以下の文章は1999年4月22日から5月9日にかけて、Nifty Serveの<世界音楽フォーラム FWM>11番会議室「タンゴの部屋」に書き込んだものを元に加筆、修正したものです。
フランチーニ六重奏団の収録曲カタカナ表記について、斎藤充正さんからご教示いただいた内容を反映しました。[1999.8.22]
ソニーからタンゴのCDが一挙8枚
1999年4月21日に、ソニー・クラシカルからタンゴのCDが一挙に8枚もリリースされました。いずれも非常に優れた録音で、しかもこれまでCD化されていなかったものばかりです。どれもお勧めですが、目玉はやはりアグリの3枚でしょうか。
  - ママ私、恋人が欲しいの/MAMA, YO QUIERO UN NOVIO
  
 - 淡き光に/A MEDIA LUZ
  
 - ジーラ・ジーラ/YIRA YIRA
  
 - ラ・クンパルシータ/LA CUMPARSITA
  
 - いつまでもここに/QUEDEMONOS AQUI
  
 - さらば草原よ/ADIOS PAMPA MIA
  
 - カミニート/CAMINITO
  
 - わが悲しみの夜/MI NOCHE TRISTE
  
 - 君を愛す/TE QUIERO
  
 - 最後のコーヒー/EL ULTIMO CAFE
  
 - さらば愛しの人よ/ADIOS CORAZON
  
 - ノスタルヒアス/NOSTALGIAS*
 
  - 藤沢嵐子(歌)
  
 - 早川真平(指揮)
  
 - オルケスタ・ティピカ東京
  
 - エクトル・スタンポーニ&アストル・ピアソラ*(編曲)
  
 - 録音1968年
 
日本の誇る女性タンゴ歌手、藤沢嵐子のアルバムです。原題は『タンゴと共に20年』。「嵐子さんと言えばこの曲」の1、情感のこもった5をはじめとして、円熟の歌声が素晴らしいアルバムです。
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  - 想い出/RECUERDO
  
 - 天使のタンゴ/TANGO DEL ANGEL
  
 - アクトゥアル/ACTUAL
  
 - ドン・アグスティン・バルディ/DON AGUSTIN BARDI
  
 - ディソナンテ/DISONANTE
  
 - 淡き光に/A MEDIA LUZ
  
 - 花火/FUEGOS ARTIFICIALES
  
 - アディオス・ムチャーチョス/ADIOS MUCHACHOS
  
 - ノスタルヒコ/NOSTALGICO
  
 - ベベ/B.B.
  
 - 今日のミロンゲーロ/MILONGUERO DE HOY
  
 - 空へのタンゴ/TANGO AL CIELO
  
 - 天体/SIDERAL
  
 - カブレーロ/CABULERO
  
 - ラ・ボルドナ/LA BORDONA
  
 - アディオス・ノニーノ/ADIOS NONINO
 
  - レオポルド・フェデリコ&オルケスタ・ティピカ
  
 - 1963〜'64(?)年録音
 
現代最高のバンドネオン奏者、レオポルド・フェデリコの楽団による録音。
1、6〜8のスタンダード以外は、どれもモダン派の佳曲ぞろいで、演奏も非常に充実しています。11なんかほんとにいいなぁ…。13は1999年1〜2月に小松亮太&スーパー・ノネットで演奏されて大好評だった曲(編曲もこれをベースにしていた)ですので、聴いた人は感動が蘇ると思いますよ。
なお、アルバムのクレジットでは<録音 1963〜'70>となっていますが、実際には'63年と'64年(?)に録音された2枚のアルバムからのセレクションです。
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  - ブエノス・アイレス午前零時/BUENOS AIRES HORA CERO
  
 - 眠れぬ夜/VIGILIA
  
 - ロドリゲス・ペーニャ/RODORIGUEZ PENA
  
 - 追憶/REMEMBRANZA
  
 - ボルドネオ・イ・ノベシエントス/BORDONEO Y 900
  
 - 場末の小窓/VENTANITA DE ARRABAL
  
 - 街角/EL ESQUINAZO
  
 - パパ・ガジェーゴ/PAPA GALLEGO
  
 - ラ・マレーバ/LA MALEVA
  
 - 最後のコーヒー/EL ULTIMO CAFE
  
 - ラ・トレグア/LA TREGUA
  
 - チキリン・デ・バチン/CHIQUILIN DE BACHIN
 
  - セステート・タンゴ
  
 - ホルヘ・マシエル(歌)<2, 4, 6, 8, 10, 12>
  
 - 録音1974年
 
セステート・タンゴは名門オスバルド・プグリエーセ楽団からの独立という形で1968年に結成されました。メンバーは
  - オスバルド・ルジェロ(バンドネオン)
  
