アルゼンチン出身のサックス奏者であるブラス・リベラのアルバム。 元々ジャズミュージシャンであり、 このアルバムの曲 (2曲を除いて自作) も方法論的にはジャズであるが、 自分の内なるタンゴに呼応し、 チャカレーラなどのフォルクローレやブラジル音楽などの要素も取り入れて、 ユニークでユーモラスでメランコリックで刺激的!
編成はサックス、ヴァイオリン、ギター、ベース、ピアノで、 リベラ自身がピアノも弾いている。 ヴァイオリンには何とフェルナンド・スアレス・パスが参加 (やはりどこへ行っても濃い音)。 自作以外では、ガルデルの「想いの届く日」を無伴奏サックス・ソロで、 またパブロ・シーグレル作の「風の中のミロンガ」 をシーグレルをゲストに迎えてデュオで演奏。
英独2ヶ国語によるライナーは、 インタビュアーの求めに応じて各曲についてのコメントをリベラが語る、 という内容で、非常におもしろい。 なお、今年 (2001年) になってドイツのレーベルからリリースされたものだが、 録音はブラジルとアルゼンチンで1996年に行われた。
名手アニバル・アリアスの弟子にあたる若手女性ギタリスト、 アナリア・レゴの1枚目のCD。 なかなか渋い名曲が並ぶが、 ロマンチックな歌曲は簡素な美しさが際立ち、 器楽系の曲は聴き応えがある。 どの曲も丁寧かつ堅実な演奏で、大変好感が持てる。 大半の曲は師匠のアリアスによる編曲で、師弟デュオも1曲。 また、女性バンドネオン奏者のスサーナ・ラトクリフとのデュオも収められていてなかなか良い雰囲気。
アルゼンチンのロックのスーパースター、フアン・カルロス・バグリエットと、 ロックや先進的フォルクローレなどを手がけてきたキーボード奏者のリト・ビターレのデュオによるライブ録音。 タンゴも「酔いどれ達」「エル・チョクロ」「パシオナル」「ノスタルヒアス」 の4曲が歌われているが、バグリエットの独特のハイノートとビターレの華麗で壮大な音の組み合わせで非常にドラマチックに盛り上がる。 ロック・ナシオナル発のタンゴへのアプローチとしては、 最近では "LA CHICANA" やメリンゴ (下記) のような泥臭い感覚が面白いが、 これらとは明らかに異なる方向性である。 タンゴ以外のオリジナルやフォルクローレをベースにした曲も良く、 特にフィト・パエス作の「D.L.G」が感動的。
ロック・ナシオナル (アルゼンチンのロック) からタンゴへのアプローチ。 "LA CHICANA" とも近い方向性だが、声の質などこちらの方がよりアヤしい度強し。 斎藤充正氏の "tangodelic!" の「お勧めディスク」でも紹介されているので参照されたい。
オラシオ・サルガン (pf)、ウバルド・デ・リオ (g)、 ネストル・マルコーニ (bn)、オスカル・ジウンタ (b)、 エルメス・ペレシーニ (vn) の強力メンバーによる五重奏。 ヴァイオリンがアントニオ・アグリだった頃にカルロス・サウラ監督の映画『タンゴ』 に出ているので、 変な声でスキャットしながら弾きまくるサルガンや 真正面をギョロ目で見据えて弾くデ・リオの姿が印象に残っている方も多いだろう。
あくまでいつもと同じスタイルで、 レパートリーも過去に録音したことがあるものが多いのに、 やっぱり新鮮なのが彼等のすごいところ。 独特のシンコペーションとスイング感が何ともカッコいいのだ。 「ラ・クラバーダ」大好き!
上記のヌエボ・キンテート・レアルの中でも中核となる二人のデュオによるライブ録音。 非常に長いキャリアを誇るコンビだけに、息の合った演奏が楽しめる。 以前の録音に比べると少し落ち着いた感じだが、 決して枯れたとかいうわけではなく、 やはり音楽の楽しさに満ちたアルバムである。
アルゼンチン出身の若手フルーティストとギタリストがサンフランシスコで結成したデュオ。
多くの曲で、オラシオ・サルガン
(上記のヌエボ・キンテート・レアルやサルガン=デ・リオで活躍)
のアレンジをお手本にしている。
独特のシンコペーションをうまく消化して、なかなか快調な演奏である。
なお、彼等のホームページは下記。
http://www-ccrma.stanford.edu/~guille/flor/welcome.htm
最近はすっかりタンゴに回帰して来たメデーロスであるが、 70年代半ばから80年代にかけてはタンゴの枠を飛び出した活動をしていた。 このアルバムは82年録音のもので、『おやすみパウラ』という題名から受けるイメージ通りに穏かな内容。 ちなみにパウラとは彼の愛娘の名である。 基本は16ビートの耳当たりの良いフュージョンだが、 パウラの声をフィーチャーし、バンドネオンと弦楽四重奏で奏でられる非常に美しい曲もある。
メデーロスのホームページは
http://www.mederos.com.ar/
であるが、IEでないとうまく開けない模様。
メデーロス自身の主演による映画のサウンドトラック。 内容はアローラス作の古典タンゴと自作で、 前者は原形を留めないほどに解体・再構築されているので、 曲目だけ見て古典ファンが聴いたら卒倒するかも。 過激であり、かつ美しい。
楽団名は「タンゴ学校楽団」の意味。 現代タンゴの最重要作曲家の一人であるエミリオ・バルカルセが主宰し、 若手ミュージシャンにオルケスタ・ティピカでの演奏機会を与えることを目的としたもので、 レオポルド・フェデリコ、カルロス・ディ・サルリ、アニバル・トロイロ、 フアン・ダリエンソなどのスタイルによる演奏が収められている。 いずれも感じが出ており良いが、 中でも主宰者バルカルセのスタイルというのが聴き応えがある。
ちなみに彼はプグリエーセ楽団〜セステート・タンゴでヴァイオリン奏者としても活躍していたが、 なぜか最近バンドネオンに転向し、このアルバムでも何曲かでトップを弾いている。
私にしては珍しくJ-POP。 CD店やラジオで聴いて気になっていたもので、 シェリル・クロウを彷彿とさせるボーカルと、 ちょっとザラついたバンドの音作りがなかなか良い。 もっとも、英語的発音による日本語歌詞は、楽曲との相性は非常に良いものの、 日本語としては聴き取り不可能。 だったらいっそ全部英語にすれば良いのに、と私としては思ってしまう。
ご意見、ご感想はメールまたは掲示板にてお願いします。
リンクはご自由にしていただいて結構です。
作成: Mar 14, 2001
最終更新: Mar 14, 2001