Viaje de Tango vol.16 アティリオ・スタンポーネ (黄金時代を経験した現代の巨匠シリーズ)
2022年6月26日に放送された「Marcy & Magi の Tango en Tokio」の中のコーナー「吉村俊司の Viaje de Tango」の事前メモ公開です。この回から新シリーズ「黄金時代を経験した現代の巨匠」をスタートしました。最初に取り上げたのはアティリオ・スタンポーネ。
目次
アティリオ・スタンポーネ Atilio Stampone 略歴
- 1926年7月1日 ブエノスアイレス生まれ
- 今年に96歳を迎える!
- 10代の頃からいくつかの楽団で演奏
- 1942年 バンドネオン奏者ペドロ・マフィアがキャバレー《ティビダボ》での演奏にスタンポーネを迎える
- 1946年 アストル・ピアソラ楽団の旗揚げに参加
- 1950年 奨学金を得てイタリアに留学、カルロ・ゼッキに師事
- 1952年 バンドネオン奏者レオポルド・フェデリコと連名の楽団を結成、程なくフェデリコはベルグラーノ放送の専属オーケストラの指揮者となり、スタンポーネは自身の楽団を持つ
- 1955年 アストル・ピアソラの《ブエノスアイレス八重奏団》に参加 (1958年の解散まで)
- 以後自身の楽団を率いて活動
- 1964年 ナイトクラブ《カーニョ14 (カトルセ)》を開く (元サッカー選手のリナルド・マルティーノ、俳優のペドロ・アレアンドロとの共同経営)
- 店は1986年まで続いた (スタンポーネは1982年まで関与)
- オープン時の出演者はアニバル・トロイロ=ロベルト・グレーラ四重奏団、エンリケ・フランチーニとエクトル・スタンポーニのデュオ、オラシオ・サルガンとウバルド・デ・リオの四重奏団、等々
- 映画音楽やダンス音楽の作曲でも活躍
- 1985年にアカデミー外国語映画賞を受賞した『オフィシャル・ストーリー』(La historia offical) の音楽も担当
- 2000年 国立《フアン・デ・ディオス・フィリベルト》アルゼンチン音楽オーケストラ指揮者 (2015年まで)
- 2009年 アルゼンチン作詞家作曲家協会 SADAIC 会長 (2021年まで)
- 2011年に多くのゲストミュージシャンを迎えてアルバムを録音
- 2017年のインタビューで、「もう一度真面目にピアノを勉強しようと思っている。ラヴェル、ドビュッシー、ショパン、リストを弾くんだ。」と語っている
楽曲
Romance de tango タンゴのロマンス / アティリオ・スタンポーネ楽団
- スタンポーネの自作、1964年リリースのアルバムより
- この時点では現代的な普通のオルケスタ、といった印象 (もちろんレベルは非常に高い)
- 第一バイオリンはレイナルド・ニチェーレ、第一バンドネオンはエドゥアルド・ロビーラ
- ちなみに「タンゴとロマンス」(Romance y tango) という曲もあって、しかも作曲者がエクトル・スタンポーニなので紛らわしい
Orgullo criollo 南米人の誇り / アストル・ピアソラ楽団
- フリオ・デ・カロ、ペドロ・ラウレンス作曲
- 1946年10月7日録音なので、まだ20歳のスタンポーネのピアノが聴ける
- 次のスタンポーネ楽団との比較用ファレンスとして
Orgullo criollo 南米人の誇り / アティリオ・スタンポーネ楽団
- 1972年のアルバム “Concepto” より
- がらりと作風が変わり、この曲はヴィヴァルディとジャズとタンゴのごちゃ混ぜ!?
- バンドネオンはオスバルド・モンテス、印象的なギターはルベン・ルイス
Decarissimo デカリシモ / アティリオ・スタンポーネ楽団
- アストル・ピアソラ作曲
- 同じアルバムより
- やはり混沌としつつ面白いアレンジ
- ピアソラは後にスタンポーネの音楽を「アティリオ・スタンポーネはヴィヴァルディと何だかんだのミックスで、インチキな音楽だ」と評した (1982年のインタビューでの発言なので、概ね1970年代の彼の活動を指していると見て良さそう)
Vida mía 我が人生の君 / アティリオ・スタンポーネ楽団
- オスバルド・フレセド作曲、エミリオ・フレセド作詞
- 1970年代後半 (77~8年頃?) のライブ録音
- バイオリンソリストはエンリケ・フランチーニ
- 映画音楽のようにゴージャス、途中に5拍子も入る
音源
いつものように Spotify のプレイリストにまとめました。
オマケで2曲追加してあります。6「シルバンド」は1975年録音。そして7はスタンポーネ作のおそらく最大のヒット曲「アフィーチェス」(ポスター) で、歌っているのはロベルト・ゴジェネチェ。
という訳で
改めてスタンポーネの経歴の凄さ、音楽の面白さを再認識した回でした。楽しんで頂けたでしょうか。
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次回はこれを書いている今日この後、2022年7月17日の正午からです。バンドネオン奏者ネストル・マルコーニを特集します。運良く放送前にこれを見たあなた、とてもラッキーですね!ぜひ正午にはコマラジをお聴きください。放送後にこれを見たあなた、幸いにも上述のサポーター制度を使えばアーカイブを聴けます。ぜひご検討を!(最後は怪しい勧誘になってしまった…)
卓球好き、音楽好きです。飲み食い好きが高じて料理もします。2024年ソニーグループ(株)を退職し、同年より(株)fcuro勤務のAIエンジニアです。アルゼンチンタンゴ等の音楽について雑誌に文章を書いたりすることもあります。
なお、当然ながら本サイトでの私の発言は私個人の見解であります。所属組織の方針や見解とは関係ありません (一応お約束)。
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