東京オリンピックにまつわる相変わらずのもやもや

昨夜の閉会式を以て東京オリンピックが閉幕しました。あの閉会式、正直言ってつまらなかったです。スカパラが出て来て「お!」と思いましたが、なんで懐メロ、シャンソン、ベートーベンなのか。まあ今の日本らしいのかもしれません (その後は集中力を失ってしまい、ちゃんと観てません)。でもとりあえず、大きなトラブルもなく全日程を終えられたことは良かったと思います。

多分日本人のメンタリティ的には「終わり良ければ全て良し」で、事前にいろいろ言われていたことに対して今さら蒸し返すのは不粋だと言われるでしょう。「頑張ったアスリート達に対して失礼だ」とも言われるかもしれません。でもやっぱり手放しに今回のオリンピック全てを肯定するのは私には難しい。相変わらずもやもやが続きます。

まず、オリンピックの開催そのものの功罪について。新型コロナで外出がままならない状況で家にいながらたくさんの競技を観戦できたことは、多くの人にとっては一時の心の支えになったことでしょう。実際に人出を増やさない効果もあったかもしれません。現在の感染者数はオリンピック開催前に感染した方がほとんどと思われますので、少なくとも今の感染者の増加はオリンピックのせいではないでしょう (その点についてはこれからの感染者数の動向を見守りたいです)。一方で、オリンピックのために貴重な医療リソースが割かれたこともまた事実です。ここまで状況が逼迫していない時なら大きな問題にはならなかったと思いますが、市中では医療崩壊の危機が叫ばれ、医療機関の現場から悲鳴が聞こえてくる中、人的、物理的なリソースがオリンピックのために一定数確保されたことは負の影響だと思います。

開催の功罪とは別に、実際に開催されてしまったんだからアスリートを応援するのは自然なことではないか、という声もあります (多分かなり大きい)。私も卓球の混合ダブルスの優勝には鳥肌が立ち、以後も卓球を中心にいくつかの競技をテレビ観戦しました。観て楽しかったし、シンプルにスポーツは素晴らしいとも思います。
でも、私がしていたこの行為は果たして何なのでしょうか。応援?確かにしてました。でも酷暑に苛まれ、ノーマスクで他人と対峙し、競技によっては直接人とコンタクトするというそれなりのリスクを負ったアスリートを、冷房の利いた人との接触機会のない安全な部屋で眺めて楽しむというのは、何だか後ろめたさも感じます。「アスリートファースト」「感動をありがとう」「元気をもらえました」等々の言葉が白々しく不遜にすら聞こえてしまう。別に今回のオリンピックに限らずスポーツ観戦というのはそういうものなのでしょうけど、特に今回はアスリートと観戦者の非対称性を感じました。

アスリート自身についてはどうでしよう。最近いつも対比として考えるのは、音楽等のアーティストのことです。彼等は自らの表現を行うために、相当な犠牲を払いながら周到な準備を重ねてその機会を確保しており、なおかついとも簡単にその機会を奪われるようなことも起きています。アスリートがオリンピックに向けてそのような意識がなかったとは決して言いませんが、一方でアスリートは余計なことに惑わされず競技に専念するべきだ、という考え方もあります。実際オリンピック前には開催の是非について「自分にはどうしようもない」というような発言をしたアスリートもいましたし、それを多くの国民が支持していたように思います。そしてオリンピックという場は多くの反対を受けながらも確保されました。他の分野から見ればすごく優遇された立場と言えるでしょう。多分、アーティストも余計なことを考えずに表現に専念できた方が楽なはずです (それが本当に良いことなのかは別として)。でもそれができないのは何故か。アートとスポーツにはどのような違いがあるのか。アート以外の分野はどうか。スポーツの中でもオリンピック以外のスポーツイベントはどうか…。

結局相変わらず結論はありません。ただひとつだけ望みたいのは、このような形で開催されたオリンピックに関わったアスリートや競技団体やその他関係者の方が、今度は他の何かを守ったり尊重したりすることに力を割いて欲しいという事です。とりあえず直近で予定されているパラリンピックについて、多分開催中止の声がまた上がります。上に書いたような医療リソースの観点からは私も開催すべきか疑問に思いますし、政界、財界からの開催に向けたバックアップもオリンピックほど強くはないでしょう。でもアスリート他関係者は、もしこのオリンピックの開催が正しかったと思うなら、全力でパラリンピックの開催を後押しして欲しい。オリンピックで優遇された人達がそうすることで、巡りめぐっていろいろな立場の人が尊重されるようになって欲しいと思います。

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