超個性派!革新派⁉ソロピアノ三連発! 榎本玲奈 西本夏生 黒田亜樹 (2024/12/07 東京・亀戸 ライティングハウスTOKYO)
12月7日は朝から亀戸へ。土曜のお昼前に開催される小さなコンサートに行ってきました。
メンバーの一人であるピアニストの黒田亜樹さんは、なんだかんだで25年以上の付き合いの友人です。この2日後の別のコンサートに行く旨の連絡をしたところ (そちらについても近いうちに書きます) 今回のコンサートもおすすめされたのでした。
と書きましたが、その「別のコンサート」がこちらでした。
この日のテーマは「祈り」。ロックミュージシャンのキース・エマーソンの作品と、アメリカのマーガレット・ボンズによる黒人霊歌を題材にした『スピリチュアル組曲』を演奏した榎本玲奈さん、エンリケ・グラナドス、サルバドール・ブロトンス、パスクアル・ヒメネスと近現代スペイン音楽の重要人物3人の作品を並べた西本夏生さんと、いずれも初めて聴く方でしたが、選曲そのものに強い個性があり、確かに「超個性派!革新派⁉」の謳い文句通りの印象です。榎本さんの『スピリチュアル組曲』はヨーロッパ系音楽とは全く異なる響きによる深い祈りが胸を打ちました。西本さんはラストのヒメネス「ディアベリのために」の印象が強烈。実はメロディ自体はあの有名な「エリーゼのために」(ベートーヴェン) そのもので、それをラテン~サルサ風に仕立てたものだったのです。深窓の令嬢エリーゼ、サルサに目覚める、という感じ。それにしてもなぜディアベリなんだろう…
黒田亜樹さんのコーナーに入る前に全員でラフマニノフ。3人6手の連弾なんてなかなかお目にかかることはないので貴重な体験でした。
そして黒田亜樹さん。佐藤聰明「コラール」は、いわゆるミニマルミュージックの形で細かく等間隔に刻まれる音が反復しながら少しずつ形を変えていく音楽でした。後から知った作曲家自身の解説によれば
このコラールは、バッハの和声付けによるコラール「アダムの堕落によりすべては朽ちぬ」冒頭の2小節余りの旋律を用いた自由なパラフレーズである。
とのこと。原曲の断片を吟味し味わい尽くすことで、祈りの果てしない奥深さを感じ取る、というような音楽だったのかもしれません。続くヤナーチェクのピアノソナタはチェコの民族復興運動のさなかに起きた悲劇を題材としており、「予感」と「死」の2楽章からなる作品。これに演奏者の判断で付け加えられたのは、同じヤナーチェクの「フリーデクの聖母マリア」でした。昨今の世界情勢にも通じる暗く重苦しい空気に、柔らかくも力強い祈りが光をもたらしてくれたと思います。
会場のライティングハウスTOKYOは照明器具を扱う会社のショールームで、建物は古民家を再生したものです。そのフロアの中心に置かれたピアノは100歳になるベヒシュタイン。ここで毎月第一土曜にブランチコンサートを行っているのだそうです (年明け1月はお休みで2月から再開)。亀戸天神のすぐそばでコンサート後のランチにも事欠かない立地なので、今後も機会を見てまた訪れてみたいと思います。
ライティングハウス 土曜ブランチコンサート Vol.5 超個性派!革新派⁉ソロピアノ三連発! 榎本玲奈 西本夏生 黒田亜樹
日時:2024年12月7日 (土) 11:00~
場所:東京・亀戸 ライティングハウスTOKYO
出演者:
曲目:
【榎本玲奈】
- プレリュード・トゥ・ア・ホープ Prelude To A Hope (Keith Emerson)
- スピリチュアル組曲 Spiritual Suite (Margaret Bonds)
- Valley of the Bones
- The Bells
- Troubled Water
【西本夏生】
- 組曲「ゴイェスカス」より – 嘆き、またはマハと夜鳴きうぐいす Goyescas – Quejas ó la maja y el ruiseñor (Enrique Granados)
- ピアノのためのトッカータ Toccata for piano (Salvador Brotons)
- ディアベリのために Para Diabelli (Pasqual Gimeno)
【榎本玲奈・西本夏生・黒田亜樹】
- 6手のための3つの小品より – ロマンス 3 Piano Pieces for 6 hands – Romance (Sergei Rakhmaninov)
【黒田亜樹】
- コラール Choral (佐藤聰明)
- ピアノソナタ/草陰の小径にて 第一集より – フリーデクの聖母マリア Piano Sonata / Po zarostlém chodníčku – Frýdecká panna Maria (Leoš Janáček)
- ピアノソナタ 予感 Předtucha
- ピアノソナタ 死 Smrt
- フリーデクの聖母マリア Frýdecká panna Maria
卓球好き、音楽好きです。飲み食い好きが高じて料理もします。2024年ソニーグループ(株)を退職し、同年より(株)fcuro勤務のAIエンジニアです。アルゼンチンタンゴ等の音楽について雑誌に文章を書いたりすることもあります。
なお、当然ながら本サイトでの私の発言は私個人の見解であります。所属組織の方針や見解とは関係ありません (一応お約束)。
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