渡辺香津美のライブ見聞

2000年以降に実際に行った香津美のライブの見聞録です。

渡辺香津美 ギター生活30周年セッション〜ノスタルジック編〜第3夜 MOBO III 〜モボモガの黄昏

『渡辺香津美 ギター生活30周年記念セッション〜ノスタルジック編〜』は、 六本木PIT INNと新宿PIT INNでそれぞれ3夜ずつ行われたライブ・シリーズで、 文字通り彼の30年のキャリアをその時々の編成を再現して振り返るという企画。 今回私が行った『MOBO III 〜モボモガの黄昏』は計6夜の最後日であり、 1983年のアルバム "MOBO" から1985年のアルバム "MOBO SPLASH" までの時期の曲が演奏された。

開場は超満員。 私は一応事前に前売りを入手してあったものの、 整理番号がかなり後ろの方だったようで、 あまり前が見えない状態での立ち見を余儀なくされてしまった。

今回の主役 MOBO III は香津美、ポンタ、グレッグのギタートリオで、 当時の活動のもっとも中核にあった編成である。 いきなり"上海"のあのグシャッとした不協和音で幕を開けた第1部は、 全曲がその MOBO III だけによる演奏であった。 ずっしりと重くかつタイトにリズムを支えるポンタ、グレッグと、 パワー全開で弾きまくる香津美によってよみがえる名曲の数々。 中でもグレッグのベースが絶妙だった "Splash"、 壮絶な大作 "All Beats Are Coming" などが印象的であった。

第2部は、香津美のアコースティックギターと坂田明、 橋本一子それぞれとのデュオでスタート。 いずれも二人の持ち味が現れた美しいデュオであった。 この二人の存在感はバンド編成になってますます重さを増す。 橋本一子の絶妙のタイム感でのコードワークはエレクトリックな音の中でひときわ響きわたり、 その声も実に魅力的。 特に、ジャンゴ風の古いジャズの雰囲気から一転してファンクになだれ込む "Σ" では、ラップから時にスキャットをも交える熱唱が聴かれた。 一方の坂田明は大陸的おおらかさを感じさせるロングトーンと、 その対極にあるような破壊的なフレージングで対抗。 "サッチャン" の語りはレコード以上に抱腹絶倒であった。 これらの個性を得て香津美のギターもロック的攻撃性を増し、ますます冴え渡る。 MOBO バンド時代のテーマ曲ともいえる "風連" でひとまずステージは終了。

アンコールは "遠州つばめ返し"。 曲芸的にブレークするテーマからメンバー各人のソロへと展開する中、 ここでも強烈だったのは橋本一子。 全速力で駆け抜けるハード・バップ風弾きまくりで、 すさまじいとしか言い様のないプレイであった。


吉村俊司(東京都)

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リンクはご自由にしていただいて結構です。 最終更新: Mar 20, 2000