 - ビクトル・ラバジェン(バンドネオン)
  
 - オスカル・エレーロ(バイオリン)
  
 - エミリオ・バルカルセ(バイオリン)
  
 - フリアン・プラサ(ピアノ)
  
 - アルシーデス・ロッシ(コントラバス)
 
で、これに歌手としてホルヘ・マシエルが加わります。演奏スタイルはプグリエーセ楽団を彷彿とさせる重厚なものですが、単なる類似にとどまらない独自のスタイルを築きました。
個人的な好みでは9がこの楽団の魅力を最大限に引き出した好演であると思います。マシエルの歌も十八番の4を始めとして、6、8などドラマチックで素晴らしい限り。彼は1922年生まれですから録音当時で51〜52歳ですが、惜しいことにこのアルバムを録音した翌年に急逝してしまいました。
他に、有名曲での意表を突くアレンジ(3、7)、パーカッションの導入(1、7)などの試みも興味を引きます。また、器楽曲、歌曲ともメンバーによる作品が多く含まれています。
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  - チケ/CHIQUE
  
 - エル・ブエイ・ソロ/EL BOEY SOLO (正しくは EL BUEY SOLO)
  
 - エル・チョクロ/EL CHOCLO
  
 - オリエンタル・メロディ/MELODIA ORIENTAL
  
 - ティエリータ/TIERRITA
  
 - 変奏付きミロンガ/MILONGA CON VARIACION
  
 - インスピラシオン/INSPIRACION
  
 - エル・アランケ/EL ARRANQUE
  
 - 秋のテーマ/TEMA OTON~AL
  
 - 黒い瞳/OJOS NEGROS
 
  - エンリケ・マリオ・フランチーニ六重奏団
  
 - 録音1970年
 
タンゴ最高のバイオリン奏者の一人、フランチーニのリーダー作です。メンバーは、
  - エンリケ・マリオ・フランチーニ(バイオリン)
  
 - ネストル・マルコーニ(バンドネオン)
  
 - オラシオ・バレンテ(ピアノ)
  
 - リカルド・フランシア(チェロ)
  
 - ロマーノ・ディ・パオロ(バイオリン)
  
 - オマール・ムルタ(コントラバス)
 
となっています。
マルコーニによる編曲は、メロディーの譜割を細かくしたり、リズムで遊んだりと手が込んでいます。もともとリズムの面白い5, 8やフランチーニの代表作9、それに終曲でホントにミロンガになってしまう6などは、うまくはまっていて非常に良いのですが、1などはもっとストレートに行けば良いのにと思ったりもします。とはいえ、どの曲でもフランチーニのソロは絶品!マルコーニもかなり弾きまくっています。
ライナーによればセカンドを弾いているロマーノ・ディ・パオロは写真の名手とか。そう言えば昔のLPで FOTO:ROMANO DI PAOLO というクレジットをよく見かけた気がします(同一人物か気になっていたんですよ、実は)。
ところで、2のカタカナ表記はこれでいいのかな?素直に読むと「エル・ボエイ・ソロ」ですが…。どなたかご存知の方、教えてください。
と書いたら早速斎藤充正さんに教えていただきました。
バルディの隠れた名作、表題の曲名はスペル・ミスで"El buey solo"が正しいので、読みはこれでよいのです。この曲はデ・カロやロス・アストロス・デル・タンゴも録音しています。
それから写真のディ・パオロは同一人物です。一時期は「中南米音楽」誌専属といった感じでしたね。
斎藤さん、どうもありがとうございました。ちなみに『タンゴ名曲事典』(石川浩司編、中南米音楽)にもこの曲は出ていました。ちゃんと調べれば良かった...反省。[1999.8.22]
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  - 夜明け/EL AMANECER
  
