ついに登場なった小松亮太&オルケスタ・ティピカである。 この日はおなじみのライブハウス、江古田バディでの公演。
小松亮太はこれまでも時折9人、10人といった大きな編成での公演を行ってきたが、 バンドネオンを4台並べた本格的なティピカ編成はこれが初めてである。 60年代以降ピアソラが存在意義を否定したオルケスタ・ティピカの公演にあえて付けた 「ピアソラ生誕80周年」というタイトルは、 本人の弁によれば「ピアソラの名前があるとお客さんが入るから」とのことだが、 もちろんそれだけではあるまい。これについては別途。
「ダンサリン」でスタートした第1部の前半は、 オスバルド・プグリエーセの系列にある音楽家の曲を中心としたプログラム。 昨年のタンゴ・スピリット公演でプグリエーセ系の表現形態について一段高いレベルに達した感のある小松であるが、 この日はまだ演奏に硬さが見られ、ちょっと物足りないものがあった。 とはいえ大編成ならではの音の厚みと広がりはさすが。
途中、近藤のヴァイオリンの弦が切れたことによる場つなぎに急遽演奏されたガルデルの「帰郷」では、 熊田、東谷のエル・タンゴ・ビーボに途中から小松も加わったが、 何と小松が見事に玉砕。 もっとも、これで多少場がなごんだ感もある。
バンドネオン・ソロ・メドレーは若手3人がそれぞれ1曲づつ披露、という形で、 4/18に聴いた東京バンドネオン倶楽部の演奏会と同じもの。 加えてバンドネオン・セクションだけで「下町のロマンス」も演奏された。 各人の高い技巧と音楽性が堪能できたコーナーであった。
続いて弦楽五重奏による極めて美しい「恋人もなく」、 アルフレド・ゴビ風の「槍」、 そしてようやく登場したピアソラ作品「エル・デスバンデ」で第1部は終了。
第2部は黒田亜樹の演奏による、かなりマニアックなピアノ・ソロ曲でスタート。 続くマデルナ作のファンタジックなタンゴ「降る星の如く」 はなかなか華やかに決まり、場が盛り上がった。 そして一部で最近何かと話題のロビーラ作「エバリスト・カリエーゴに捧ぐ」に続き、 超のつく有名曲「ラ・クンパルシータ」をピアソラの編曲で演奏して、 ようやくピアソラ・コーナーとなった。 ボンゴが大活躍でアフロ色の強い「タングアンゴ」、オーボエがフィーチャーされた「デデ」 の2曲はピアソラ作品の中でもかなり異色のものであるが、 聴く者に強烈なインパクトを与えた。 ピアソラ初期の作品「ビジェギータ」は凄まじいスピードで駆け抜けたが、これも強烈。 最後はピアソラの経歴にとって非常に重要な「勝利」で幕となった。
アンコールは当日の曲目の中でもインパクトの強かった2曲を再演。 2部後半の高揚をそのまま維持し、本編を上回る好演であった。
というわけで、1部はやや不満が残ったが、 2部では徐々にテンションが上がり、聴き応えのある演奏であった。 さらに凄かった5/20の同公演 (天王州アイル・アートスフィアにて) について、 及び両日を通じて感じたことについては、ページを改める。
[2001年6月26日(火) 記]
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最終更新:2001.07.18