デイヴィッド・バーンが選んだタンゴ~選ばれたアーティストたち (その2)
前回に引き続き、デイヴィッド・バーンが選曲したタンゴのプレイリストに登場するアーティストの解説です。
本家のプレイリストはこちら。
前回同様、以下のフォーマットはオリジナル表記の名前、その日本語表記、カッコ内にプレイリスト内で登場するトラック番号、簡単な解説、です。よく知らない人については中途半端に調べて不正確なことを書いてしまうことを避けるため、ほとんど情報リンク先を貼るだけになっています。
- Sexteto Mayor セステート・マジョール (9) 二人のバンドネオン奏者、ホセ・リベルテーラとルイス・スタソを中心に1973年に結成されたアルゼンチンの六重奏団 (バンドネオン×2、バイオリン×2、ピアノ、コントラバス)。もともと高い音楽性とエンターテイメント性を兼ね備えた編曲・演奏によりタンゴ界では人気の楽団だったが、1983年のパリ公演を皮切りに世界的ヒットとなったショー《タンゴ・アルヘンティーノ》の音楽を担当したことにより、その存在もさらに広く知られるようになった。バンドネオン二人以外のメンバーは随時入れ替わっており、さらにリベルテーラが2004年に亡くなるとスタソも2005年には脱退したが (2016年没)、他のミュージシャンによりその後も継続して活動している。ここで取り上げられたのは1976年の録音で、タンゴ・アルヘンティーノ以前のセステート・マジョールである。
- Horacio Molina オラシオ・モリーナ (10, 25) 1960年代からボレロ歌手として活動し、その後タンゴに転じたアルゼンチンの歌手。柔らかく包み込むような歌声はタンゴでは稀有な存在。惜しくも2018年没。ちなみに女優でシンガーソングライターのフアナ・モリーナはオラシオの娘。
- Kevin Johansen ケビン・ジョハンセン (11) 米国人の父とアルゼンチン人の母を持つ米国アラスカ出身のシンガーソングライター。日本語メディアではケビン・ヨハンセンという表記が多い。ポップス、フォーク、ロック、フォルクローレ、タンゴ…と様々な要素が散りばめられた音楽性と、低音で適度に脱力したボーカルは非常に魅力的。デイヴィッド・バーンとの共演作もある。彼については斎藤充正さんが詳しく書いているので参照されたい。→ tangodelog: ほんとうに衝撃を受け、かつ今でも聞き続けている生涯のお気に入りアルバムを10枚(10日目)
- Diego El Cigala ディエゴ・エル・シガーラ (12, 26) スペインのフラメンコ歌手。現役最高の歌い手であると同時に、キューバ、メキシコ、アルゼンチン等の音楽にも積極的に挑んできた異端児でもある。ちなみに12でデュエットしているのはアルゼンチンのタンゴ歌手アドリアーナ・バレーラ。ディエゴについては2015年の来日時の記事も参照 → MIKIKI: 現役最強のカンタオールにしてフラメンコ界の異端児、ディエゴ・エル・シガーラが10年ぶりに来日
- Tosca Tango Orchestra トスカ・タンゴ・オーケストラ (15, 29) 米国テキサス州オースチンを拠点に活動するミュージシャン達による、オリジナルのヌエボ・タンゴ (新タンゴ) を演奏するグループ。リーダーはグローヴァー・ギル。→ Wikipedia: Tosca Tango Orchestra
- Julieta Venegas フリエタ・ベネガス (16) 米国カリフォルニア州ロングビーチ出身、メキシコのティフアナ育ちのシンガーソングライター。日本語メディアではフリエッタ・ベネガスと表記されることが多い模様。本プレイリストでは前回紹介のバホフォンドとの共演で登場。→ Wikipedia:フリエッタ・ベネガス
- Gotan Project ゴタン・プロジェクト (17, 18) メンバーはフランス人のフィリップ・コーエン・ソラール(キーボード、ベース、音響効果)、アルゼンチン人のエドゥアルド・マカロフ(ギター)、スイス人のクリストフ・H・ミューラー(プログラミング、ベース、キーボード)。1999年に結成されたこのグループは、2000年のシングルのリリースを経て2001年にリリースしたアルバム”La revancha del tango”が、ヨーロッパを中心に全世界で大ヒットとなり、Tango meetsElectronica(タンゴとエレクトロニカの出会い)という考え方を世に問うきっかけとなった。余談だが、グループ名の「ゴタン」はタンゴのこと。日本語の「ザギン」「シースー」等の言葉と同様、アルゼンチンでも音節をひっくり返した言葉はよく使われ、その中でもタンゴをゴタンと呼ぶのはかなり昔から行われてきた。
- Sarah Vaughan サラ・ヴォーン (18) 米国のジャズ・シンガー。ビリー・ホリデイ、エラ・フィッツジェラルドと並ぶ、女性ジャズ・ヴォーカリスト御三家の一人。1990年没。本プレイリストに収められているのは過去の録音のゴタン・プロジェクトによるリミックスである。→ Wikipedia: サラ・ヴォーン
今回も興味深いアーティストが並びました。残すところあと8組 (多分)。月も終盤ですのでなるべく早く書くつもりです。
卓球好き、音楽好きです。飲み食い好きが高じて料理もします。2024年ソニーグループ(株)を退職し、同年より(株)fcuro勤務のAIエンジニアです。アルゼンチンタンゴ等の音楽について雑誌に文章を書いたりすることもあります。
なお、当然ながら本サイトでの私の発言は私個人の見解であります。所属組織の方針や見解とは関係ありません (一応お約束)。
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“デイヴィッド・バーンが選んだタンゴ~選ばれたアーティストたち (その2)” に対して1件のコメントがあります。