効果的です。
そして「展覧会の絵」。こちらはもう、ただ聴きほれるしかないです。基本的にゆったりと間を取った演奏で、特に終盤「バーバ・ヤガーの小屋」の盛り上がりを経て至る「キエフの大門」の荘厳な響きは、ただただ素晴らしいの一言。
ところでこのアルバム、デザイン面も要注目です。アルバム・コンセプトに基いたデザインが秀逸のジャケット (しかもデジパック仕様) に加え、ライナーとディスクのレーベル面も黒地に金で統一されており、こだわりとセンスが感じられます。
- タルカス&展覧会の絵
- 黒田亜樹 (ピアノ)
- ビクターエンタテインメント、VICC 60391
卓球好き、音楽好きです。飲み食い好きが高じて料理もします。2024年ソニーグループ(株)を退職し、同年より(株)fcuro勤務のAIエンジニアです。アルゼンチンタンゴ等の音楽について雑誌に文章を書いたりすることもあります。
なお、当然ながら本サイトでの私の発言は私個人の見解であります。所属組織の方針や見解とは関係ありません (一応お約束)。
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やっぱ 黒田は スゴイ !!はんぱや ないです ね
大幅に反応遅れてすみません。はい、ホントにスゴイです。