以下の文章は、斎藤充正さんが1998年5月11日に@NIFTY(当時Nifty-Serve)の「世界音楽フォーラム<FWM>」11番会議室「タンゴの部屋」に書き込んだ記事です(発言番号354)。ご本人から転載のご許可を頂きましたのでここに掲載いたします。
(11) 98/05/11 04:29
久々にCDのご紹介です。 レオポルド・フェデリコ楽団の1960年代のCBS録音は、歌手フリオ・ソーサと のものを除くと、単独CDでは出ていませんでしたが、ようやくベスト盤が発売 されました。正に待望久しいといった感じです。 ◎LEOPOLDO FEDERICO "SENTIMENTAL Y TANGUERO" (COLUMBIA 2-484774) 4枚のアルバムから選ばれた24曲が収められています。せっかくの機会ですので、 この4枚について、更にはソーサとの録音について書いてみましょう(CD収録 曲目は下記参照)。 レオポルド・フェデリコ楽団は1950年代末にミュージック・ホールに録音を残し た後、人気歌手フリオ・ソーサと組んで1961年5月からCBSに録音を始めます。 ソーサ=フェデリコが残したオリジナル・アルバム(LP)は"EL VARON DEL TANGO"(8307),"EL TANGO LO SIENTO ASI"(8340),"RECIEDUMBRE Y TERNURA" (8379),"CON PERMISO, SOY EL TANGO"(8425/9040),"EL FIRULETE"(8457/9053)の 5枚(カッコ内はレコード番号で、8千番台はモノラル、9千番台はステレオ)で、 これ以外に編集盤のみに収められた録音が若干あります。また、ソーサにはギタ ー伴奏によるアルバム"JULIO SOSA CANTA FOLKLORE"(8358)というのもありまし たが、これはすぐに"MILONGA TRISTE"(8510)として再発されました。これらの録 音を私はいちいちCDで買い直していないのではっきりとはわかりませんが、ほ とんどの曲目はCD化されているはずです。 ソーサは人気絶頂の64年11月に運転を誤り交通事故死。その前にも事故で死にか けたことがあったので自業自得と言えるかも知れませんが、タンゴ界にとっては 非常に大きな損失でした。ソーサの死によってフェデリコ楽団は苦境に立たされ ることになるのですが、それでもしばらくは活動を続け、単独アルバムも残しま した。曲の頭に*印が付いているのが、今回のCDに収録された曲目です。 ◎TANGO PURO (8413/9038) 1963 ADIOS NONINO *MILONGUEANDO EN EL 40 *LA MOVEDIZA TANGO AL CIELO *SIDERAL NOSTALGICO *TANGO DEL ANGEL B.B. *MARGARITA GAUTHIER *RECUERDO *ACTUAL LA BORDONA フェデリコ楽団単独でのCBS第1作。冒頭に「アディオス・ノニーノ」の初録 音(編曲は作者ピアソラ自身)が置かれています。全曲インストゥルメンタルで、 充実した演奏。当時の楽団のピアニストはホセ・コランジェロ。当時日本コロム ビアから『天使のタンゴ』のタイトルでLP発売されました。今回のCDに含ま れなかった曲のうち、「アディオス・ノニーノ」はピアソラの編集盤"TODO PIAZZOLLA"(2-484601)などで聴けますが、フラアン・プラサ作「ノスタルヒコ」、 バッファ=ベリンジェリ作「B.B.」、エミリオ・バルカルセ作「ラ・ボルドーナ」 というモダン・タンゴの名曲がいずれもオミットされたのは残念。 ◎MILONGUERO DE HOY (8509/9072) 1964? *CABULERO A MEDIA LUZ *A MARTIN FIERRO *LA TRAMPERA FUEGOS ARTIFICIALES *MILONGUELO DE HOY DECARISIMO *PORQUE DISONANTE *ESLAVA *DON AGUSTIN BARDI ADIOS MUCHACHOS これも充実した内容の第2弾。76年に来日記念盤として発売された日本盤LP 『想い出』(全16曲)は、上記2枚から編集したものです。82年にアルゼンチン EPICから"VIVENCIA"シリーズの1枚として発売された編集盤も、上記2枚からの もの。今回洩れた曲のうち「花火」は私の選曲した『ベスト・オブ・タンゴ』 (SRCS 8347)に、「デカリシモ」は"TODO PIAZZOLLA"に、「アディオス・ムチャ ーチョス」は2枚組オムニバス"40 TANGOS PARA BAILAR"(2-484602)にそれぞれ 収録されています。 ◎LEOPOLDO FEDERICO (8578/9098) 1965? *AMOR DE VERANO (Canta: Carlos Gari) *SENTIMENTAL Y CANYENGUE *DESCONOCIDOS (Canta: Roberto Ayala) *A ORLANDO GON~I LO HAN VISTO CON OTRA (Canta: ? ) GUARDIA VIEJA (con ROBERTO GRELA) DE VUELTA AL BULIN (con ROBERTO GRELA) CUANDO ME ENTRES A FALLAR (Canta: ? ) EL MONITO TACONEANDO COLOR DE ROSA MALA JUNTA *Y DICEN QUE NO TE QUIERO (Canta: Carlos Gari) LEJANO *CUATRO NOVIOS (Canta: Roberto Ayala) これはまったく幻だったアルバムで、私も持っていません。この中の曲目が編集 盤に収録されたこともないはずです。ということで、今回ここから6曲がCDに 収録されたことは誠に喜ばしい限りです。(グレーラとの2曲については次のア ルバム参照) ◎EL CUARTETO SAN TELMO de LEOPOLDO FEDERICO y ROBERTO GRELA "TANGOS DE SIEMPRE" (8655/?) 1966 GUARDIA VIEJA ROMANCE DE BARRIO AMIGAZO *EL MOTIVO LOS MAREADOS GRISETA *AMURADO *CON TODA LA VOZ QUE TENGO YO TE BENDIGO *TINTA ROJA DE VUELTA AL BULIN RESPONSO 先のアルバム"LEOPOLDO FEDERICO"には、ゲストにロベルト・グレーラを迎えて の4重奏団による録音が2曲含まれていましたが、これが好評だったためか更に 10曲を録音、これに先の2曲(同じ録音のはず)を加えたのがこのアルバム。 「グアルディア・ビエハ」は"40 TANGOS PARA BAILAR"で聴けます。ここではサ ン・テルモ4重奏団を名乗っていますが、この後彼らはミュージック・ホールに 移り、フェデリコ=グレーラ4重奏団の名で更に2枚のアルバムを録音すること になります。 もちろん4枚ともオリジナル・フォーマットでCD化されれば一番なのですが、 今回のCDはすべてのアルバムからまんべんなく、24曲たっぷり収録と言うこと で、まあよしとするか、てな感じです。ただ納得いかないのは、全曲ステレオ・ マスターがあるはずなのにほとんどモノラルで収められている点。ステレオで収 録されていたのはいずれも"TANGO PURO"からの「椿姫」「40年代のミロンガ」 「アクトゥアル」「ラ・モベディーサ」の4曲だけでした。 98/05/11(月) 02:50 斎藤充正