 - エル・ポジョ・リカルド/EL POLLO RICARDO
  
 - 我が命の君/VIDA MIA
  
 - 大きな人形/A LA GRAN MUN~ECA
  
 - 狂おしき恋のワルツ/LA LOCA DE AMOR
  
 - デ・プーロ・グアポ/DE PURO GUAPO
  
 - 軍靴の響き/TAQUITO MILITAR
  
 - こだまのタンゴ/TANGO DEL ECO
  
 - エル・アブロヒート(あざみ)/EL ABUROJITO
  
 - アディオス・ムチャーチョス/ADIOS MUCHACHOS
  
 - ホテル・ビクトリア/HOTEL VICTORIA
  
 - 秋のテーマ/TEMA OTON~AL
 
メンバーは下記の通りで、超名手ぞろいの五重奏団です。
  - オラシオ・サルガン(ピアノ)
  
 - エンリケ・M・フランチーニ(ヴァイオリン)
  
 - ペドロ・ラウレンス(バンドネオン)
  
 - ウバルド・デ・リオ(ギター)
  
 - キチョ・ディアス(ベース)
 
中心人物のサルガンの音楽性が色濃く反映されており、特に2拍目と3拍目でギターやバンドネオンがウラを刻むリズム(「ウン・パ」と呼ばれているらしい)が特徴的です。フランチーニを始めとして各人のソロもたっぷり。
なお、このグループはその後もサルガン=デ・リオを核としつつ、レオポルド・フェデリコとアントニオ・アグリ(下記のアルバムおよび「アントニオ・アグリ追悼」参照)が参加したグラン・キンテート・レアル、ネストル・マルコーニが参加したヌエボ・キンテート・レアルとして断続的に活動を続けています。
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  - 最後の酔い/LA ULTIMA CURDA
  
 - 精霊の踊り(「オルフェウスとエウリディーチェ」より)/DANZA DE LOS ESPIRITUS BEINAVENTURADOS
  
 - ディビーナ/DIVINA
  
 - 想いのとどく日/EL DIA QUE ME QUIERAS
  
 - フーガと神秘(「ブエノスアイレスのマリア」より)/FUGA Y MISTERIO
  
 - イエスタデイ/AYER
  
 - スール(南)/SUR
  
 - 愛の悲しみ/PENAS DE AMOR
 
  
  - アントニオ・アグリ&コンフント・デ・アルコス
  
 - 録音 1977年
 
1998年、不世出のバイオリン奏者アントニオ・アグリは惜しくも世を去りましたが、彼がピアソラの元を辞した直後の1977年に録音されたのがこの弦楽グループによるアルバムです。タンゴに加えてクラシック、ビートルズナンバーまで交えた選曲で、ひたすら美しい弦の音色が堪能できます。7ではトロイロ作「レスポンソ」(冥福の祈り)の一部が引用されていて、今となっては涙を誘います。
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  - タンゴ名曲選(ウノ〜カミニート〜わが懐かしのブエノスアイレス〜ラ・クンパルシータ)
  
 - チャルダーシュ/CZARDAS
  
 - ロ・ケ・ベンドラ(来るべきもの)/LO QUE VENDRA
  
 - ワルツ名曲選(美しく青きドナウ〜ウイーンの森の物語〜芸術家の生活〜春の声〜ドナウ河のさざ波〜美しく青きドナウ)
  
 - ミミ・ピンソン/MIMI MINSON
  
 - ハンガリー舞曲第5番
 
  - アントニオ・アグリ&コンフント・デ・アルコス
  
 - 録音 1979年
 
アグリの弦楽グループの2枚目のアルバム。1枚目と同様弦の美しさが十分楽しめます。
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  - ドン・アグスティン・バルディ/DON AGUSTIN BARDI
  
 - ノクトゥルナ/NOCTURNA
  
 - 遥かなるわが故郷/LEJANA TIERRA MIA
  
 - マーラ・フンタ/MALA JUNTA
  
 - コラレーラ/CORRALERA
  
 - 黒い瞳/OJOS NEGROS
  
 - ラ・トランペーラ/LA TRAMPERA
  
 - わが両親の家/LA CASITA DE MIS VIEJOS
  
 - クリオージョの誇り/ORUGULLO CRIOLLO
  
 - とろ火で/A FUEGO LENTO
 
  - アントニオ・アグリ&コンフント・デ・アルコス
  
 - 録音 1981年
 
3枚目は幾分リズムの強調された演奏でタンゴ系(ワルツ、ミロンガを含む)の作品ばかりを集めたものです。
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吉村俊司(東京都)
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Last modified: Sun Aug 22 07:42:41 JST 1999