憂鬱と官能を教えた学校〜【バークリー・メソッド】によって俯瞰される20世紀商業音楽史 / 菊地成孔、大谷能生

いやー、やっぱり本当に面白かった。
[2005-08-08]に書いたことをくりかえすと、バークリー・メソッドの内容そのものに実際に立ち入りながら、音楽史を俯瞰する、という試みで、アテネ・フランセ映画美学校で2ヶ月にわたって行われた講義の講義録である。

 ここにいるほとんどの方は、バークリー音楽院って名前を聞いたことがあると思います。バークリー音楽院ってのは、アメリカのボストンにある、商業音楽に関する教育を行う学校です。(中略)
 で、その学校の代名詞、というかな。そこで教える、主に和声進行と旋律の関係についてを体系化したきわめて記号的な音楽教育の方法。これが世に言う「バークリー・メソッド」です。
(pp. 012)

中高生のころ、ギター雑誌の特集記事なんかでコード進行に関する理論をかじってみたりしたものの、結局ぜーーんぜんわかんなかったのが (まあ私の努力が足りなかった事実は否めないのとして)、なんかこの本で基本的な考え方はわかっちゃったような気がするぞ (あくまで基本だけね)。
あ、いや、この本の本当の魅力はそういう実学的な理解を深められることにあるのではない。バッハの時代に成立した12音平均律が土台となった和声の機能的分類、ドミナント・モーションの持つ推進力によるコーダルな音楽、そこからのアンチ・テーゼとしてのモーダルな音楽、律動 (リズム) の概念の変遷、などといったことが、常に歴史の流れの中での位置づけ、他の世界観との対比による位置づけと共に解説されているのだ。
本当にエキサイティングな読書体験。

  • 憂鬱と官能を教えた学校 — 【バークリー・メソッド】によって俯瞰される20世紀商業音楽史
  • 菊地成孔、大谷能生
  • 河出書房新社
  • ISBN4-309-26780-7

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