CHICA プロデュース企画 vol.1 「東京ピアソラランド 番外編」(2022年9月2日 東京・渋谷 JZ Brat)
前週金曜日以来三度目の JZ Brat は、バイオリン奏者 CHICA さんのプロデュースによるピアソラ作品演奏企画。昨年久しぶりに復活した「東京ピアソラランド」 (→ 2021年に行ったライブ、コンサート)の復活後2回目にして「番外編」でした。
お店に着いて案内された席は…
まさかの最前列!観る方が緊張しちゃいます(笑)
さて、元々「東京ピアソラランド」は CHICA さんとピアノの黒田亜樹さん (クロアキさん) によるプロジェクトですが、今回はスケジュールの都合でクロアキさんは後半での出演のみ。それ故「番外編」としたようで、スタートは、バイオリン CHICA さん、会田桃子さん、ビオラ御法川雄矢さん、チェロ江口心一さんの弦楽四重奏による演奏でした。過去に CHICA さんが率いた O, K, Strings Quartet や 555 (Five Go Go) Quartet での演奏も思い出しつつ、絶妙に弦楽四重奏化されたピアソラの楽曲を楽しみました。格調高く美しい「夢」に続く「イマヘネス」は今回のレパートリーの中では最も古いアレンジで、ビオラの三連符による上行・下行フレーズが印象的。「リベルタンゴ」は江口さんのチェロがたっぷりフィーチャーされ、これまで聴いたことのあるどのリベルタンゴにも似ていない、でも紛れもないリベルタンゴでした。
バンドネオン奏者・北村聡さんをゲストに迎えて演奏したのは、まず『ファイブ・タンゴ・センセーションズ』から「愛」と「不安」。凛とした厳粛な空気が感じられました。
続いてバイオリンの会田桃子さんの歌で1曲、北村さんのバンドネオンのみの伴奏で「チキリン・デ・バチン」。会田さんの歌はバイオリン同様定評ありますが、この日も胸に迫るものがありました。
(この日は写真撮影が許可されていました)
他のメンバーが戻って弦楽四重奏とバンドネオンによる「アディオス・ノニーノ」。ピアソラ自身によるオーケストラ版がベースでしょうか。力強くも厳粛な響きでした。
一旦北村さんは下がって弦楽四重奏で「オブリビオン」。CHICA さんはウクライナを想いつつレクイエムのような気持ちで編曲したとのことで、映画「ひまわり」のラストが見えたような気がしました。
そしてようやくクロアキさん登場。彼女もウクライナを想って何か演奏せずにはいられなかったそうで、準備してきたのはウクライナ出身の作曲家ニコライ・カプースチンのピアノ五重奏曲でした。ピアソラとは無関係ながらこれがこの日の白眉!ジャズ的な要素を多分に含んだ楽曲は楽しさとスリルに溢れ、聴いていて思わず身体が動きます。私自身はカプースチンについては辛うじて名前を聞いたことがある程度でしたが、いっぺんにファンになりました。
そのあとは北村さんも再び合流。CHICA さんの「この後は指がちぎれるような曲が続きますよ!」との言葉は誇張ではなく、「タンガータ」「アレグロ・タンガービレ」「革命家」さらにアンコールの「現実との三分間」と畳み掛けるように激しい演奏が続きました。いや、凄かった!
タンゴ的にはコントラバスを入れるのが定石であるところ、あくまで弦楽四重奏を基本としたプログラムを通した CHICA さん。その拘りを自らの編曲で具現化したところはさすがですし、低音の不足を感じさせない江口さんのチェロ、御法川さんのビオラも素晴らしかったです。
そんな訳で、再始動した「東京ピアソラランド」の動向からますます目が離せなくなりました。今後もますます楽しみです。
CHICA プロデュース企画 vol.1 「東京ピアソラランド 番外編」
日時:2022年9月2日 (金) 20:00~ (2ステージ入れ替え制の2ステージ目)
場所:東京・渋谷 JZ Brat Sound of Tokyo
出演者:
ゲスト
曲目:
- Los sueños 夢 (映画『スール/その先は…愛』より) (アストル・ピアソラ) SQ
- Imágenes イマヘネス (アストル・ピアソラ) SQ
- Libertango リベルタンゴ (アストル・ピアソラ) SQ
- Excerpt from “Five tango sensations” 『ファイブ・タンゴ・センセーションズ』より (アストル・ピアソラ) SQ + bn
- Loving 愛
- Anxiety 不安
- Chiquilin de Bachin チキリン・デ・バチン (アストル・ピアソラ、オラシオ・フェレール) vo + bn
- Adiós Nonino アディオス・ノニーノ (アストル・ピアソラ) SQ + bn
- Oblivion オブリビオン (アストル・ピアソラ) SQ
- Quintet for two violins, viola, violoncello and piano: 4th movement 2つのバイオリン、ビオラ、チェロとピアノのための五重奏曲 (ニコライ・カプースチン) SQ + pf
- Tangata タンガータ (アストル・ピアソラ) SQ + pf + bn
- Allegro tangabile アレグロ・タンガービレ (オペリータ『ブエノスアイレスのマリア』より) (アストル・ピアソラ) SQ + pf + bn
- Revolucionario 革命家 (アストル・ピアソラ) SQ + pf + bn
- アンコール:Tres minutos con la realidad 現実との三分間 (アストル・ピアソラ) SQ + pf + bn
SQ:CHICA、会田、御法川、江口による弦楽四重奏
卓球好き、音楽好きです。飲み食い好きが高じて料理もします。2024年ソニーグループ(株)を退職し、同年より(株)fcuro勤務のAIエンジニアです。アルゼンチンタンゴ等の音楽について雑誌に文章を書いたりすることもあります。
なお、当然ながら本サイトでの私の発言は私個人の見解であります。所属組織の方針や見解とは関係ありません (一応お約束)。
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「アディオス・ノニーノ」への言及が抜けていたので追記しました。